Led Zeppelin - Rock and Roll

 前回に引き続きイギリス繋がりですが、いよいよ神の名前を口にする時が来たようですね。1968年にロンドンで結成された、革新的ロックバンド──Led Zeppelinから『Rock and Roll』を紹介しましょう。


 これまでも様々な神格的アーティストの名を挙げ、楽曲を紹介してきた訳ですが、Led Zeppelinはハードロックシーンにおける始祖ともいえる存在でしょう。フォークにブルースなど、多岐にわたるジャンルに影響を受けた独特な音楽性でありながら、重厚なギターサウンドによって見事に調和されたメロディーが世界中を席巻しました。


 1962年に結成された同郷のロックバンドであるThe Yardbirdsが解散の危機に瀕した際に、ギタリスト・James Pageによって集結した、セッション仲間のベーシスト兼キーボディスト・John Paul Jonesに加え、当時無名のボーカリスト・Robert Plant(後に大英帝国勲章を受勲)、その仲間のドラマー・John Bonhamによる4人がLed Zeppelinを名乗って再出発したことが、全ての始まりでした。


 彼らの音楽性は当初、批評家の間であまり受け入れられていなかったようですが、商業的成功を収めるのに時間は掛かりませんでした。1980年には、John Bonhamの死を以てバンドは事実上解散となりましたが、その後もコンサートなどで散発的に再結成を果たしています。2007年に母国の故郷ロンドンで行われたコンサートにおいては、Johnの長男・Jason Bonhamがドラムを担当したとか。


 Led Zeppelinの国際的な知名度を考えたら、彼らの偉業についてこれ以上の説明は不要かもしれません。ありきたりな紹介となりますが、Led Zeppelinが結成以降10年間の活動期間でリリースした8枚のスタジオアルバムの総販売枚数は、世界累計2~3億枚と推定されており、その全てが本国イギリスでNo.1の座に輝いています。米・ロックンロールの殿堂における伝記では「Led Zeppelinは影響力の面で、1970年代版のThe Beatlesだった」という旨の記載があり、米・Rolling Stone誌も彼らを70年代最大のバンドとして認めており、同誌の選ぶ「歴史上最も偉大なアーティスト」では第14位に位置しています。


 そんな類まれなる功績を残してきたLed Zeppelinの偉大なる楽曲のうち、たったひとつを選ばなければならないなんて酷ですよね……。それでも僕は、苦渋の決断を致しました。今回、断腸の思いで選ばせていただいたのは、1971年の4thアルバム『Led Zeppelin IV』から『Rock and Roll』でございます!


 『Rock and Roll』は、レコーディング合宿中だったLed Zeppelinのメンバー四名がスコットランド出身のピアニスト・Ian Stewartを迎えてジャムセッションをしていた時、たまたまJohn Bonhamがアメリカのミュージシャン・Little Richardの『Keep a Knockin』のイントロを叩いたところ、James Pageが即興でリフを乗せたことで何かインスピレーションが生まれたのか、その場のノリであっという間に生まれたという偶然の産物です。ですから、珍しく『Rock and Roll』の作詞・作曲のクレジットにはメンバー全員の名前が刻まれています!


 長ったらしい紹介もこの辺にしておきましょう。メンバー全員が一丸となって生み出した名曲をループ再生しながら歌詞を用意して、僕の和訳と解説を見ながらロックンロールの世界へと飛び込んじゃってください。それでは、参りますよ──。


「ロックンロールは久々だよな」

「長いこと彷徨さまよい歩いてるんだ」

「ああ、連れ戻してくれ、連れ戻してくれよ」

「思い出させてくれ、ベイビー、俺の故郷を」

「途方もなく長く、果てしない」

「孤独で寂しい時間を過ごしていたんだぜ」


 アップテンポで繰り出される絶妙に子気味良い単語の羅列とイカしたリフのコラボレーションに、一度聴いたら病みつきになること間違いなしだと思います!


 歌詞の内容も至って単純で、ロックンロールというLed Zeppelinにとっての、そしてファンにとっての故郷を懐かしみながら「ロックンロールの無い時間なんて退屈だろ」というメッセージが込められているに他ならないのではないかと感じます。


 軽快なリズムに乗せて、次々行きますよ!


「愛の本を開くのは久々だな」

「愛を失った生活にどれだけ涙を流したことか」

「連れ戻してくれ、頼むから」

「思い出させてくれ、ベイビー、俺の故郷を」

「途方もなく長く、果てしない」

「孤独で寂しい時間を過ごしていたんだぜ」


 愛というのも、おそらくはロックンロールのことでしょう。「ロックンロールを失った生活に意味などない! 皆で故郷に帰ろうぜ!」といった明るい気分にさせてくれます。ほら、気付いたら歌詞をついつい口ずさんでしまっているのではないですか……?


「長いこと月夜を歩いていたみたいじゃないか」

「誓いなんて意味はないさ」

「両腕を広げるんだ」

「そしたら、俺の愛を受け入れてくれよ」


 「俺のロックンロールだ、受け取れぇ」ってことですね。本能に訴えかけるよな分かりやすい歌詞に、分かりやすくカッコいいリズム、最高です。やはり、以前にご紹介したBlurの『Song 2』みたいに、短期間で制作されたローファイな音楽っていうのは何故かファンのハートを鷲掴みにしてしまいますね。そういったバックボーン込みで惹かれていくのか、余計なことを考えない純度100%の直感的な発想の勝利といえるのか、世の中どんな作品がヒットするのか分からないものですね。あわよくば、僕が執筆している思い付きをつらつらと書いたこの駄作も、何処かの誰かに響けば良いなと思います……!


 はい、臭い台詞に蓋をするかのように今回はここまでにしておきましょう。お疲れさまでした。USロック好きを豪語している僕としては、イギリスのハードロックシーンを代表する神の一柱を召喚してしまったので、ここはLed Zeppelinに対抗できるほどの伝説的なアメリカンロックを紹介したいものです。なので、次回は同年代を代表するUSアーティストから何かしら引っ張ってくることにしましょう。何が出てくるのか、皆さんも予想してみてくださいね!



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はLed Zeppelin - Rock and Rollから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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