第4話 劇団クローバーみつば感 山野玲奈
演出家の
「おはようございます」
慈代と恵人が挨拶する。
「おお、慈代くん来てくれたのか。なんだか晴美くんや
一緒にいた恵人に、
「君は、ええと」
「
「そうそう、二年生の恵人くん」
名前を覚えていてくれたか、どうかは怪しいが顔は覚えてくれていたようだ。雅也と清田もいた。何か楽しそうに話していたが恵人に気付いてやってきた。
「おお、恵人。今日はいろいろ手伝ってよ」
雅也が肩を叩く。
「相変わらず慈代とべったりだな」
清田が足を蹴ってくる。
「いいんじゃない、俳優は恋してなきゃ……な」
と雅也がもう一度肩を叩いて自動販売機のある方へ行った。
桐原が女優の
「おお、恵人も来たんだ……相変わらず慈代ちゃんとべったりだな」
清田が、
「いいんだよ。俳優は恋してなきゃ……な」
と恵人の肩を叩いて山野玲奈と話し始めた。玲奈は微笑みながら恵人に会釈してくれた。テレビでしか見たことがなかった女優がリアルに目の前にいるのが不思議な感じだ。
玲奈は慈代と話し始めた。普通に女優の方から話しかけてこられる慈代がすごく見えた。
桐原がジュースを片手に、
「今日は最後の場面を、少し先生に見てもらおうと思うんだ。恵人も手伝ってよ」
「ここの劇団の人の前でやるんですか?」
「ここでやるんだから、劇団の人も見るんじゃないかな、緊張する? それがいいんだよ」
「山野玲奈さんも見るんですか?」
「見るっていってたよ。玲奈さんも
宮原一美と話をしていた高橋剣がやってくる。
「こんにちは高橋です」
緊張したが、なんだか嬉しくなってきた『高橋ですなんて言われなくても知ってるよ』と思った。
「
緊張のあまりフルネームで自己紹介してしまった。高橋が微笑む。
「恵人君。頑張っているようだね。今、二年生だって? 昨年の舞台観たよ。杉原君の友人の役してたよね。昨年三年生だった杉原君の……」
「え? そんなこと知ってくれていたんですか?」
高橋は頷きながら笑う。
「ああ、舞台の上で止まるところは気を付けた方がいいよ。あとセリフが流れないように」
「わかりました。意識します」
「また、気がついたらアドバイスするよ」
玲奈と話をしていた慈代が恵人を紹介してくれた。
「小咲恵人君です」
「よろしく。山野です」
玲奈が微笑む。
「剣さん見てくれるっていってたけど、今日は恵人さんの役のとこあるの?」
恵人は慈代の方を見る。急にここに来ることになった恵人は、今日、どのあたりの練習をするのか把握できてなかった。
「今日はたぶん恵人君のところはないと思うから見ててね」
「わかりました」
「でも、急に手伝ってもらうこともあるかもしれないから、そのときはお願いね」
「わかりました」
玲奈も微笑む。玲奈がやさしく言う、
「あんまり緊張しないでね。別にみんな鬼じゃないんだから。あと、こっちはプロなんだから」
『大丈夫』という意味を含めてウインクして微笑む玲奈にドキッとした。
そのあと、演劇部のものは演出家の宮原一美のもとに集められた。今日、練習する場面をもう一度確認した。
今日はマサトの妹ユキナ役の
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