AC/DC - Back In Black

 最近は如実にPV数が落ちているので、カクヨム読者の方々に需要があると思われるロックの世界へ、一時帰還することにしましょう。今回紹介するのは、オーストラリア発のロックバンド──AC/DCから『Back In Black』です!


 1973年にシドニーで結成されたAC/DCですが、そのメンバーはスコットランド人兄弟のAngus YoungとMalcolm Youngが中心となっております。ちなみに、AC/DCというバンド名。どうやらバイセクシャルを意味する隠語でもあったため、バンド結成初期には勘違いしたゲイバーからの出演依頼が何度かあったというのですから驚きです。


 AC/DCは2003年に、ロックンロールの歴史やその発展に影響を与えたアーティスト、プロデューサー、エンジニアなどの著名人を展示・記録していることで知られるアメリカの殿堂・Rock and Roll Hall of Fame入りを果たしています。Rolling Stone誌を筆頭に、数多くの主要音楽誌において偉業が取り沙汰されるなどその功績は折り紙付きで、リリースされたオリジナルアルバムの全てがマルチミリオンセラーを達成しているという、驚異的な記録を残しています。


 どんなに偉大なバンドや歌手であったとしても、人にはそれぞれ好みというものがあります故、よっぽどの愛が無ければ全ての楽曲を聞くことはありません。ですが、この記録はAC/DCの楽曲が広くあまねく万人に受け入れられてきた証拠でもありますね……!


 その他、全世界累計アルバムセールスは世界史上10位タイの2億4000万枚以上を記録しており、全米ではロックバンドとしてのアメリカ音楽史上5位となる、7500万枚以上のセールスを達成しています。もはやAC/DCの楽曲は、世界中で現象的存在として語り継がれているといっても過言ではないでしょう。


 そんな長年にわたって世界中のロック・シーンを席巻してきた彼らの最近の動向ですが、メンバーの高齢化に伴って度重なる不幸に見舞われていました。2016年に敢行されたワールドツアーの最中、予てから患っていた聴力障害の症状が悪化してしまった現リードボーカル・Brian Johnsonがドクターストップ、3か月後には度重なるメンバー交代から活動意欲を失くしたと語るベーシスト・Clifford Williamsの引退表明、2017年にはバンドの中心的存在だったギタリスト・Malcolm Youngが64歳でこの世を去り、初期メンバーはAngus Youngただひとりとなってしまいます……。


 でも、ここで朗報です。Brianの聴覚問題は一般販売されていないという最新鋭の機器で解消されたようで、覚せい剤所持や殺害教唆で逮捕されていたドラマー・Phil Ruddの復帰も追い風となり、Cliffordは引退を撤回──崩壊寸前だった伝説のバンドは、見事に『Back In Black』を果たしたという訳ですね!


 2020年10月にリリースされた新曲『Shot In The Dark』に加え、6年越しのニューアルバム『POWER UP』は、全米・全英含め世界21ヵ国でチャート1位を記録したというのですから、どれ程のファンが彼らの復活を待ち望んでいたのかが分かります。


 そろそろ本題に入りましょうね。今回紹介する『Back In Black』は、1980年に友人の車中で睡眠中、嘔吐物を喉に詰まらせて窒息死してしまった旧リードボーカル・Bon Scottへの追悼歌として知られています。ブルースを基調とした、ハードロック・バンドにしては珍しいミッドテンポのリズムから繰り出される魂の叫びは、きっと貴方の心をも揺さぶるはずです……!


 ちなみに、以前も紹介したQueenのギタリスト・Brian Mayは、もしQueenのメンバーでなかったとしたらAC/DCに加入したかったと語っている程です。とにかく、これ以上の言葉は不要ですね。歌詞の紹介に入って行きましょう! 皆さん『Back In Black』のシャウトと共にお手元に歌詞をご用意ください。


「暗闇から喪服を纏って戻ってきたぜ、さあ眠ろう」

「長くなっちまったが、戻ってこれて良かったよ」

「そう、絞首刑寸前で逃れたんだ」

「久々に見るお天道様にハイになったぜ」

「俺はしぶといから霊柩車はいらない」

「9つの命を持ってるんだ」

「猫の目がそれを粗雑に野生へと駆り立てるんだがな」


 この曲の主題ともなっている"Back In Black"は「暗闇からの帰還」と「喪服での帰還」という2つの意味が考えられるのですが、先述した当該楽曲の背景事情から察するに、おそらくダブルミーニングということでしょう。急死したBon Scottへの哀悼を示すために喪服に身を包み、彼の死によって絞首刑を宣告されたも同然だったバンド全体の復活を意味しているのだとすれば、合点が行きます。


 また英語圏においては"9"という数字が神聖な意味を持つことから「猫に九生あり」という諺があるようです。好奇心旺盛な猫のように危険を顧みず突き進むけれども「一度や二度死んだところで、俺たちは不死身だから問題ないんだ」というバンドの決意が込められていそうですね……!


