第4話

 俺はカナタの説明を聞きながらとにかく食べた。

 食べても食べても太らない。


カナタ『スケルトンになっても骨だけになったわけではありませんね』

「骨だけになったらマジで泣く」


カナタ『ここから出る事は出来ないので休息に困ると思います。ですが5階にたどり着けば魔物が侵入できないセーフゾーンがあります。そこを目指せば安全ですよ』


「ふむふむ、所でスライムって売れるのか?」

カナタ『入り口にいる人に受け渡せば報酬を得られます』

「配信の利益って貰えるのか?」

カナタ『貰えます。億単位の収入を得られますよ。生き延びて配信さえ続ければですけど』

「出ないと使えない。いつ出られるんだ?」

カナタ『答えられません』


「食事や物資の補充はただでいいんだよな?」

カナタ『はい、ただで支給されます』

「俺がホームセンターに行って買って来たい。自分のこだわり用品を揃えたいんだ」


『こいつ出たいだけだろ』

『カゲオからはこだわりを感じない』

『お家に帰りたいだけだよな?』


カナタ『出たいのは分かります。すいません。いつ出られるかに関しての質問は答えられません』


「レベルが上がってロングナイフが軽く感じる。武器を刀とかに変えることは出来るか?」

カナタ『出来ます。力が上がったのでリーチの長い武器の方がいいと思いますよ』

「ポーションを支給して欲しい。傷をすぐに回復させたい」

カナタ『自然治癒の方がスキルを覚えやすくなります。次の機会にしましょう』


「スマホが欲しい」

カナタ『圏外ですがいいですか?』

「ん?キューブはどうやって動いてるんだ?」

カナタ『スキルの力を応用しています。キューブを使ってWi-Fiを利用するのは当分諦めてください』


「俺の考えを先読みしてるのか?」

カナタ『何となく何を言うか分かっただけです』


「当分ダンジョンに居る事になるのか?」

カナタ『答えられません』


『何だろう、2人のやり取りを聞いているとコントみたいに見えてくる』

『仲がいいよな』

『スケルトンのジョブを得て2人が骨だけにならないか心配している所が好きだわ。なるわけないのにな』

『カゲオ、どうする?5階に行くよな?』


「……食べて、寝る」


『回復は大事だ』

『カゲオの目が眠そうな子供みたいにとろんとしてる。可愛い』

『またお菓子を食べだした』

『食事を湯せんからのお菓子食いが安定している』

『妙に手馴れてきている』

『あれだけ動いてあれだけレベルアップしたんだ。たくさん食べて寝た方がいいだろうね』


『しかし、ポーション無しって怖くね?ある意味罰ゲームだよな』


「もぐもぐ、ポリポリ、ぷはあああ!げぷ、まったくその通りだ、この国は狂っている。高校生一人に色々押し付けて、日本の縮図だなあ」


『サイダーが飲みたくなってきた。俺も飲もう』

『ポテチもな』

『まあでも、人口の半分近くが死ぬよりはカゲオ1人が生贄する方がよくないか?』

『カゲオ、犠牲はつきものだ』

『生贄としてがんばれ、カゲオ』


「う~ん、レベルアップしたのは良いんだけど、攻撃スキルが無いんだよなあ……相手がスライムだからよかったけど、この先が不安だ。まず死にたくない、これ大事」


『5階のセーフゾーン内にたどり着けばテントを張ってもダンジョンに吸収される事が無くなる。ゆっくり休めるだろうね』

『5階までのサバイバルが楽しみだ』

『G、カサカサと頑張れ』


「まずは休んで武器を貰う」


『休み終わる頃には塩がダンジョンに吸収されるか』

『まあ、塩が無くても行けるっしょ』

『鉄壁とカサカサG回避を併せ持っているからな。簡単には死なんよ』

『今度はラーメンを食べだしたぞ』


「あーうめえ!」


 俺は休んだ。




 ◇




 黒服が歩いて来るとマナーモードが解除された。


『配信再開一番乗り!』


 黒服がストレージから物資を出す。


「武器だ」


 そう言って去って行った。

 俺は箱の中身を確認する。


「おお!斧に槍、剣に刀、全部近接武器だ」


『ルーン文字を見る限り良い物だね。一級品だよ』


「あ、そうだ、カナタカモン!」


 カナタの映像が映し出される。


「魔物を呼び寄せるアイテムが欲しい。レベル上げがしたい」

カナタ『もう次の階に言っても大丈夫ですよ』


「いや、死にかけたばかりだから。俺の目的は強くなるより生き延びる事だ。1%でも生存率を上げたい。今は慎重に行きたい」

カナタ『分かりました、用意します』


「それと、他の冒険者がいない。ここまで会わないもんなの?」


『話を聞いていないのか?カゲオに近づかないように言われてるんだぜ?』

『黒服が遠くで立ち入り禁止エリアを指定している』


「なん、だと」


『きっとカゲオの成長に期待しているんだよ』

『頑張れよ!』

『カゲオ、お前は仲間がいると努力しないタイプだろ?だからだろうな』

『極力楽をして戦わないタイプ』


「そうだけど酷くないか!」


『生贄魂を見せろ、期待してるぜ』

『黒光りするGの魂を見せろ、期待してるぜ』

『大丈夫大丈夫、鉄壁だし』


「鉄壁って、防御2倍を過信し過ぎだろ」


 後ろから黒服が走って来た。


「今回は早くね?」

「魔呼びのポーション1000本だ」

「ポーションは?回復する方のポーションは?」

「渡せない」


 そう言って黒服は走り去った。


「出来るだけレベルを上げた方が安全だ」


『こいつ悪い顔をしている』

『何をやらかす気だ?』


「何を言っている?俺はレベル上げをするだけだ」


 俺は歩き出した。

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