Queens of the Stone Age - No One Knows

 第27作目、今回僕が紹介するのは、米・カルフォルニア州パームデザート出身のハード・ロックバンド――その名もQueens of the Stone Ageから『No One Knows』です!


 Queens of the Stone Ageは、1989年に結成されて以降、ストーナーロックの潮流を牽引した先駆的バンド・KyussのギタリストだったJosh Hommeによって1997年より活動を開始した現役バンドです。同年にセルフタイトルのアルバム『Queens of the Stone Age』で鮮烈なデビューを飾ると、Kyuss時代のベーシストだった盟友・Nick Oliveriを迎え入れ、2000年に2ndアルバム『Rated R』をリリースすれば、英・New Musical Express誌のアルバム・オブ・ザ・イヤーに選出され、大きな注目を集めます。その2年後には、以前もご紹介したNirvanaの元ドラマーで現在はFoo Fightersのボーカリスト兼ギタリスト・David Grohlをドラマーとして加入させ、3rdアルバム『Songs For The Deaf』を発表して、全世界で100万枚以上のセールスを記録しました……!


 僕はこの名盤『Songs For The Deaf』が大好きでして、特に今回紹介する『No One Knows』は最高です! 曲名は『No One Knows』でも、その音楽の素晴らしさや偉大なバンドの存在については間違いなく"Every One Knows"だと思います。何と言ってもこの楽曲、本当に中毒性が高い。一言で表すなら、僕にとって『No One Knows』は「こういうので良いんだよ」ってやつです。バンド全体で見ても『No One Knows』は商業的に大成功を収めた楽曲で、Queens of the Stone Ageとして初めて米・Billboard Hot 100におけるオルタナティブ・チャートでトップに立ったシングルとなり、2003年のグラミー賞においてベスト・ハード・ロック・パフォーマンス賞にノミネートされました……!


 興味ないという方は歌詞紹介まで飛ばし読みしていただいても構いませんが、自分の大好きな曲の素晴らしさを知ってもらうため、もう少し御託を並べさせてください!


 名曲『No One Knows』は多方面の批評家たちから絶賛されました。英・The Guardian誌は当該楽曲を「キラーリフ」と称し、初期のBlack Sabbathのような1970年代のドゥームメタルの片鱗を感じることができるとして、大ヒット間違いなしだと断言しました。ちなみに同誌は、同アルバムに収録されている『The Sky is Fallin'』について、まるで霊安室で30年過ごしたThe Beatlesのようだと表現しています(褒めてるのかなそれは)。さらに、世界初の音楽サービスプロバイダとして知られる英・Playlouder社は「西部劇の主人公の断末魔のような魂が籠っている」と表現しており、アメリカのオンラインマガジンPitchforkは「最高に滑らかな四つ打ちでお手軽なグルーブ感を得られる」と惜しみない称賛を送っています。


 さらに、英・Q誌は『No One Knows』を2005年に「最高のギタートラック100選」の70位に選出して「四つ打ちリズムで浮足立つような本格的なギターを奏でたのは、おそらくJosh Hommeによる初めての試みで、彼は永久不滅の仲間入りを果たした」と大絶賛。翌年には英・New Musical Express誌による「過去10年間における最高の楽曲50選」で13位に輝き、米・Rolling Stone誌「史上最高のギターソング100選」で97位に。同誌はこの曲について、「Queens of the Stone Ageのフロントマン・Josh Hommeによるフックのあるハードロックと独自のメタル要素の良いとこ取りをしている」と述べ、その価値を強調しています。極めつけは、米・有名音楽批評家Robert Christgauが数百人の音楽批評家を対象としたアンケート調査"2002 Pazz & Jop list"で11位にランクインしています!


 ──え? 「長ったらしくランキングを紹介していた割にはどれも順位がそれほど高くないな」って……? そう思われた方は僕と一緒に一旦屋上まで行きましょうか。いや、返り討ちにされそうなのでやっぱり大丈夫です……。


 とにかく、史上最高のギターソングに選出されるほど優れている名曲であることは間違いありません。バンド本体の説明をそこそこに、特定の楽曲にフォーカスして紹介するスタイルはおそらく今回が初めてですね。一応言っておくと、Queens of the Stone Ageは『No One Knows』以外にも、類まれなる名曲を数多く世に輩出している最高のロックバンドです。もし今回紹介する曲を気に入っていただけましたら、是非ともその他の曲を聞いて、ストーナーロックの系譜を継いだ彼ら独自の音楽性の深みへと共に浸っていただきたいものです……!