 ──さあ、一番気持ち良いパートですよ! 皆さんご一緒に!


「だから戻ってきたんだ」

「そうさ、戻ってきた」

「なあ、戻ってきたんだぜ」

「そうさ、戻ってきた」

「なあ、戻ってきたんだぜ、なあ」

「俺は暗闇からの帰還者だぜ」

「そう、喪服に身を包んでな」


 このBrian Johnsonによる魂の底から湧き上がるような叫びを聞いて、突如として失うことになったBon Scottに対する深い悲しみが吹き飛び、AC/DCの復活を確信したというファンも多いのではないでしょうか。


 ちなみに、当時Bonの後任としてバンドへの加入を打診した他バンドのボーカルには軒並みオファーを断られており、最後の最後に白羽の矢が立ったのがグラムロック・バンド──Geordieに所属していたBrianだったというのは、今や語り草となっています。しかし実際のところ、AC/DCのクラシックメンバーは当初、Geordie時代の印象によってBrianの加入には懐疑的な見方をしていたようです。それでも下馬評を実力で覆して、今日までAC/DCのブランドイメージを向上させ続けてきた彼の努力を考えれば、ぐっとくるものがありませんか……?


 続いて2番に入って行きましょう。


「キャデラックの後部座席に乗って戻ったぜ」

「弾丸のようにいち早く、俺は電源装置みたいなもんだろ」

「ギャングの撃ち合いに飛び入り参加だ」

「もしまた俺を殺りたいのなら、まずは捕まえてみろよ」

「俺は自分の道に戻って来たんだ」

「小細工なんて通用しないぜ」

「周回遅れになりたくないからって俺の邪魔をするなら」

「今に見てろよ」

「俺は俺の道を行く」

「図に乗るんじゃねぇ、道を空けろ」


 ──か、かっけぇーーー!!!


 ここで「弾丸のようにいち早く」と訳した『Number One With a Bullet』は、1987年のアメリカ映画の題だそうです。正直、内容は全く知りませんが、銃を乱射するように派手に生きてやるといった決意表明のような意味が感じられました。


 邪魔する奴等に仕返しをするのではなく、俺は俺の役割を全うすると言わんばかりに前しか見えてない主人公(AC/DC)の音楽に対する真っ直ぐな姿勢が伝わってくるようです。こんなに素晴らしいバンドなんですから、解散しなくて本当に良かった。皆さんも実生活において色々な逆境を抱えているかもしれませんが、辛い時こそこの楽曲を思い出して、いつの日か『Back In Black』しましょう……!(?)


 はい、つまらない締めで恐縮ですが、今回は以上です。お疲れさまでしたー。 


 結局のところ、やはり音楽と言えばロックが一番好きなのですが、この後いくらでも紹介する機会はあると思うので、そろそろポピュラーなポップソングなどにも触手を伸ばしつつ、色々と紹介してみようかと思います。リクエストなどございましたら、それとは関係なくいつでも紹介させていただきますので、どうかよろしくお願いします!



 †††



 ※本作における改行後の連続する「」内は主に作品タイトルとなっている楽曲の歌詞の一部分又はその翻訳です。今回はAC/DC - Back In Blackから引用しております。


 ※本作品は、著作権法32条1項に依拠して公正な慣行のもと批評に必要な範囲で「引用」するという形で楽曲の歌詞を一部和訳しております。文化庁は引用における注意事項として、他人の著作物を引用する必然性があること、かぎ括弧をつけるなどして自分の著作物と引用部分とが区別されていること、自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること、出所の明示がなされていることの4要件を提示しておりますが、本作品はいずれの要件も充足していると執筆者は考えております。


 ※カクヨム運営様からも「カクヨム上で他者が権利を有する創作物の引用をすることは可能ですが、その場合は、著作権の引用の要件に従って行ってください。また、外国語の翻訳は書き方にもよりますが、引用にならないと存じます。」という旨の回答によってお墨付きを得たものと解釈しております。


 ※ただし、歌詞原文の全てを掲載することは引用の範疇を越えると思われますので、読者の皆様は紹介する楽曲の歌詞をお手元の端末などで表示しながら、執筆者による独自の解釈を楽しんでいただけると幸いです。

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