13. 呆れ

「な、何だぁ?あいつ、頭がおかしいのか?」


 ヒメカを人質に取っている男ですら、スイトの異常な行動にぞっとしていた。

 脅しはしたものの、あかの他人のために命を投げ出すとは思っていなかったのだ。


「もういい……」

 突然、ヒメカはそう呟いた。


「もういい!全部しゃべる!私が騙してたんだよ!騙されたの、アンタは!」

 突然そう叫んだヒメカに、男もスイトも驚く。


「何が運命だよ、バッカみたい!依頼の報酬をくすねたのは本当だし、価値のある角笛を見つからない場所へ隠したのも私!わかる?騙されたんだよ。アンタそれなのに、善人ぶって、何様のつもり?!」


 ついにすべてを白状したヒメカだったが、その声はセレナやブレッド達にも聞こえていた。


「これが真実だよ。お前ら、あの女のために何かすることに価値があんのか?」

 ブレッドはセレナにそう問いかけた。


 セレナはヒメカたちの方を振り向き、大体の状況を察した。

 スイトは無抵抗に攻撃を受けているようだが、防御の魔法を展開しているのか、明らかにダメージが少ない。

 つまりはタイミングを待っているということだろう。


「はぁ……」


 いや、あいつのことだから、時間だけ先延ばしして、本気で死のうとしている可能性もあるな。そう考え、セレナは呆れたようにため息をついた。


「同情するよ。だけど、あのバカが決めたことだからさ……」

 セレナはそう言うと、剣を両手で構えて、ブレッドへ向き直る。


「ったく……お前ら揃いもそろってイカレてやがる!!」

 ブレッドとブロンは再び戦闘態勢になったが、あることに気付いた。


「ん?お前……盾は……?」




 ヒメカは全てを白状したにもかかわらず、相変わらず態度を変えないスイトの方をじっと見ながらぼろぼろと泣いていた。


「実は……そうかもしれないと……思っていた……だが、それならそれで……いいんだ」

 攻撃を受けて、さすがにこたえたのか、スイトは膝をついて、倒れそうになっていた。


「スイトさん……!」


 妙にロマンチックな展開になっていることが、セレナは癪だった。

 スイトの方を盗み見ながら明らかにしかめ面になっていることに、ブレッド達も威圧されていた。

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