* * *
――回目。
希望を抱きながらも、中々明日を迎えられない虚無感に、私は少しずつ壊れていく。
いつになっても進まない彼との関係にもうんざりし始めた。
それならばいっそのこと――。投げやりになった私は、一気に彼との距離を詰める事を画策する。
どうせ明日なんて、来ないのから。
私は彼を見つけ出すと、一目散に向かっていき、有無を言わさずにその唇を奪ってみた。
私の初めてのキスは、随分と呆気のないものだった。
「はあーー? な、何なんだ君は……? 痴女なのか? 意味が分からない!」
驚き慌てふためく彼が面白くて、私は声を出して笑う。
「いやいや、笑えねえから!」
「良かったじゃない。こんな美人とキスができて」
「お前は誰なんだよ! 全くふざけやがて。次にやったらマジで警察を呼ぶからな」
そんな風に悪態をつきながら廊下の奥へ去っていく。
どうせ明日なんて来ないのだから、次も何もないんだけど……。
しかし、その夜のことだった。
――体が、消えなかった。
「嘘でしょう……そんなこと……」
まさか、と打ち消しそうになる。
既にこれまでの世界線なら、辿り着くことはなかった時間まで時計の針は進んでいる。
私は、希望を持って布団に入った。
そして、翌朝。携帯の待ち受け画面を見る。
「《四月八日》……!! やった……見つけた……! ついに見つけた!」
私は、嬉々として登校し、彼を探す。
「ねえ! やっと見つけたよ! 明日を迎える方法!」
「き、昨日の女……! やめろ! 何の話だ!」
「あ、そっか。昨日は、投げやりだったから、強引だったもんね」
なるほど、これは上手く事を運ばなければ大変なことになりそうだ。
「づっくん……? どうしたのっ?」
彼の隣に、一人の可愛らしい少女が立っていた。
「うん? いや……昨日、新しく出来た友達、だ…………」
「づっくん、もうお友達を作ったんだねっ! 凄いなあ……。もし良かったら、あたしも、お友達になって貰っていいですか?」
「え、ええ……もちろん……」
「良かったあ……! 宿連寺凪と言いますっ! よろしくねっ!」
余りの眩しさに目眩がした。
「ちなみに二人は、どういう関係なの……?」
「えへへ、幼馴染で、そして、恋人なんだっ」
幸せそうな顔をする少女の顔を、私は直視することが出来なかった。
彼に恋人がいる可能性を全く考慮していなかった。
自暴自棄になって、自分のことばかりだった。
そうなのだとしたら、さすがに昨日のキスは配慮が足らなかっただろう。
せめて、合意を得てから行うべきだった。
……でも、私には、次がある。明日に行く方法は、誰かとキスをすることだと分かっただけでも大きな収穫だ。
例え、この世界線がダメであったとしても、次の世界線に行けばいい。
しかし、私がこのタイムリープの回避方法を誤って認識していた事に気が付くまで、そう長い時間は掛からなかった。
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