1日目(下)

 ときどきこんな夢を見る。ただただ白が広がった空間で咲都さとと向かい合い、目を合わせている。なぜか2人とも幼い頃の姿で、いつも目が逸らせないまま気がついたら目が覚めている。そしてまた今回もそうだった─────



✧ ✧ ✧



 ─────ん……

 目が覚めると、窓の外はもう暗く、台所では咲都がご飯の用意をしていた。

「あ、花奈かな、起きた。おはよ」

「わたし…寝ちゃってた…?」

「そりゃあぐっすりと!」

 咲都はからかうようにそういうと、ご飯の用意に戻った。

 なにか夢を見た気がするけど…うーん…、思い出せない。

 そういえば部屋が片付いている。わたしが寝てる間に片付けでもしたのかな?と思うがその思考は咲都の声に遮られた。

「ご飯できたよ」

 そういいながら咲都が運んできたのは、なんとも美味しそうなオムライスだった。

「め、めちゃくちゃ美味しそう…!咲都ってこんな料理上手かったっけ?」

「こう見えてできる女なんですよ、私は」

 どうだ!と言わんばかりの顔をこちらに向けて咲都はそう言った。

「温かいうちに食べよう。手を合わせて」

「「いただきます」」


 早速ひと口すくって口に入れた瞬間、むせた。

「!!!??ゲホ、ゲホ……咲都、これ塩と砂糖両方入れてない……!!?」

「え!!?」

 咲都もひと口食べた。なんとも言えない顔になった彼女を見てこの疑いは確信に変わる。

 気にせず食べ続けてみる。2人あわせて4口で音を上げた。

「咲都、さっきすごい どうだ!って顔してたよね?」

 と、わたしは茶化すように言った。咲都は目を逸らしながら

「うるさいなぁ!」

 と言った。堪らずわたしは笑ってしまい、そしてふたりでしばらくの間笑いあった。



✧ ✧ ✧



「実はね」

 ご飯を片した後。突然咲都が話し出した。

「私そこまで料理得意じゃなかったんだ。」

「そうだったの?」

「そうだよ。中学の時、全学年でクラス別だったでしょ?だから花奈は知らないと思うけど調理実習とか散々でさ〜」

「料理苦手だったんなら別に出前とかでも良かったのに。まぁこれはこれでいい思い出だけどね」

「出前も考えたんだけど。花奈に私の手料理食べて貰いたいなぁって。」

 咲都は少し照れるように顔を伏せながら言った。

「『ちゃんとした料理ができる、生活力のある私』を見て欲しかったんだよね〜。失敗しちゃったけど…」

 そういう咲都の耳は真っ赤で、このまま見ているとわたしまで照れてしまいそうで。逃げるように、

「わ、わたしお風呂行ってくる!!」

 と言い、風呂場へ向かった。


 湯船につかりながら考える。

 ─今更なんだけど、咲都は本気でわたしのこと好きなんだなぁ…

 未だに実感がわかない、おさななじみから向けられる恋心。今になってようやく言おうと思ったきっかけはなんなんだろうか。

 そして1番の問題。私の気持ちは。



 ――まだ、よく分からない。


 考えても整理がつかない気がして、そのことを考えるのはとりあえずやめにした。

 お風呂から上がり、昼に寝たにしてはまだ早い時間に眠った。

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