Sheppard - Coming Home

 PV数回復の兆しは見えないままなので、もうこうなったら自由度高めにチョイスしていきますよ! オーストラリア繋がりで持ってきました第14作目となる今回は、2009年に結成されたインディーポップバンド・Sheppardから『Coming Home』でございます。


 Sheppardとは、パプアニューギニア出身のGeorge, Amy, Emmaの3兄妹のファミリーネームです。若くしてオーストラリアのブリスベンに移住した3人は、結成当初は前2者のデュオとして活動を開始しますが、2013年までに現メンバーを巻き込んで5人組バンドとして今日に至るまでめきめきとその頭角を現してきました。


 私事で恐縮ですが、僕も5年以上前にオーストラリア・ブリスベンに留学して2か月ほど学校に通っていました。7月から9月に掛けてのことだったと記憶していますが、日本と気候が大して変わらず、大変過ごしやすかったのを覚えています。オーストラリア第3の都市と呼ばれるほどの都会ですが、街の景観などが非常に美しく、ブリスベン川に架かる橋から見えるビル群は東京のものとは一味違い、壮観でした。


 話が脱線しましたが、軌道修正していきます。Sheppardは、インディーでリリースした作品『Let Me Down Easy』が2013年に、オーストラリア音楽業界大手のオーストラリアレコード産業協会が主催する、1978年にオーストラリアの音楽業界の優れた作品を称える目的で作られた音楽賞であるARIA Music AwardsでBest Independent Releaseとしてノミネートされました。


 翌年7月11日に『Bombs Away』で遂にメジャー・デビューすると、オーストラリア国内のチャートにて2位を獲得し、2ndシングル『Geronimo』は国内シングルチャートにて、かの有名なPharrell Williamsのシングル『Happy』がリリースされるまで3週間連続で1位に君臨し続けました。ボーカリスト・Amyは『Geronimo』について製作期間はたったの2時間、しかしヒット曲としての確信があったと述べています。──いやはや2時間ですか、世界で最も価値の高そうな時間ですね……。


 Sheppardのメジャー・デビュー・アルバムとなった『Bombs Away』は2014年版のARIA Music AwardsにおいてBest Independent Releaseのほか、Album of the Year, Best Group, Best Pop Release, Song of the Year, Producer of the Year, Best Videoといった計7部門にてノミネートされるなど、オーストラリアで圧倒的な人気を誇っています。彼らの今後の躍進にも大注目です……!


 そんなSheppardから今回紹介するのは、2017年にシングルとしてリリースされたCMソングなどでもお馴染み『Coming Home』です。何処となく夏を感じさせるような特徴的なメロディーと高揚感のあるコーラスに聞き馴染みがあるという方も居るのではないでしょうか……?


 とにかく、これ以上の説明は不要ですかね。歌詞の和訳紹介に移って行きたいと思います!いつも通り歌詞の原文をご覧になって頂くか、当該楽曲をループ再生しながら音楽の世界への没入体験をお楽しみください……。


「目まぐるしく過ぎていく時の中で」

「一瞬を掴み取ろうとしても、私の手をすり抜けていくんだよ」

「私の目に映るのは長きにわたる日常と暗い夜だけ」

「君が居なければ私は迷子のままだけど、今から向かうよ」

「だから辛抱強く待っててね」


 車を高速で走らせた時に外の光が1つの線を描いているように見えるように、日常は目まぐるしく過ぎていきます。その光を走りながら見ようと思っても、人間の動体視力に限界があるように、立ち止まらない限りははっきりと見ることができませんよね。そんな速すぎる時の流れの中で、時には迷子になることもあるかもしれませんが、人はそれぞれ、帰るべき場所だけは知っています。歌詞の主人公はまさに『Coming Home』の途中のようですね。


 同じように、過ぎ行く凡庸な日常の中を切り取ってみても、その一瞬は他愛ないものかもしれなません。だけど、故郷に帰ればその他愛もない一瞬の大切さが身に染みて実感できる気がします。そんな感覚を、この歌詞は表現しているのかなーと僕は感じました。──あれ、伝わってるかな……?


「今宵私は家に帰るよ」

「朝まで子どもたちが騒ぐ場所、Fortitude Valleyで会おうね」

「信じられない、私の街は見違えるよう」

「今夜には帰って来るよ。朝まで眩い光の中で楽しむ準備は出来てるよね」

「信じられない、私の街は生き返ったみたい」

「だって帰って来たんだから」


 Fortitude Valleyというのは、オーストラリア・ブリスベンに実在するダンスクラブのような若者の溜まり場を意味していると言われています。故郷を少し離れていた間に街はすっかり見違えるように変わってしまったけど、そんな思い出の場所は残っていて、全て忘れて朝まで騒げるような仲間も失っていない。変わるものもあれば、変わらないものもあるという様子が描かれていますね──あれ、何処かで聞いたことがあるような……。


 続いて2番です。


「一生怠けて過ごすのは嫌だな」

「だって私はずっと走り続けて来たんだから」

「私には何も残されていないの」

「地平線に沈む夕日が家に帰って来たことを実感させてくれる」

「だから深呼吸してさ、しっかり掴まりなよ」


 主人公は努力に努力を重ねて頑張って来たけれど、どういう訳か報われることはなく心労を抱えて故郷に帰って来たことが窺えますね。1番の歌詞と照らし合わせてみても、家に帰って来た喜びと日常への悲観という対比が強調されて描かれているような気がするのは、僕だけでしょうか。それでも、曲調からしてきっと、明日に向かって前向きな気持ちになっているであろう主人公の明るい心情が感じられるので、込められた意味はポジティブなものでしょう。多分。


 サビフレーズが繰り返され、最後の曲調変化です。


「時間は感情を色褪せさせるけど」

「でも距離で私たちの心が離れることはない、でしょ」


 どんなに激しい喜びも、深い悲しみも、時間は良くも悪くも一時の感情を次第に忘れさせますよね。けれど、人と人との絆は、距離が離れても色褪せない。それはグローバリゼーションの促進や情報通信技術の発達が顕著な現代においては、まさにその通りだと思います。素敵な歌詞ですよね……!

 

 残りは同じサビのフレーズで終了です。今回もお読みいただきありがとうございました!


 次回以降も暫くは各国のポップミュージック・アーティストを取り上げていく予定ですので、暫しお付き合いください! 一瞬でテンションをぶち上げてくれる激しいロックミュージックも最高ですが、しみじみと趣深い側面があるポップミュージックも良いものだと、そう思って頂けたら幸いです。


 それでは……!



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はSheppard - Coming Homeから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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