なぜなに冒険者ギルド
やっぱり徒歩じゃこっからギルドまで遠いな。毎日通える距離だったら良かったんだが。
ちなみに、リオはぐーすか寝ていたので置いてきた。まぁ、羽毛100%の貴族御用達ベッドを初めて体験するんだ。ぐっすりと眠っているのも仕方ないだろう。世話役に、リオが起きしだい朝食と門までの案内はするように頼んでおいたから心配はしていない。
さて、向かう先はもちろんのこと冒険者ギルドなんだが……朝方に出て昼に着くこの距離を無心で歩くのはちょっとした苦行だな。
そういえば……この世界に降り立ってまもない頃、どうして
まず、この世界におけるギルドとは現代で言うところの組合に相当する。決して中世ヨーロッパのギルドではない。
だからこそ、薬師ギルドや商人ギルド。狩猟ギルド等の様々なギルド体系が、俺のいる王国に存在している。他所の国にもあるのかどうかは知らん。
しかしながら、王国において身分証に準ずるものを発行できる組合は冒険者ギルドだけ。つまり、王国全土で強い影響力を持つ組織である、ということだ。その他のギルドは互助会のような存在と言ってもいいかもな。
んで、話を戻すが……そんなに大きな組織の名前がなぜ"冒険者"なのか俺は気になり、調査したのだが。
結果として、この王国が誕生する起源まで遡ることになった。
千年以上も昔の事で、もはや絵本で語られるお伽噺となっていたが……とはいえ、この国で生まれ育ったなら誰もが知っている常識らしい。
――まず……"浸蝕する闇"とやらから"神の導き"のもと逃れてたどり着いた場所が、王国のあるこの大陸。
今でこそ千年王国となるほどに豊かで住み心地の良い場所だが、当時はどこまでも鬱蒼とした森が続く大地だったそうだ。
これをたったの一代で開墾し、王国の基礎を築き上げた男がいる。彼こそが冒険王というあだ名で広く知られている偉人、初代国王様だ。
彼は"神の祝福"を受けた精鋭を直接指揮して、常に開墾の最前線に立っていたと云われている。
ちなむと、"神の祝福"というのは、成人になる年に教会で祝福されることで獲得できる異能のことだ。どうしてか、この世界における
とはいえ、さすがに冒険王一人じゃ手が足りない。そこで、彼は率いていた精鋭を各地に配置し、一般市民からも開拓者を募るシステムを構築。こうして一つのピラミッド型の組織が完成した。このときに、トップの冒険王に因んで"冒険者ギルド"と名付けられたそうだ。
当時の仕事は、開拓や未知の場所の探索。魔物の討伐に有用な資源の発掘といった、いかにも冒険していると感じさせるものが多い。
また、仕事の功績に応じて精鋭認定されていたそうだ。これが、今もある冒険者ランク制度の原型だな。時には冒険王が直々に褒賞を与えるなんて事もあったそうで。
これが伝統になったのかは知らんが、現在でも金級になると国王から一代限りの爵位が渡される。領地も貴族の義務とかも特にない名誉貴族ではあるんだが。
ちなみにこの階級制度、地味に冒険者ギルドにしかない特徴だ。
今でこそ開拓が終わり、何でも屋となった冒険しない冒険者ギルドの仕事だが……名前と共に国内での影響力が廃れていないのは、なんとも感慨深いところがあるな。
千年も経っていれば組織内の腐敗とかで国が傾いてそうなもんだが……今のところ斜陽王国には見えない。
っとと、そんなこんなで件の冒険者ギルド前に到着したが……どうやら、いつもの喧騒が戻ってるようで。
こりゃ、緊急依頼も無事片づいたか?
とりあえず、中に入るとしますかね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます