第17話

 ゴロゴロゴロゴロ!

 ミミックハウスが坂道を転げ落ちて破壊された。

 キューブが付いてこない。

 壊れたか?


 落下が止まり周りを見渡すと、薄暗く、見渡す限り紫色のたいまつが灯った大部屋が広がる。


「ホノカ、大丈夫か?」

「う、うん、でも、服を着よっか」

「そうだな」


 2人で服を着ると、辺り一面にたくさんの魔法陣が現れた。


「これって、ファントムが現れた時と同じじゃないか?」


 魔法陣から金棒を持った小鬼と、そしてファントムが現れた。


『1080体の魔物をすべて倒すまでここから出る事は出来ん』


 頭に声が響いた。


 小鬼とファントムが俺達を睨む。


「ホノカ、ミミックハウスを出して中に入っていてくれ」

「わ、分かったよ」


 俺は刀を構えて小鬼に斬りかかった。

 1撃で倒せる。

 倒すとファントムと同じで魔石を落として武器も一緒に消えていく。

 小鬼が殺到してくる。


 小鬼はスケルトンより少し強い程度だ。

 動きが素早いが問題無く倒せる。


「「ギョオオオオオオオオオオオ!!!!!」」


 ファントムが自爆攻撃を仕掛けてきた。

 全耐性が無ければファントム&小鬼のコンボで俺は詰んでいた。


 だが、


 ファントムの自爆攻撃は俺に経験値を与える餌でしかない。

 つまり敵は小鬼だけ!


 俺は小鬼だけを狙って斬り刻んでいった。


「ははははははは!俺の経験値になれ!」


 俺はミミックハウスの周りをくるくると回りながら小鬼を倒していく。




 ◇




「おし!全滅!これで帰れる!」


『うむ、では第二の地獄と行こうか、くっくっく、言い忘れていたが地獄は4回ある、くっくっく』


「マジでか、後3回」


『絶望したか。くっくっく!第二の地獄は108のオーガを倒す事だ』


 魔法陣から108体のオーガが出現した。

 小鬼を大きくしたような敵で、そこまで威圧感を感じない。


「先手必勝!おりゃああああ!」


 ザンザンザン!

 オーガが魔石に変わった。

 連撃で倒せる。


 俺は畳みかけるように108体のオーガを倒した。


『く、くっくっく、今までの戦いは余興にすぎん、次は一味違う』


 大きな魔法陣が現れて巨大な大鬼が出現した。

 背は10メートルほどか?


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 俺は右足を連続で斬り刻んだ。


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 右足を上げた瞬間に左足を攻撃する。

 

 右足で踏みつけてきたが、すれ違うように相手の動きを利用して斬りつけた。

 大鬼が巨大な金棒を振り下ろすが躱して金棒に飛び乗り手を何度も攻撃した。


「あ、分かった。こいつ当たりさえしなければ弱いわ」


 俺は何度も攻撃を重ねて大鬼を倒した。


『く、くっくっく、くっくっく。今までの地獄はただの余興だ。そろそろ、我が相手をしてやろう』


 背の高い人が現れた。

 だがその額には2本の角が生えており、肌が赤い。

 犬歯がとがっており俺と同じで刀を持っていた。


「我が相手をしてやる。くっくっく」

「せい!」


 俺は飛び掛かった。

 お互いの刀でつばぜり合いが始まった。


「貴様!話を聞け!」

「先手必勝だ!」

「我に勝てると思うな!フンヌ!」


 俺は袈裟斬りを食らった。


「ほお、優男に見えて思ったより硬い体をしている」


 俺はめげずに攻撃を続けた。


「くっくっく!無駄無駄あ!貴様には刀の技量が無い!我に何度も何度も斬り刻まれ死んでいくのだ!くっくっく!くははははははははははははははは!」


 俺は何度も攻撃を受けた。


 1度の攻撃は大したことが無い。


 攻撃を受けても傷が治っていく。


 だが何度打ち込んでも当たる気がしない。


 俺は途中から、奴の動きを真似る事にした。


「言っておくがこの体は我の本体ではない!陰にすぎん!貧弱な影にすら勝てん貴様に未来は無い!」


 俺は戦い続けた。




 ◇




 徐々に、動きに慣れてきた。


 自分の技量が成長しているのを感じる。


「しぶとい奴め、む?なぜさっき受けた傷が癒えているのだ?」

「そういうスキルだ」

「なぜ何度も斬られて生きている?」

「固いからだろ?」


「動きが見違えるように良くなっている!貴様!なんなのだ!?貴様は何だ!?」

「ただの高校生だ!おりゃああ!」


 始めて敵に攻撃が当たった。


「エナジードレイン!」


 ホノカの攻撃で赤鬼の動きが鈍った。


 バチバチバチバチ!


 サンダーミミックの攻撃で更に隙が出来た。


「隙あり!」

 

 右腕に攻撃が当たった事で相手の動きが一気に悪くなった。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


「ぐ、ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!そうか、貴様、鬼の力を、ぐふぉおおお!」


 赤鬼が霧に変わって消えた。


 ホノカが俺に抱きついた。


「カッコよかったよおお!」


 ホノカに抱きつかれて体が反応する。

 ホノカの血を吸い、服を引き裂きたい衝動に駆られた。

 なん、だ?


「はぁ、はぁ、ホノカ、戻ろう。からだがおかしいんだ」

「う~ん、この長い坂を上るのは大変だよ?」


 上を見ると、遥か遠くからわずかに光が差し込んでくる。

 登山か。

 富士山に登るみたいになってる。


「体の調子がおかしい、休んでからにしようか」

「それに進化したばかりだし、今日はゆっくりしよ」


 体に違和感がある。

 耳と八重歯がとがり、背中がむずむずする。


 服の上を脱いで背中に力を込めるとコウモリの羽が生えてきた。

 羽を動かすと飛ぶことが出来た。


「おおおおおお!出来た。これってまさか!」

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