落とされた1000万円

3.14

落とされた1000万

「おいおい、だから俺のだっつってんじゃん」


「はぁ?何いってんだてめぇ、!」


「いやいや、ほんとにこれ私のですって…」


「それは、わしのじゃよ、、、」


「ちょ、もう争うのは、やめましょうよ!」


「僕のものですって…!」


「お、れ、の、だよぉっっ!!」


「かえしてよ!!」


いつもは、静かになる時間帯。

さっきまであんな明るかった太陽も今では、眠たそうに夕日へと変わっている。

なのに今日は、いつもと様子が違っていた。


ポツンとある交番の前には、1000万円と。

それを巡って騒ぐ8人の老若男女。


みな口を揃えて「私、俺、が落とした」と言う。

警官は、困り果てていた。

そして、その8人も今にも殴り合いそうな雰囲気であった。

「いや、ほんと俺のだっていってるじゃないすか」

いかにも胡散臭そうなチャラ男。

「ここは、話し合いましょうよ、!!」

この場を落ち着かせながらもチラチラと1000万を見る女。

他にもおじいちゃんやら、ガタイのいいお兄さんまで…。

すべての人物が怪しく見える。


するとその中にひとしきり大きな声が響いた。


「ちょっと、静かにしてくれ!!」


「あ、巡査部長、」

一人の男がボソリと言った。

その巡査部長は、真剣な顔をしながら受話器を手に取った。


「はい、もしもし…。ええ、そうです。え?1000万円を積んだ現金輸送車が襲われた?!」

つい声をデカくしてしまった。

男は、ドキリとし少し周りを見るとまた電話に戻った。

さっきよりまた小さな声になりながら。

「分かりました、えっとぉ…その1000万なら今ここにあって…」


チラリとまた周りを見回した。

勿論誰もいなくなっていた。


巡査部長は、ニヤリと笑った。

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