(C)アンド(P)
異世界と聞くと、中世ヨーロッパのような現代っ子にはキツい世界を想像するはずだ。いや、まぁジャンルにもよるとは思うが。
実際、この世界も厳しいことは厳しい。科学技術なんてものはろくに発展してないんでね。
だが、こと魔道具においては科学技術を上回る性能を持つ……ものがある。
魔法が使える奴等しか造れないんで、使用するだけでアホほど金とられるけどな!購入なんて夢のまた夢よ。
一つ、例をあげるとするなら……俺がよく世話になっている魔道具の“転写具”だな。副業で、俺は稀代の作家をやってるんだが……売りに出すためには、数刷らなきゃいけないんでね。ありがたや~って感じですわ。
見た目は片手サイズの綺麗な宝石の内部にルーン文字っぽいのが浮かんでいる。
これを原本にかざして起動し、写したい紙の上に持ってきて強く握るだけで転写完了。その時間、なんと驚きの一秒未満!しかも最初に保存した内容は記憶されるんで、連続作業も可能だぜ?
まぁ、文書を
これがあれば謄写業は要らないんじゃねって思うだろ?……チッチッチッ。それがちゃんと金銭的な理由やかかる時間、利用目的なんかで棲み分けができてるんだなぁ。
ギルドや謄写を頼めるとこの相場は、紙一枚あたり銅貨50枚前後。
魔道具は、店の用意した砂時計が落ちるまでの時間換算で、平均金貨50枚前後。この砂時計ってのがネックでな。三分程度のとこもあれば五分位のとこもあるんだわ。
という魔道具への理解を深めていただいたところで、本題だ。
―――金がないっ!
それはもう、今すぐ稼がなければ一週間後にはあの宿を出なければならない程に、金がない……転写の魔道具を使いすぎちまった…。
「と、いうわけでだ。今日からしばらく稼ぐぞ!久しぶりに討伐依頼を中心に活動する。さぁ、この俺についてこいっ」
「うぅ~……どういう訳かは、分かんないですけど……せんぱい、朝から元気そうで、僕もうれしいです……うぐっ、あたまが、いたい…です……でも、せんぱいが、僕を求めてくれるなら…んっ……どこまでも、ついていきますっ!―――うぇ……き、きもちわるくなってきました……」
昨日……正しくは今日なんだが、ド深夜にアレックスがぐでぐでに酔ったリオを俺の部屋に置いていきやがった。
しかも、飲みの代金まであいつが肩代わりしたそうでな。さすがに酔った相手の介抱までして金も払わせるのは申し訳ない。なんで、なけなしのお金でリオの分は払ったけどよ?……どんだけ飲みやがったんだリオのやつ……かなり掛かったぞ。
「……はぁ…二日酔い用に調合した薬は机の上に置いておくから。それ飲んで寝とけ。あと、俺が帰ってくるまでには身体洗っとけよ?石鹸使っていいから。
んじゃ、行ってくるわ」
「んぅ……僕のためにそこまで…ありがとうございますっ、ぅぅ……お、お気をつけて~……」
気をつけなきゃいけないのはどう見てもそっちなんだわ……これでも散々、静世亭で飲むときは注意しろって言ってたんだがなぁ。
まぁ、吐くことはなかったっぽいんでまだマシか。
先輩の失敗を教訓にしていくのが後輩だぜ。変なとこまで似なくていいんだわ……何が悲しくて、おんなじ店でおんなじ状況に陥いらなきゃいけないんよ……アレックスに世話されるオチまで真似しなくていいんだぜ、リオ……
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