Valley - homebody

 お待たせしました。第15作目に選ばせていただいたのは、カナダ・トロントを拠点とするオルタナティブ・ポップバンド──Valleyから『homebody』でございます!


 少し更新が途絶えたのには理由がありまして、この度、新連載としてミステリー小説『雇われ探偵マツリカ』なるものを執筆しており、そちらの方に集中していました。もしこの短編集を楽しみにしてくださっている読者の方が居れば、ごめんなさい。小説は、現在事件発生と推理パートに入っております。


 そうです。この場を借りて少し宣伝です。──えっ? 「洋楽の話を聞きに来たのに関係ない話をするならもう帰る」って? すぐに話を戻します! 待ってください!


 Valleyを知らない方のために少しだけ説明すると、彼らは元々は2つの異なるバンド──Cars&GuitarsとNational Parksのメンバーが2014年に地元のスタジオで誤って、同じ時間帯にダブルブッキングされたことをきっかけに意気投合して結成します。2020年、カナダのグラミー賞と称されるJuno Awardsにおいては、最も活躍が認められた新人グループに送られる"Breakthrough Group of the Year" にノミネートされ、2022年には同賞で"Group of the Year"に輝くなど、今を時めく新進気鋭のポップスターの卵です。


 当時、一部しか完成していなかった楽曲『Like 1999』を「動画が100万回再生されたら正式にリリースする」という旨のキャプションと共にTikTokにて配信したところ、一瞬で100万回再生されたそうです。心地良いメロディと若年層特有の視点から社会の憂鬱をテーマに歌った歌詞は、若者を中心に凄まじい人気を博しているようですね。


 そんなValleyのシングル『homebody』は2021年、英語圏とフランス語圏の両方でカナダの新興音楽の最高峰を表彰する毎年恒例のコンクールであるECHO Songwriting Prizeの後身──SOCAN Songwriting Prizeにノミネートを果たしました。まあ、とにかく凄いんですよ!


 それではお待ちかね、歌詞の和訳紹介の方に行ってみましょうか。Valley独特の世界観から繰り出される歌詞の意味を僕と一緒に考察しながら、奥深い洋楽の世界の没入体験を楽しんでいただけると幸いです。


「心が迷子になってしまう日がある」

「星占いは僕が精神病者だと言うんだ」

「僕のフィルムロールを埋めてくれるものは何もない」

「ずっと枕の上で過ごすんだよ」


 心ここにあらずといった様子で、空虚で鬱屈とした気分を抱えたまま寝て過ごしている若者の苦悩が、ありありと描写されていますね。「僕を精神病者だと言う」というのは、誰かにそう言われた経験があるのか、それともそんな自責の念に駆られて本当に「自分はおかしい人間なのかもしれない」と疑っているのか、皆さんにもそんな経験ありませんか? ちなみに、僕はこういう経験しょっちゅうあったので、凄く共感できます……。


「友達の言うことをどう消化したらいいのか」

「彼らは時間が解決してくれる、と言うんだ」

「でもベッドに身を委ねてみようと思うよ」

「僕の頭には睡眠が必要だから」


 友達に相談したところ、寝て忘れなさいと言われた主人公はこう思ったでしょうね。「いつも寝てるけど全く忘れられないから困ってるんだ」とか「そもそも悩みや不安で寝付けないんだ」とか、そんなことを。でも、結局眠くなったらいつかは脳が休みを必要とするから、今日もベッドに身を委ねるしかない。これまで紹介してきた中では、歌詞のイメージはEasy LifeやAviciiに近いです。


 美しい男声と女声のコーラスによって歌われるサビに入っていきます。


「誰も僕を理解してくれない」

「控えめに生きてきたはずなのにな」

「最近は既読通知ばっかり出して」

「出不精になっていくのを感じるんだ」

「誰も昔の僕の事なんか知らないだろ」

「車の鍵に触れる必要もない」

「最近は友達のストーリーをフォローするばっかりで」

「出不精になっていくのを感じるんだ」


 儚げな歌声に悲愴感が漂っています。何というか、この歌詞を歌っているValleyには「演技力」があるなぁと思わされます。本当に歌詞の主人公が抱えている悩みを自分たちも抱えているかのようにしみじみと、噛み締めるように歌っているんです。まだ聞いたことのない方が居れば是非一度は聞いてみて、感想をお伝えください。


 友達からのメッセージ(外出の誘い?)に既読を付けるだけ、友達が楽しそうに遊ぶ様子が映ったインスタグラムのストーリーをフォローするだけ、そんな中で、車で外出することもなく自分ひとりだけ孤独に家に引き籠っている。そんなつらい主人公の心情が描かれていますね。歌詞の言い回しも今時感があって、より生々しいのがまた良いですね。いやー、悲しい……!


 続いて2番です。


「時の流れが分からなくなる日があるんだ」

「僕の聖書には2時まで寝ておけと書かれてる」

「今度はインターネットのブラックホールに吸い込まれて迷子さ」

「貴方のことを考えるのはまるでタイプミス」

 

 以下、サビの終わりまで繰り返しです。


 いやぁ、重ねて言うようでしつこいですが、僕にもこういう経験があったので時の流れが分からなくなって昼夜逆転して、午後2時(14時)まで寝てしまうがために、深夜帯に覚醒してインターネットの闇に飛び込むといった、負のスパイラルに囚われてしまう主人公の気持ちは良く理解できます。誤解を与えないように一応言いますが、僕はもう大丈夫です。音楽の力に助けられながらこうして布教活動もしながら、持ちつ持たれつで生きています。──嘘です。僕は持たれっぱなしです……。


 最後の曲調変化です。


「もし今夜部屋を出たとして」

「どこに行けば良いのかわからない」

「君が遊んでくれるってのか?」

「朝になったら送って行くよ」


 おや、誰かが遊びに誘ってくれたようですね。朝になったら送っていくというので、必要ないと言っていた車の鍵を忘れずに持っていくのでしょう。あぁ、良かったですね、主人公! 僕の翻訳が間違っていなければですが……。


 歌詞は以下同様のフレーズを繰り返すので、翻訳は以上です。今回紹介したValleyの『homebody』は、歌詞の中に略語や流行り言葉、スラングなどが多分に含まれております故、翻訳に苦労致しました。間違っていたら本当に申し訳ございませんが、おそらく大丈夫かと。


 もし「ここは間違ってる!」とか、「ここの訳はこっちの方が素敵!」とかありましたら、遠慮なくコメントで教えてください。僕も勉強させて頂きたいです。次回はそろそろ王道と呼べるような音楽を持ってきたいですね。何かしら考えておきます。リクエストもあればよろしくお願いしますね!



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はValley - homebodyから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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