Take That - These days

 僕の個人的な肌感覚で、世界的知名度の割にあまり日本では認知されていないと感じているイギリス・マンチェスターで1990年に結成された、ポップ・ロック系のボーカルグループ・Take Thatから『These days』を今回はご紹介してみたいと思います。


 Take Thatの人気は国内外に多大なる影響を与え、Backstreet Boys, Spice Girls, Westlife, 5iveといった、90年代のポップ・シーンを彩るボーカルグループの流行の先駆けとなりました。その功績は英テレビ局・BBCによって「UK音楽史上ビートルズ以来の老若男女問わないヒットメーカー」と称されるほど、稀有な存在として知られているようです! 2012年のロンドンオリンピック閉会式においてBBCの解説者は、Take Thatについて「イギリス国民が最も愛するボーイ/マンバンド」と紹介したとかなんとか……。


 『Back for Good』『Patience』といったバラード調の曲から『Relight My Fire』『It Only Takes a Minute』などのダンス・ポップ調の曲まで、幅広い音楽で人気を博し、圧倒的歌唱力とほとんどの楽曲の作詞作曲を担当するという天賦の才を持ったリードボーカル・Gary Barlowを中心に、他のメンバーがコーラスするといったスタイルで1996年までの活動期間、本国のチャート上位を独占していました。


 しかし、メンバー間の不和などに起因して、1995年にセカンドボーカル・RobbieことRobert Williamsが脱退してソロアーティストとして転向すると、マネージャーとの関係悪化などが折り重なってTake Thatは1996年2月13日に解散を発表──奇しくも。この日は脱退した元メンバー・Robertの誕生日でした……。解散に強く反対したメンバー・Howard Donaldはこれを機に自殺未遂を図るなど、グループは波乱万丈の空中分解となってしまいました……。


 ですが、2004年にドキュメンタリー番組『Take That: For the Record』の撮影のために結集した彼らは、翌年にボーカルグループとして奇跡の復活を遂げることになりました(Robertの正式な復帰は2010年となりましたが)! 1990年代の結成当初は、露出度高めの衣装を着た、歌って踊れるアイドルグループとしての側面が強く、過激で攻めたPVをリリースしたり、ゲイ・クラブでのライブ経験からゲイ・バンドと揶揄されるなど、ファンの間からは黒歴史にも似た扱いをされているようです。


 一方で、当のメンバーたちは90年代のノリも1つの歴史として受け止めているようで、再結成以降はアイドルの枠組を越えた真のボーカルグループとして、より音楽性へのこだわりを前面に出した実力派としてのセールスが成功を収めています。Take Thatに影響を受けたグループとして先述した5iveやSpice GirlsもTake Thatの活動再開を受けて再結成しており、その影響力が業界においても如何に凄まじいものだったかが窺えます!


 そんな名実共にブリティッシュ・ポップ・ミュージックの頂点に立っているTake Thatの、2014年にリリースした7thアルバム『Ⅲ』のリードシングル『These days』は、旧メンバー・Jason OrangeとRobert Williamsの再脱退後、残された3人がトリオとして再起を誓った最初の楽曲になります! つまり、現在活動中のメンバーによる音楽の原点な訳ですね。


 Take Thatは知っているけど再結成しているのは知らなかったとか、1990年代以降の音楽は聴いたことがないとかいう読者の方々には是非ともお勧めしたい1曲であり、そもそもTake Thatを知らないという方も必見の楽曲だと思います! 是非ともその歌詞を見ながら、僕の和訳と共に新たな音楽の扉を開いてほしいです!


「ああ、君に訪れるであろう未来が見えるよ」

「悲嘆に暮れて涙を流す君の姿が」

「その中で君の信念が見えた」

「生を実感するために無駄にしてきた月日の中でね」

「そしてその世界が崩れ去ったときに感じる」

「痛みや冷たさなんて」

「誰も理由を教えちゃくれない」

「僕たちがいずれ成る何者かのため」

「その戦いに僕らは打ち勝ってきた」

「僕たちが太陽を掴み取るその日のために」

「今夜は派手に行こうか」


 暗く悲しいテイストの歌詞を紹介することが多い本作においては、ちょっと珍しい明るい内容です。涙を流した日も時間を浪費した日もあったけれど、その過去によって与えられる痛みや苦しみなんて誰も理解してはくれないのだから、前を向いて何者かになるために光に向かって走り出そうぜ──的なニュアンスですよね、多分……?


 サビの終わりまで一気に行きます……!


「君が何かを夢見ているとき」

「そして君がその世界に住んでいたとして」

「全ての希望は最善のものだ」

「僕に寄りかかって休んでもいいんだよ」

「君は僕のことを呼ぶけど」

「僕はずっとここに居たよ」

「現実を見て生活するべきだね」

「ただ見ているだけじゃなくね」

「思い出させてよ」

「皆爆発する前に」

「皆石になってしまう前に」

「夜が明ける前に」

「懐かしいよね」

「全てが始まった場所が」

「僕らの思い出が詰まった場所が」

「それらが僕らを追い越す前にさ」

「今夜、僕らは目の前の日々のために生きると決めるんだ」

「今夜、僕らはいつか今夜のことを思い出すだろう」


 夢の世界で現実逃避している主人公に、しっかりと外の世界を直視して生活を営むべきだと忠告してくれている感じですね。思い出に浸って過去の美しくも懐かしい日々を回想しているだけでは前を向けない。だから、今夜こそは前を向いて生きることを決めて、いつかまた今夜のことを懐かしいなーと思い出せれば良いよねっていう意味が込められていそうです。うーん、個人的に刺さる歌詞ですねぇ……。


「なんて日だろう」

「あの夜に信じた」

「群衆に紛れた1つの顔に過ぎないって」

「君の心臓の鼓動に」

「僕は既にその中に居るよ」

「君はうまくやっているよ」

「僕たちを両手に抱き締めながら」

「あぁ、何を待っているんだ」

「思い出させてよ」

「制御できなくなる前に」

「テーブルがひっくり返ってしまう前に」

「全部台無しにする前に」

「懐かしいよね」

「全てが始まった場所が」

「僕らの思い出が詰まった場所が」

「それらが僕らを追い越す前にさ」

「今夜、僕らは目の前の日々のために生きると決めるんだ」

「今夜、僕らはいつか今夜のことを思い出すだろう」


 悲観的になることもあるけれど、僕たちが付いているから君も頑張って──というメッセージですかね? 簡単ですが、これで歌詞の紹介は以上になります! 今回もお読みいただきありがとうございましたー!


 実際のところ、皆さんはTake Thatについてどのくらい知っているのでしょうか。僕の周囲の人々は彼らについて質問しても知らないの一点張りで、やはり日本においては知名度が低いのかなーと勝手に思っているのですが「いやいや、全然知ってるよ」という方はごめんなさい……。


 次回はそろそろ有名所を攻めていきたいと思います。というのも、マイナーなアーティストほど紹介するための情報が少なく、必然的に書くことも少なくなってしまうので、あまり紹介するのに向いていないということもあります。何処かのタイミングで番外編みたいに、僕のお勧めするマイナーアーティスト3選──のような感じで、纏めて紹介するのも良いかもしれませんね。次回は、特にリクエストが無ければ、かの有名な1960年代のロンドン発UKロックバンドからご紹介いたします。


 それでは……!



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はTake That - These daysから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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