第13話

 ホノカが俺の中で眠った時にある程度の記憶を共有した。

 ホノカはミミック使いだ。


「はいろっか」

「そうだな、キューブ、ここで待機だ」


 キューブが家の前に待機する。

 番犬変わりに使うのだ。


 中に入ると童話に出てくる家のようでいすやテーブルなどが丸みを帯びている。

 手作り感のある暖かさを感じた。


「お風呂に入る?食事を続ける?一緒に寝る?」

「一緒にお風呂に入ろう」


 記憶を共有して、ホノカが俺の事を嫌がっていないことが分かる。

 ホノカが無言でほほ笑み、そして服を脱いだ。

 そして、一緒にお風呂に向かった。




 ◇




「ふー、最高だ、色んな意味で」

「はあ、はあ、安心、して、子供を産まないように出来るから何度でも、はあ、はあ私で遊べるよ」

「ベッドで休もうか」


 ベッドに向かうとピンクと青色の照明、そして丸いベッドに2人で入る。




 ◇




 起きると、ホノカが隣で眠っていた。

 俺に抱きついて離れない。


「夢じゃ、ないよな?」


 俺はしばらくの間このフィールドを探索して、毎日早めにミミックハウスに帰って2人で過ごした。




 ◇




「何もない、あったのは川にある砂金くらいか」


 俺は毎日砂金を集めていた。

 偽物じゃないっぽい


『十分だろ、一生遊んで暮らせる』

『もうここに入って7日だ』

『ミミックハウスの中を見せろ』

『カゲオ、休んでいる割に肉が戻らないな』


「……太りにくい体質なんだ。まったく、こんなに病弱な俺をダンジョンに閉じ込めるなんて、どうかしている」


『適応しすぎてるだろ』

『お前強いだろ?精神が』

『それよりもミミックハウスの中を見せろ』

『魔物が一切いない。早くここから出たら?』


「出るか、ホノカの所に戻ろう」


『ミミックハウスの中身を見せろ』

『装備が綺麗だな』

『洗濯してもらってるだろ?』


「そうだな、戻ろう。大分、回復した」


 俺はホノカを連れて橋の中央に移動した。

 さっきからミミックハウスを見せろとうるさいが見せる気はない。

 最初は童話の中の家のように見えたが、風呂とベッドを見ると印象が変わった。

 あの2カ所だけは完全にラブホテルだ。


『魔法陣から出られなかったりして』

『光ってるから大丈夫だろ』

『元の場所に戻れる保証はないわけだがな』

『ホノカも一緒に戻れるか不安だ』


 ホノカが俺の腕に抱きついた。


「ワープするぞ!」


『ドキドキする』

『手に汗をかいている。見ているこっちが緊張するぜ』


 魔法陣に乗り、移動するイメージをする。


 ブオン!


「スライムがいる、帰って来た、帰る事が出来る」


『おおおお!生還おめでとう!』

『マジでやり遂げやがったぜ!』


 魔法陣が光を失って消えた。

 7体のスライムが俺とホノカを出迎えた。


「ホノカ、戦ってくれ」

「うん、サンダーミミック!」


 宝箱の形をしたスキルが出現した。

 サンダーミミックの近くにスライムが近づくとサンダーミミックが電気を発生させた。

 スライムに雷撃が飛び死骸へと変わった。


「サンダーミミックはトラップ型のスキルだ。これで休憩中に攻め込まれても安全度が上がる。盾代わりにもなるからホノカはタンクタイプだろうな」


「乗ったまま移動もできるよ。遅いけど」


 ホノカがサンダーミミックに跨った。


『おおおお!尻がエロい!』

『後ろから映してくれ』

『馬鹿野郎!胸こそ至高に決まっている前から映せよ!』


 胸派と尻派で醜い争いが始まった。


「無視して行こうか」

「カゲオ、一緒に乗る?」

「いや、俺は歩きたい」


 一緒に乗った瞬間に全員を敵に回すだろう。

 そういう理由もあってミミックハウスでの生活も言わない約束をしてある。

 

「サンダーミミックは盾にもなるから前に出るよ?」

「俺もタンクタイプだからなあ。パーティーバランスがおかしいよな。火力が欲しい」


『スライム相手に火力なんて必要ないっしょ。早く2階に行け』

『2階まだあ?』

『お前いつまで1階にいるんだよ!早く進めって、2人共レベルは十分だ』


「一旦入り口に向かう。砂金と魔石を受け渡して売って貰う。それと食料と物資を貰う」

カナタ『準備します。何が欲しいですか』


「黒ビキニ、だと!」


『おおおお!布面積が小さい!』

『カゲオ!メイド服水着プリーズ!』


 カナタが腕で胸を隠した。


「め、メイド服水着だと?気になってきた!でも調べられない。ネットの海を浴びたい!そろそろダンジョンから出てもいいんじゃないか?俺はもう役目を果たしたはずだ」

カナタ『駄目です』


 俺はカナタと物資の話をしながら歩いた。


「またスライムだよ!」

「ボススライムか、ホノカ、戦ってみてくれ」


 ホノカがサンダーミミックから飛び降りつつサンダー耳くを蹴った。

 サンダーミミックがボススライムに近づくと電撃で攻撃する。


 その隙にホノカが魔法を発動させる。


「エナジードレイン!」


 ホノカからボススライムに虹のような黒い光のアーチが繋がる。

 生命力を吸っているのだ。


 サンダーミミックとエナジードレイン、これがホノカの攻撃方法だ。

 だが、サンダーミミックが破壊されてホノカがターゲットにされた。


 俺は前に出てボススライムを斬り倒す。


「ありがと」

「いや、いい。入り口に向かおう」



 入り口に到着すると黒服が睨んでくる。


「出る事は出来ない。ここにある物資を回収し、砂金を置いて立ち去れ」

「うわあ!塩対応すぎる」


 俺は物資を回収して砂金を置いた。


「カゲオ、その、仲間が出来たようで良かった」


 黒マッチョの顔が少し赤い。

 こいつ、本当は良いやつなんじゃね?


「サンキュー!じゃあな!」

「……おう」


 俺とホノカが立ち去る。

 後ろをちらっと見ると黒服が俺達を見守るように見つめる。


 黒服は命令で動いている。

 多分黒服は自衛隊とかだと思うが、命令に逆らえばどうなるかは高校生の俺でも何となく分かる。

 本当にやばいのは自分で動かずに英雄法を可決したトップだ。


「命令される黒服の気持ちが分かって来た」



『お前、今気づいたのか!大人の仕事を増やすなゴミムシ野郎が!』

『もうあんまりやらかすなよ』

『いや、もっとやれ』

『普通とは違う事をするクレイジーにしか開けない扉があるんだ。もっとやれ!』

『気にするな!どんどんやれ』


 2つの勢力がキューブの音声で揉めだす。

 

 俺は無視して奥に歩いた。

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