The Corrs - Queen of Hollywood

 さて、第26作目になります今回も大変ありがたいことにリクエストを頂いておりますので、予告通りそれにお応えする形で、アイルランド出身のフォーク・ロックバンド・The Corrsを紹介させていただきます。The Corrsのメンバー構成は、ギタリスト兼キーボーディストの長男・James、ヴァイオリニストの長女・Sharon、パーカッショニスト兼ピアニストの次女・Caroline、リードボーカリストの三女・Andreaの4名から成る兄妹バンドです。メンバーが共有しているファミリーネームが"Corr"であるから、バンド名がThe Corrsであるという割と安直な、良く言えば親しみやすいネーミングですね……!


 1990年に結成されたThe Corrsは、兄妹全員が1991年制作のイギリス・アイルランド・アメリカの三国による合作映画『The Commitments』のオーディションを受けた際に、映画でミュージック・コーディネーターを務めていた後のバンドマネージャー・John Hughesによって発掘され、カナダの音楽家・David Fosterの目に留まり、彼の設立したレーベル・143 Recordsと契約するに至りました。2005年からの10年間は一時的に活動休止していましたが、2015年より再開を果たしています!


 The Corrsの特徴はやはり何と言っても、Bodhrán(バウロン)と呼ばれるアイルランド特有のフレームドラムやTin whistle(ティンウィッスル)と呼ばれるアイルランド発祥の縦笛といった物珍しい楽器にバイオリンが主体となって、伝統的なアイリッシュケルト・サウンドと洗練された現代的なポップ・サウンドが見事に調和している点ですね。その特徴的な音楽性は、一度聴いたら病みつきになること間違いなしです……!


 そんなThe Corrsから僕が紹介する楽曲に選んだのは、1997年にリリースされて以来、各国で記録的な商業的成功を収めた2ndスタジオ・アルバム『Talk on Corners』から『Queen of Hollywood』です! この曲は、前回紹介させていただいたAlanis Morissetteの名盤『Jagged Little Pill』の収録曲をプロデュース及び共同作詞したGlen Ballardと共に、三女・Andreaが共同作詞したものとなっております。──僕はThe Corrsについてあまり詳しくないので、調べてみるまでアルバムのプロデューサーが同じであるという共通点があるとは知りませんでした……! 前回紹介したAlanisの曲と見比べてみれば、語彙や表現にも似通ったものがあるのでしょうか? そういったところにも注目しながら、歌詞を見て行くことにしましょう!


 皆さんもご自身で歌詞の原文を参照しながら、紹介する音楽を聴きながら、奥ゆかしいケルティックミュージックと大衆向けポップメロディーのハーモニーを感じてください! そしてあわよくば、僕の和訳と解釈が読者様方の音楽への没入感をより一層高めるスパイスとなれれば幸甚でございます……。なお、今回から和訳している歌詞のパートを分かりやすくするために、翻訳している歌詞の時間を書き添えておきますので、ご参考までに。


[Verse1(0:23~)]

「彼女は夜通し車を走らせた」

「都会の周辺から」

「母親と喧嘩別れして」

「夢を理解してもらえなかったから」

「友人たちは内緒話に興じている」

「決して理解はしてもらえないだろう」

「でもいつも何かが違っていた」

「目を逸らさない方法」

「そして彼女が描いた絵は」

「才能と魅力に溢れていた」

「彼女のボーイフレンドは彼女のことを愛していたけど」

「どこか満たされないと感じていた」

「彼は彼女と再会することはなかった」


 まず第一に、これまで紹介してきた歌詞と違うのは、登場人物の主語が"I"や"You"といった主観的なものではなく、"She"と"He"で構成された3人称視点ということですね。改めて、この楽曲の題名は『Queen of Hollywood』です。直訳すれば「ハリウッドの女王様」ですよね。ハリウッドといえば映画産業の中心地ともいえるアメリカ・ロサンゼルスの地名です。映画のオーディションを受けるくらいには映像作品に関心があると思われるThe Corrsのバンドメンバーたちの歴史から推察するに、歌詞に登場する「彼女」は映画作品に出演してハリウッドの女王になることを夢見ていて、その夢をと表現して才能ある人間であることを表しているのでしょう。しかし、その夢を母親に理解されなかったために、都会を飛び出して当てもなく車を走らせていた──といったところでしょうか。


 さらに『Queen of Hollywood』の歌詞には、当該楽曲が収録されているアルバム名でもある"Talk on Corners"という言葉が登場します! 僕は"Corners(隅っこ)"での会話ということで「内緒話」と翻訳したのですが、適切かどうかは保証できません……。おそらく、親にも理解されないどころか、周囲の友人たちにもひそひそと陰口を叩かれるほどに無謀な夢だと思われているのでしょうね。そんな彼女と付き合っている「彼」もまた、彼女との関係に将来性を感じなくなって自然消滅、といったところでしょうかね……。なんだか世知辛いです。


[Chorus(1:00~)]

「彼女は歴史上の偉人のようにはなれない」

「彼女は自身の運命にもっと他のものを見ているから」

「どんなことが起きても」

「どれだけ打ちのめされても」

「彼女はハリウッドの女王になる」


 素敵なサビです……! Andrea Corrによる麗しく繊細さを感じさせる歌声の中にも、どこか夢を追いかける人間を応援するようなエネルギッシュというか、迫力を感じることができます! 既に成功した人間を模倣しようとしたところで、全く同じようにはなれないものです。だけど、「彼女」には彼女なりのやり方があるし、彼女という存在は唯一無二の個性ですから、地道な努力を続けていればいつかは何者かになることができる。そんなメッセージが込められた内容に思えます……。


[Verse2(1:24~)]

「皮肉屋はきっとこう思うだろう」

「この夢と何が違うのかって」

「数えきれないほどの人々の夢と」

「皆テレビの言うことを信じている」

「舗装された道で自分たちの手形を見る」

「カメラの明滅と」

「光り輝くリムジンを」


 おっと、いきなり難しくなりましたね。翻訳センスがないので解釈で補いますと、おそらく「彼女」の夢を疑っている有象無象は、自分たちが持っている現実的な夢と彼女の持っている無謀な夢の何が違うのだろうかと、馬鹿にしたような見方をしているのでしょう。でもいつか、テレビの液晶に手形を付けながら、カメラフラッシュの嵐の中で高級リムジンに乗っている「彼女」の姿を見ることになる。そしたら初めて、皮肉屋たちは彼女の夢を信じるようになるだろうと、そういう感じでしょうか。──伝わっていないと思いますが、僕の語彙力と説明力はここいらが限界のようです。お恥ずかしい限りです……。


[Chorus(1:43~)]

「彼女は歴史上の偉人のようにはなれない」

「彼女は自身の運命にもっと他のものを見ているから」

「どんなことが起きても」

「どれだけ打ちのめされても」

「彼女はハリウッドの女王になる」

「彼女は夢を信じているよ」

「これは胸いっぱいのファンタジー」


[Verse3(2:43~)]

「彼女の母親は散り散りになった写真を集めてふっと笑う」

「でももし彼女がカーテンの外を見れば」

「きっと泣いてしまうかな」

「彼女の身体には手形が付いて」

「瞳には悲し気な月明かりが降り注ぐ」

「もう無邪気な子供じゃないのよ」


 抽象的でかなり分かりずらいですが、考察します。夢を否定されて家を飛び出した「彼女」は母親に平手打ちをするなりして身体に手形を残して、写真をびりびりに引き裂くなど、よっぽどの大喧嘩をしたんでしょうね。家に残された彼女の母親はバラバラになった写真を繋ぎ合わせて笑い、冷たい月明かりに涙を流すだろうということ。母親の気持ちも分かるけれど、「私は昔のように無知な子供のままではないぞ」という彼女の想いが表現されているのかもしれません。


 はい、あとは概ね既出のフレーズの繰り返しとなるため、歌詞紹介は以上にしたいと思います! 今回もお付き合いいただきありがとうございましたー!


 The Corrsのように、自国の伝統音楽を世界中の人々に向けてアレンジを加えて商業的成功を果たすということは、素人の僕でも凄いことだと分かります。やれどんな賞を取ったとか、どれだけのセールスを叩き出したとかよりも、遥かに価値のある偉業だと個人的には思いますね。僕はThe Corrsの経歴や詳細について良く知らなかったので、色々と調べてみて彼らの音楽について学んでいくのはとても楽しかったです! リクエストを送っていただき、このような機会を提供してくださった読者様、本当にありがとうございました!


 さて、次回予告です。リクエストも消化しきってしまったので、通常通り紹介してほしいアーティスト・楽曲があれば募集しますが、強制ではないので無理はなさらないでください! 次回は多分個人的趣味を全開にしてUSロックバンドをピックアップしてくると思います。あ、そうだ。折角今回は『Queen of Hollywood』を紹介したのだから、"Queen"繋がりであのバンドを取り上げることにしましょう! さて、皆さんはお分かりになりますでしょうか……?



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はThe Corrs - Queen of Hollywoodから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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