* * *

 ――回目。


 結局、私は、恋心と友情の狭間で揺られながら、いくつもの世界線をさまようことになる。

 そして、その問題に対する解答を、未だに見つける事ができない。


 逡巡する間に、その世界線は終わりを迎えてしまうのだ。


 現段階での最長記録は、七月の最終日――。

 花火大会を三人で眺めるところで終わる。


 今のままの私では――その問いに対する答えを見つけるまでは、何度繰り返しても、そこが限界到達点らしい。

 きっと変わらなければならなのだろう。



 そして――。


 私は、八月の空に想いを馳せる。

 もしも、ここから先――八月に辿り着いたなら……。

 三人の物語は一体どんな風に展開されるのだろう。

 どんな物語が、待っているのだろう。


 入学式の《四月七日》から、ここまで時を進めることが出来た私ならば、いつか、たどり着けると信じている。


 八月の空の下を歩く世界線が――。


 私には、時間だけは残されているから。

 それこそ《永遠》のように長い時間が。

 だから、この世界線の私は、このあたりが潮時なのかもしれない。

 潮が満ちては引いていくような、凪いだ海面のような、穏やかな最後を迎えられるように。


 次の世界線では一体、どんな二人が待っているのだろう。

 どんな二人と出会い、私は、何を感じるのだろう。


 今度こそ、八月の空を見られるだろうか。


 これだけ繰り返していて不思議なものだが、そのうち、見られる気がするのだ。


 《四月七日》を繰り返した日々から考えたら、《七月三十一日》など夢のように遠い日付だ。


 私は、着実に時の歩みを進めている。


 繰り返す日々の中で、必ず、望む明日を手に入れることができるはずだから。



 続――何度でもやり直して、あなたにとっての一番になれる世界線に辿り着こう。

 それは決して夢ではないと思う。

 どれほどの時間が経とうとも、あなたが私を選ぶ世界線を見つけるまでは諦めない。

 

 凪――。私は、何度でもあなたに勝負を挑み続ける。

 何敗したのか、もはや数え切れないけれど、それでも最後には必ず掴んでみせるから。



 きっと泣いてしまう二人を置いていくのは、少し気掛かりだけど。

 それでも、二人ならば、大丈夫だろう。

 これから先も続いていく《永遠》のように長い人生の中で、今よりも遥かに愛し合い、運命をその手に掴むはずだ。



 ――さあ、行こう。

 今度こそ、八月の空を、見に行こう。

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