 『No One Knows』愛が暴走して本当の意味で「誰も知らない」ことばかり書いてしまいましたが、ここからが本編(?)です。皆さんも当該楽曲をループ再生しながら、お手元に歌詞を用意して僕の翻訳と独自の解釈をお楽しみいただけたら幸いです。それでは、いってみましょう――。


[Verse1(0:14~)]

「俺たちには守るべきルールがあるよな」

「あれやこれやと」

「まあ色々あるが」

「誰も知らない」

「俺たちには飲み込むべき薬があるよな」

「そいつはどうしてもお前の喉元に引っ掛かっちまう」

「黄金の味だな」

「お前が俺にすることなんて」

「誰も知らないのさ」


 はい、これがあの「キラーリフ」です。僕はこのギターリフに何回殺されているのか分かりません。ガタイが良くて強面ハンサムなJosh Hommeの見た目からは想像できない少し優し気のあるボイスもまた、ギターのカッコ良さとのギャップがあって堪らないんですね。


 さて、肝心の歌詞の意味ですけれども、これまた難解で抽象的な内容ですね……。MVなんかを見てみると、まずイントロの部分はメンバー四人が暗闇の中で楽器を演奏している様子が映ったかと思いきや、突然車を運転しながら歌を口ずさむ風景に飛ばされ、その後は映像が交互に切り替わります。そして、サビの直前になると道路に飛び出してきた鹿を轢き殺してしまいます。うーん、これはもしや、また薬物関係の話ですかね。黄金の味がする薬を飲みこむのだけれど、罪悪感からかうまく喉を通らないとか、守るべきルールなんて知らないとか、ね……。


 ちなみに、Josh Homme自身はこの曲の歌詞について「誰も知らない(笑)」と言っているので、深く考えずに、あるいは独自の解釈を楽しんで不気味な世界観とイカしたギターリフを味わってくれということでしょう。僕はエッセイの執筆者として、歌詞の意味を追求することは決して諦めませんが……!


[Chorus(1:09~)]

「そして気付いたんだ、お前は俺のものだと」

「ああ確かに、俺は愚か者かもな」

「これではっきりしたな、お前は俺のものなんだよ」

「その通りだよ、俺は道化なんだ」


 先程も言及したMVに登場する車に轢かれてしまった鹿が急に起き上がって、車に乗っていたバンドメンバーを次々と殴り倒して行きます(!?)。思わず笑っちゃうような光景ですが、薬物を使用した愚か者が自分に都合の良い夢を見ながら、幻覚症状に苦しめられているということの暗喩でしょうか……?


[Verse2(1:39~)]

「砂漠の中を旅するんだ」

「心の中には希望もない」

「ひたすらにな」

「海の中を漂うんだ」

「日差しの中で役に立たない救命ボートに乗って」

「やがて身を滅ぼして」

「心地良く破滅するのさ」

「俺はもうだめだ」


[Chorus(2:34~)]

(繰り返し)


 やっぱりそうですね。支離滅裂なことを言い出したかと思えば、俺はもう破滅するだなんて、これはやっちゃってますね……。面白いので言っておくと、この後MVの鹿がバンドメンバーたちを車のボンネットに縛り付けて車を運転する様子が流れます。どういうことだよと思われた方、是非一度ご覧になって見てください。カッコ良いサビと意味の分からない映像のギャップに何とも言えない気持ちになります……。


[Verse3(3:42~)]

「天が俺に笑いかけるんだ」

「この世に生まれたことは何という贈り物だろうか」

「だがそんなこと誰も知らない」

「お前が俺にくれた贈り物」

「誰も知らないんだ」


 おっと、これは深い言葉ですね。この世に生を受けたことこそが天からの贈り物だというけれど、そのありがたみについては、誰もが意識的に考えていない。そういう意味でしょうかね。


 翻訳は以上になるのですが、この後アウトロとしてヒスパニック系のラジオ音声が流れてきます。内容は簡単に言えば「Queens of the Stone Ageから『First It Giveth』です。それではどうぞ!」みたいなスペイン語です(『First It Giveth』は同アルバム収録の楽曲です)。


 どういうことかといいますと、『No One Knows』や『First It Giveth』の収録アルバム『Songs For The Deaf』は、ラジオによる選曲という設定になっていて、かつてヒスパニック系ラジオ局がQueens of the Stone Ageの楽曲をオンエアすることを拒否したために、それを皮肉った形でそうなっているようです。詳細は僕もよく知らないのですが、面白い試みですね。


 それでは、長ったらしい紹介となってしまいましたが、今回もお付き合い頂きまして、大変ありがとうございました!


 次回予告になりますが、USロックから僕のお気に入りをひとつ紹介させていただいたので、次はUKロックのお気に入りをひとつ、引き出しの奥深くから引っ張り出してくることにしましょう。ヒントは、そうですねえ……。比較的最近のバンドで、可愛らしいマスクを被った覆面DJかつEDMプロデューサー・Marshmelloとのコラボ曲でも知られています。さて、おわかりいただけましたでしょうか……?



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はQueens of the Stone Age - No One Knowsから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る