第2話

 学校を出て、駅とは反対側に歩いて15分ぐらいのところに図書館がある。図書館の裏側にはちょっとした緑とベンチも。

 晴れた日はここに来ることが多かった。



 ………緑が、恋しくて。



 じいちゃんちはこんな都会じゃなく、結構な田舎。

 生まれてから中学3年の2学期まで田舎に居た俺に、ビルだらけのこの辺りは正直きつい。

 もう1年経つのにな。親が住むこっちの方に引っ越してきてから。



 俺が通う高校の授業は、午前中の3時間のみ。午後は選択授業で参加自由。

 選択授業って言っても、授業らしい授業じゃない。イラストとかギターとかバンドとか、普通の高校からしたら考えられない内容だろう授業が午後の2時間。

 そのさらに後に、専門コースの授業がある。

 専門コースはイラストとプログラミング、大学進学の3つだったか。



 俺は午後の選択授業も出てないし、専門コースにも入ってない。

 つまり俺は毎日午前中のたったの3時間しか学校に居ないってこと。



 それがどうにも………落ち着かねぇんだよ。



 かと言って午後の選択授業に出るのもイヤだった。特に興味のある授業があるでもないし。

 専門コースに至っては高過ぎて行きたいとも言えなかった。



 ………興味のあるコースもねぇけど。



 田舎でずっと一緒に暮らしてたばあちゃんが死んで、その2年後にじいちゃんが死んで、初めて俺は自分から母親に連絡をした。中3の2学期が終わる直前だ。



 連絡したのは、葬式とか死亡届とか、どうしていいのか分からなかったから。それ以外の用は何もなかった。

 じいちゃんちには俺ひとりが遺されたけど、俺はそのままじいちゃんちにひとりで住んで、そこから志望校に行くつもりでいた。



 家事はひと通りできる。金は母親からじいちゃんに、毎月俺にかかる金がかかる金以上に振り込まれてたらしいから、それをそのまま続けてくれたら全然イケると思ってた。



 でも。



 母親は何を思ったのか俺を呼んだ。自分たちが住む家の方へ。

 呼んだっつっても、母親たちが暮らす家で一緒に住むってことじゃなかった。

 自分たちの家から相当離れたところに狭いマンションを借りて、そこに当時中3だった俺をひとり、放り込んだ。



 生まれてすぐうちから追い出されたんだ。今さら一緒に暮らすなんて無理だし絶対イヤだった。



 けど。



 慣れない都会。慣れないマンション。

 高校受験直前での転校。合わない学校。



 俺はすぐ中学校に行けなくなって、毎日引きこもった。行けそうな高校もなかった。俺のこの、のせいで。



 それでもせめて高校卒業資格だけはと、俺はこの学校を選んだ。

 自由度がハンパなかったから。そして俺みたいなが多そうだったから。だから普通の全日制高校より少しは馴染めるんじゃないかって。



 全然これっぽっちも、馴染めなかったけど。



 にゃー



 ベンチに座ってボーっとしてたら、足元に猫が擦り寄ってきてた。

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