エピローグ



「はあ~。面白かったね、ヒョウ兄ちゃん」


「うん、いろんな話があって面白かった」


 テントの中が明るくなると、来ていた人たちは次々と立ち上がり外へ出始めていた。


「やあ君たち、どうだい? 楽しかったかい?」


 すると二人の目の前にいつの間にかピエロの格好をした男が立っていた。


「わあっ」


「わっ。あ、はい。面白かったです」


 二人は怖がっているのか体を寄せあっていた。


「そうかいそうかい。では記念にこれをプレゼントしよう」


 そう言うとピエロは握りしめた両手を二人の前に突き出した。


 そしてパッと手を開くとそこにはキラキラと輝くダイヤモンドが乗っていた。


「わあ~」

「キレイ」


「そうだろう? でもこれはオモチャなんだ。特別なオモチャ」


「特別な」

「オモチャ?」


「見たいお話しを思い付いたらこれを枕の下に入れて眠るんだ。そうすれば、朝目が覚めたらこのテントが現れてるはずだよ」


「本当に?」

「すげえ」


「いつでも遊びにおいで」


「うん!」

「ありがとう!」


 二人はピエロにお礼を言うと、ダイヤモンドのオモチャを大事そうにポケットにしまいこんだ。


「じゃあまたね。気を付けてお帰り」


「はい、さようなら」

「さようなら」


 二人の兄弟はテントをあとにした。


「帰ってママに見せる!」


「バカ! これは俺たち二人だけの秘密だぞ」


「そうなの? わかった!」


「ははは……」


「あはっ」


 二人は楽しそうに笑いながら広場を走っていった。


 その笑い声はまるでダイヤモンドのようにキラキラと響いていた。


 そして大きなテントがだんだんと薄くなって消えてしまったことに気付いた者は誰もいなかった。



                   完




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「今日の天気はダイヤモンド」上映会 クロノヒョウ @kurono-hyo

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