おわり
「いらっしゃい。この前も来てくれた子だよね? ああ、靴は適当な所に置いておいてくれればいいから。ごめん、今は美陽さんいないから、オレが案内するよ。まず玄関入って廊下を正面に行くと、台所とかお風呂とかがある。トイレと一緒で共用ね。居間は玄関正面のふすまを開けても一応入れるけど、テレビとかあるから、基本的には台所と反対にあるふすまを開けて入ってほしいかな。玄関から左手に曲がると女子部屋、廊下を真っすぐ行って突き当りにある階段を上がると男子部屋がある。
じゃあ、先に君の部屋を見てもらおっか。結構階段軋むから気を付けて。いや、抜けたりはしないと思うけど。一番手前が美月さんの部屋。そうそう、ちょっとお姉さんっぽい人。オレも最初勘違いしてたけど、お兄さんだから間違えないようにな。美月さんは今は働きながら大学通ってる。めちゃくちゃ料理上手い人なんだけど、最近は忙し過ぎるからみんなで分担して作ってるんだ。そのうち、君にも作ってもらうかもね。いや、苦手だったら無理はしなくていいと思うけど。で、その隣がオレの部屋。え、オレ? オレは今年高三だよ。朔葉高校に通ってる。そんで、オレの部屋の隣が、君の部屋だ。うん、改めてみるとやっぱりオレの部屋より広いな! いや、これは文句とかじゃなくて。さ、一階に降りよう。まだ案内しておきたいことがあるんだった。
まず、台所の方から見てもらうか。ここのものは基本的に好きに使ってもらって構わないけど、終わったらちゃんと綺麗にして元の場所に戻しておいて。ま、そこまで堅苦しく考えなくていいと思うけど。ちなみに台所の奥にある扉、あそこが美陽さんの部屋。いや、普段何をやってるのかはオレも知らない。包蓮荘七不思議のひとつだ。
次は居間だな。うん、結構広いっしょ? テレビは好きに見てもらって構わないけど、時々チャンネルの奪い合いになることがあるから、その時は負けないように頑張れ。いや、そのくらい負けん気がないと絵美ちゃんからはリモコンを引き剥がせないよ。そう、その金髪の人。ああ、初めて来てくれた時に会ったんだね。あの人は朔葉大学の二年生で、オレも詳しいことは知らないんだけど外国の文化とか勉強してるらしいよ。ちなみに、看板を作ったのも絵美ちゃん。前の看板は言っちゃ悪いけどめちゃダサかったからな。いや、すげぇよなぁ絵美ちゃん、あの人基本何でもできるけど、人にものを教えるのは絶望的に下手だから勉強は美月さんか平安寺に聞いた方がいいよ。いや、オレは頭そんなに良くないし、全然する気なかった受験の勉強をしなくちゃいけなくなったから、教える余裕はないって。一応、心理学を勉強したくてさ——、いやオレの話は別にいいだろ。
縁側にサンダルとかつっかけとか置いてあるから、それ使って中庭に出てもいいよ。もちろん、裏から回ってもいいけど。ちょうど今手入れしてるっぽいな。野菜とか作ってるけど、勝手に取ると怒られるから気を付けて」
「別に怒らないわよ! 初めまして!」
「邪魔してごめんな! そう、今の人が平安寺。梅園高校の二年生。基本的には優しいけど、勝負ごとになると本気だから一緒にゲームとかする時は気を付けてくれ。ん? 平安寺とオレ? いやいや、まずもってあり得ないし、万が一オレが手を出したらいくら温厚な美月さんでも怒られちゃうよ。
ま、そんなところかな。入居届はもうサインした? そっか、じゃあこれからは包蓮荘のメンバーで、家族みたいなもんだな。これからよろしくな」
ちゃんと生きてよ、無様に死ねよ ナツグ @natsugu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます