安息日
―――かっぽーん
俺は今、極楽浄土にいる……
「あ"あ"ぁぁぁ~………最っ高、だぁ」
月一で密かに味わう贅沢。
……共同浴場じゃすし詰めかってほどに窮屈だからなぁ。金に余裕ができてからは、高級娼館で洗ってもらうようになって行ってないし。
高級娼館はいいぞー。丁寧に体を洗ってくれるだけじゃなく、耳掃除に質のいい寝具で睡眠をとることができるからな。3日に1回はお世話になってるくらいだ――不能だなんだと噂されるのに目を瞑れるほどには良い所だ。清潔に保つことの何が悪いってんだい!
「あ、あの~…先輩?いろいろと突っ込みたいことしかないのですが……」
「ん~?おいおい、男相手にツッコムとかリオはまさかのそっち派かー?個人の嗜好を否定する気はないが……悪いが俺にはやめてくれ。想像しただけで鳥肌がたってきた……」
確かに娼館通ってるくせに、この歳にもなって未だ童貞ではあるが……俺はいたって普通の性嗜好だ。シンプルに綺麗な女性が好み。
だがなぁ、この世界の女性ってガタイがいい人ばっかりなんだよ。ムダ毛を剃るっていう意識もあまりないようだし。あと、普通に汚い。不潔。いやま、現代日本とかと比べてではあるけどさ。例外が娼婦の方やギルド職員のようなしっかりしたサービス業に就いている人たちくらいで……あとはお貴族様か。
「っ?!……せ、先輩のばかっ!そ、そういう意図で言ったんじゃありませんっ」
「わかってるわかってる。端から冗談だ。それに、俺と裸の付き合いをするのなんて今さらだしな」
っつーわけで保護者の期間、リオには徹底的に清潔であるように心がけさせた。先ほど頭や背中を流してやったとき、ほとんど汚れはなかったからちゃんと意識できてるようだ。感心、感心。
「あー、まぁ、リオが聞きたいことや言わんとしていることは大体わかる。先に言っておくが、俺は貴族じゃないし、高貴な血とやらも流れてない。魔法が使えない時点でその辺は分かってるだろうがな」
「まぁ、はい。でも、こんなにも豪華な屋敷……」
「貰った……突然ギルドからここの所有権を渡された」
「――へ?」
「心当たりは……無いこともないが、世の中気づいてない方が良いこともあるのさ――というわけで、他のやつらに俺が貴族街に家持ってることは言わないでくれよ?同業のやつらに知られたら絶対面倒なことになる…」
「あ、はい。じゃあ、僕からはもう何も聞かないでおきますね。先輩の巻き添えになりたくないですし…」
「懸命な判断だ……そうだ!酒でも飲むか?こんなばかでかい浴場で酒飲みながら湯に浸かれるのはここだけだぞ?」
端から見れば俺は未成年飲酒を勧める悪い大人だろうが、この世界では成人は16歳から。そもそも、未成年が飲酒してはいけないなんてルール自体ないんだがな、この世界。それでも一応16まで酒は控えさせた。
裏でこっそりと飲んでいる分には俺も知らんがな。
「そうですね、じゃあ僕もお願いしてもいいですか……それと、先輩はお酒弱いんですからほどほどにしてくださいね?」
「あいよ。さすがに酔うまで飲みはしないさ。ここでの晩ご飯を前に逆上せるなんて、さすがにもったいない」
「……逆上せても僕の力じゃ先輩を引っ張りあげられないんですからね?意外と先輩の体って引き締まってて重そうですし」
「まぁ、お前さんは骨格からしてひょろいしなぁ。体幹と柔軟性はあるが筋肉質じゃあないし……まっ!たくさん食ってもっと太れ」
「あはは!…いっつもそれしか言わないんですから、先輩は」
とは言うものの、がたいや筋肉がつくかどうかとかは遺伝的な要因もあるそうで。たぶんリオは母親似なんだろうな。美少年って言って差し支えない顔立ちをしている。
ここに来る前は男婦として売られかけたこともあったようで、あまり容姿の話は当人の前でしないようにしているが。
暫くして、世話役の方が運んできたお酒を飲みつつ話に花を咲かせた。
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