3 花鳥画は即ち、吉祥図である


 ちょっと乱暴かもしれませんが、、、

 中華料理店に架かっている花鳥画を見たら、ほぼ吉祥図(≒縁起担ぎの絵)だと思って間違いありません。


 日本でも、鶴や亀は長寿の象徴だったりしますよね。

 中国でも似たような縁起担ぎはたっぷりあります。


 まずは、言葉遊びのようなもので、音が通じることからの連想。

 例えば――

 魚が描かれてあれば、食に困らないこと。「ぎょ」と「」から。あるいは、余裕のある暮らし。(「余」は「餘」と通じる)

 雀が描かれてあれば、出世すること。「じゃく」と「しゃく」から。


 めでたい動物もよく登場します。

 天子が良い政治を行い、世がよく治まっていると「瑞兆」が現れる、という思想があります。

 麒麟や、鳳凰、龍といった想像上の神獣もあれば、鶴のような実在の動物もあります。

 麒麟は、春秋時代の中国に現れたのに殺してしまって、孔子が「世も末だ」と嘆いたという逸話があります。……が、日本ではあんまり画題になっていないようです。

 鶴は、いずれの皇帝の御時だったか、宮殿に鶴が飛来したので賀して描かせたという記録があったような。


 ほかにも、例えば鴛鴦えんおう。日本でも「おしどり夫婦」の言葉になっているように、夫婦和合の象徴として、よろこんで描かれます。


 日本では、本来の吉祥図としての意味は薄れて、自然の美しさを愛でる心で花鳥風月が描かれることが多いような気がしますが、画題や図案としては吉祥図の名残は色濃く残っています。

 例えば伊藤若冲の有名な『動植綵絵』を見るとき、吉祥図としての意味を探してみると、そこらじゅうに見つかって面白いと思います。



 ……というわけで。

 東洋絵画(特に花鳥画)には、吉祥図の意味が隠されている可能性があることを頭に入れて見ていくと、新たな発見があるかもしれません。ときどき具体例を挙げて見ていきたいと思います。



 * * *


(参考)伊藤若冲筆『動植綵絵』


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