第12話

 目が覚めると、柔らかい感触を感じた。


『目覚めた!』

『カゲオが起きたぞ!』


 キューブからたくさんの声が聞こえる。

 クリスタルから救った女性が俺を膝枕していた。


「おはよ」

「……おはよう。これは、夢か?ありえない事が起こっている」


 女性の胸が大きくて顔半分が見えない。

 立派な物をお持ちで。


『名前を聞いてくれ。俺達の問いかけには答えない』


「みんなの心が汚れているからケガレに答えたくないんだろう」


『その前に膝枕をやめろ、サキュバスタンの足が痺れるだろ?』

カナタ『カゲオ君、まずは起きて話を聞きましょう』


 いつの間にかカナタの画面が現れていた。


『カナタさんも呆れてるぞ』


 俺は膝枕をされたまま話を始めた。


「ホノカ、自己紹介をしてくれ」

「ホノカだよ。よろしくね」


『やっと答えたか』


 話を進めようとするが、キューブからの声がうるさい。


『ステータス』

『ステータスを見せて』

『死ぬ前にステータスを見せてくれ』


「死ぬ気はない、ほれ、ステータス」


 俺は膝枕をして貰ったままステータスを開示した。




 カゲオ

 レベル:10→18【アップ!】

 ジョブ:スケルトン→ゾンビ【進化!】

 スキル『ストレージ』『生活魔法』『鉄壁』『スタミナセーブ』『治癒力アップ』『全耐性』『オートヒーリング【NEW!】』『サーバント【NEW!】』



 オートヒーリング:魔力を消費して傷や疲れ

を癒す




『ゾンビになった!』

『サキュバスの方が強そうに感じるのは俺だけか?』

『サーバントはホノカちゃんの事だよな?上下関係が明らかにおかしい。何でカゲオが上なんだ?』

『カナタは雑草の中に咲く一凛の清楚な花で、ホノカは飾り立てられたバラのような魅惑的な美しさがある。そしてカゲオはゴミ箱に集まるゴミムシだ』


「植物で例えろよ!俺の事も植物で例えろよ!!」


『カゲオ、落ち着け、ただの嫉妬だ』

『日本は嫉妬の文化だからな』

『ここはクレーム大国日本だ。諦めろ』

『所でいつまで膝枕を続ける気だ?その薄汚い頭を退けやがれゴミムシが!』


「全く、お互いに少し落ち着こうか」


『こいつ、膝枕をやめねえ、やめやがらねえぜ』

『いつものネタムーブだ』

カナタ『カゲオ君、起きましょう。次はどうしますか?』


「そうだなあ、食事にしようか。ホノカ、普通に食べられるよな?」

「うん、貰うね。料理は、私がするよ」

「頼んだ」


 ここで膝枕が終了した。

 俺は寝ころんだままストレージから食材を出す。

 起き上がらず料理をするホノカをじっと見つめる。


『こいつ本当にゾンビみたいだな』

『傷は癒えても魔力が回復していないんだろう』

『ゾンビは再生力が高い。治癒力アップでただでさえ回復力が高かった。そこにオートヒーリングを覚えた事で完全にタンクタイプになったね』

『カゲオ、しっかり食えよ』


「言われなくてもそのつもりだ」


『カゲオ、痩せたままだな』

『そりゃあ、命がけだからな、お察しだ』

『たっぷり食えよ』

『ホノカはコンロとかの使い方も分かるんだな』


「あーそれはあれだ、俺とホノカで記憶を共有していたからだろう」


『ホノカタンの事を教えろゴミムシ野郎!』


「ホノカは、俺と同じタンクタイプだ。ホノカというより能力が、いや、戻れたら力をお披露目しよう。あとゴミムシ言うな」

「うん、戻ってからね」


「やっとパーティーが増えた。カナタも来るか?いや、男でいいや、皆、来てくれマジで!」


『そういうのは禁止されている』

『規則がある、すまんな』

『行きたくないし行く気があっても行けない』

『お前は成長して強くなる義務があるんだよ』


「出来たよ」


 鍋に完成したシチューが盛られ、ご飯パックが投入されていた。

 俺の好みを考えてそうしている。


 俺はシチューもカレーのように食べるのだ。

 


「ん?皿に盛らないのか?」

「一緒に食べよ、最初に食べて」


 俺が食べる様子をホノカがニコニコと笑って見つめる。

 可愛い。


 シチューを半分食べ終わるとホノカに渡した。

 ホノカは俺が使ったスプーンを使い、髪をかき上げながらシチューを食べる。


「はふ、ん、あふん、おいひいね」

「そうだな」


『エロい!エロ過ぎる!』

『これが男の夢、サキュバスか!』


 俺はストレージから大量のお菓子を取りだした。


 カシュ!

 バリボリ!

 サクサクサク!


『うまき棒か……こいつ10本以上食ってるぞ』

『スナック&炭酸ジュースのコンボは強力だ』

『多分アスリートみたいな量を食べないと体重は戻らないんだろうな』

『ホノカの食事にしか目が行かないのは俺だけなのか?』

『いい、うぃいいい!良すぎる!』


 俺はレトルトカレーを取り出し中身を手で潰す。

 そして封を少しだけ開けてチューチューと吸いながら食べる。


『普通に食わねえ!』

『でもうまそうに見える』

『レトルトカレーは飲物か』


「また、眠くなって来た」

「やすもっか」


『えええええええ!冒険は?ダンジョンに戻らないのか!!』

『早くダンジョンに戻ろうぜ』


 俺はキューブをシャットアウトする。


「キューブ、マナーモード」

「ミミックハウス!」


 ホノカがスキルを使うと宝箱のような家が出現した。











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