第3話

 大量のスライムが天井を蹴り、勢いをつけて落ちて来る。

 後ろからは更にスライムが集まって来た。


「ちょ!やめ!落ちたら塩があるんだぞ!」


 俺は地面を転がって塩にまみれながらタックルを避けていく。

 スライムは塩を被って自滅していく。

 倒した経験値が俺に入りレベルアップした。


『スライムの数がおかしくね?』

『多分、黒服が何かしている。スライムがカゲオの元に行くよう誘導されている可能性があるね』


『あれを避けるのか!ある意味凄くね?』

『ジョブがノービスじゃなければよかったんだけどな』

『ノービス、死んだな』

『いや待て!全弾躱している!』


『レベルが上がって能力値がアップしているんだ!』

『休息を取ったのも大きい。動きにキレがある』

『弱ったGが元気なGに変わっている』

『黒光りする害虫のように地面を転がって避けている』

『塩まみれワロスwwwwww』


 俺はスライムの神風アタックを躱すがどんどん足場が悪くなっていく。


「く!ストレージ!」


『ストレージでスライムを回収しながら戦っている!』

『必死過ぎて笑える!!』

『つーか援軍は来ないんか?黒服がおるやろ?』

『無視する方針だろ?』

『説明を見ろ。他の冒険者がここに来られないように立ち入り禁止にしているんだよ』


『ここで死んで大丈夫なのか?』

『カゲオが死んでも俺が死ななくて済むなら問題無い』

『知らんけど、俺達が死ななきゃよくね?』

『自分第一だよな』

『ですなあ』


「ヘル、ヘルプミー!ヘルモード無理いいいいいいいいい!!!」


『多分大丈夫だ』

『余裕じゃん』

『お菓子取ってこよ』


「メシウマみたいなのやめ、あ!げふ!あれ?思ったより痛くない?」


『成長のおかげだ』

『レベルアップおめでとう』

『惨めで必死ね。好き』

『装備が全身の防御力を底上げしているのもある』

『苦しい思いをした方がスキルを覚えやすい。頑張れ』

『カゲオに才能が無くても、倒しているのが雑魚のスライムだとしても1000体以上も倒せば強くなるっしょ』


「うっせえ!く!おりゃ!せい!」


『余裕が無くなってきたか』

『なんか、感動して来た』

『分かる、幼稚園児が頑張って走ってると感動するみたいなこの気持ち。カゲオが好き』




 ◇




「はあ、はあ、全滅!全滅させた!おしゃあああああああああおらあああああ!!へっへええん!スライムにはもう負けない!ぶわあかああああ!!」



『長かったね。カップラーメンのお湯を沸かして食べきるまでかかったわ』

『カゲオの体感的には1時間以上戦っているだろうな』

『カゲオはすぐ調子に乗る』

『カゲオ、後ろ後ろ』

『後ろだぞ』


「いやいや、アラームがなってないだろ」


カナタ『遅れました。アラームは無防備な状態のみ作動します。ボススライムがいますよ』

『カナタタン来た!』

『カナタタンのバスローブ姿か』

『録画完了!』

『今日のミッションは終わった』


「はあ、はあ、ぼす、だと、はあ、はあ」


 体長3メートルほどのボススライムが迫って来た。

 塩を被っても無視して特攻してくる。

 黒服マッチョプリーズ!


『カゲオ!今なら行けるぜ!』

『攻撃を食らっても無視して斬りつけ続けろ!行ける!』

『あっちは塩で弱っている!』


「行ける!うおおおおおおおお!やってやるぜ!」


 俺はタックルに合わせて右手に持ったロングナイフを振った。

 吹き飛ばされて転ぶがそこまで痛みを感じない。


『直撃食らってるぜ?やばくないか?』

『いや、Gの如き生命力だ。行ける』

『地面に転んでからのカゲオはしぶといよな』


「おりゃああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 ボススライムが地面に倒れ、坂をゆっくり下っていく。

 ボススライムを収納した。


『収納出来るなら魔物は死んでいる』


 俺がボススライムを倒すとキューブから歓声が聞こえた。


『うおおおおおお!感動した!』

『よくやったよ。カゲオ、好き』

『見ていて飽きなかった』

『カゲオ、後ろ後ろ』


「まさか、もういな……ボススライムが、5体、だと!!」


『やばくね?』

『死んだな』

『黒服カモン!』

カナタ『助けは来ないです!生き延びて!』


『逃げ道は無い、行き止まりに陣を作ったのが裏目に出た』

『カゲオ、お前の事は忘れない。俺の心の中で生き続けるだろう』

『葬式には出てやるよ、今までありがとな』


 俺は塩地帯の一番奥に逃げ込んだ。

 だがそれでもボススライムは塩ダメージを受けながら迫って来る。


「ち!こいつら、イノシシかよ!」


『魔物はそういうもんだ』

『サーチ&デストロイが魔物の基本行動よ』

『魔物だもの』


「黒服がいれば逃げてくれるかもしれないんだが」


『黒服は来ない』

『集中しろ』


 俺はロングナイフを2本両手に構えて ボススライムのタックル攻撃と同時に前に突き出した。


 スタミナが切れて攻撃する力が残っていない。


 俺は壁に追い詰められながら刃を突き立て続けた。


 何度も何度もタックルを受けた。


 痛みはそこまで感じない。


 何度も、


 何度も何度も、


 攻撃を受けた。


 それでもタックルが来るたびにナイフを突き立てる。


『うあああああ!トラウマだ!もう見れないわ!』

『カゲオ!生きて!』

『黒服ううう!助けてやれって!』

『これはシャレにならんだろ!』

『なぶり殺しにされる』

 

 何度もタックルされるが、そのたびにナイフを突き立てた。


 そして、ボススライム5体が倒れた。


「……へへへ、へへへへ、生きてる」


 俺は、生きている。


『いやいや、おかしいだろ』

『何で生きてるんだ?』

『いい装備だからか?』

『いや、それだけでは説明しきれない』

カナタ『カゲオ君、ステータスを見せてくれませんか?」




 カゲオ

 レベル:2→18【UP!】

 ジョブ:ノービス→スケルトン【進化!】

 スキル『ストレージ』『生活魔法』『苦痛耐性【NEW!】』『鉄壁【NEW!】』


 鉄壁:防御力2倍




『うわあ!レベルが16も上がっている!』

『苦痛耐性は、痛い思いをしすぎたからか』

『苦痛耐性は苦労人が覚えるイメージ、それかタンクが覚える』

『それよりも、ジョブがスケルトンって特殊過ぎないか?』

カナタ『通常なら剣士・魔法使いなどのジョブが表示されますが、まれに魔物の個体名がジョブとして現れる事例もあります。カゲオ君は魔物で言えばレア個体の様な物でしょう。覚醒しましたね』


『鉄壁はスケルトンになった事によるジョブスキルだろうね。あいつら防御力だけは高い』

『しかし、完全にタンクタイプだよな』

『攻撃スキルが1つも無い』

『攻撃で魔物を中々倒せない=包囲される=耐性スキルを覚えやすくなる』

『攻撃で魔物を中々倒せない=魔物の研究動画として最適=サンドバックカゲオ』


「よし、食事にしよう。後アタッカーを募集する」

カナタ『無理です。一人で頑張りましょう』


 俺はパスタを温めた。


「今日はパスタだな。腹減った」


『カゲオつええええええええ!』

『カゲオが英雄に選ばれた理由が分かって来たよ。精神が強い』

『不屈か』

『黒光りするG』

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