ファレノプシスの憂鬱

@ikuragohan1313

第1話 Club胡蝶蘭(ファレノプシス)

 ここは祇園のメインストリート、花見小路から末吉を西に行った小さな路地にひっそりとある高級クラブ、ファレノプシス。看板も出さず、入り口に若いボーイが1人立っていることだけが、そこに店があることをほんのりと匂わせている。一見さんは入ることができない、完全紹介制の京都らしい知る人ぞ知るクラブである。

 しかし中に入れば、そこは現世を切り離したような煌びやかな内装が施された浮世の世界だ。フロアと呼ばれる広い部屋はなく、個室が5つあるだけのため、周囲を気にする著名人、有名人も使っていると祇園ではもっぱらの噂である。個室の中は、ファレノプシスという名前に沿うような、白を基調とした内装になっており、そこにゴールドのソファが馴染んでいる。

 もちろん、料金も祇園価格であり、通うとなるとそれ相応の収入や事業をしている人に限られる。また紹介制であるが、1人につき3人までしか紹介することができず、紹介するための条件もあるため、ファレノプシスに行っているというというと、京都の経営者は一目置くような、そんなステータスのようにもなっている。


 そんな高級クラブで働いている女性たちは、容姿はもちろん、知性や話術も求められる。彼女らはファレノプシスで働いているという誇りを持っていると同時に、プレッシャーに応える。どこまでに奥ゆかしく、俗世を忘れさせる接客は世の男を虜にするのだ。





 

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