フライトは楽しめたかな?

 なんか、でっかい金属の塊の前で立ち尽くす、あーし……。

 これを、どうしろと?


「うーん。使い方が分かんないよ~。これをどうやって動かせっていうのかな~?」


 あーしがそう言うと、"扉"が現れた。

 あーし、考える。


「う~ん。輸送できる人~」


『あ~、もう! 使い方~!』


 女神様も、そろそろあーしの使い方を熟知して、それっぽい人を召喚して欲しいな~。あーしを変えるんでなくて、女神様が対応してよ。

 あーしは、ドアノブを回した。

 そして、その人が現れた。



「ここは、何処ですか?」


「あーしは、スピネル辺境伯の領主。リナ・スピネルって申します」


 来てくれたのは、チャールズ・リン〇バーグさんだった。

 いつも通り、交渉だ~。ジャガバタを出すと、美味しそうに食べてくれた。


「ふむふむ。この宝物を飛行船に積み込んで、運ぶんだね。重機は……、未来のモノみたいだが、操縦してみせよう。任せてくれ」


「あり~す」


 うん、良い人だ~。良い人しか来ないな~。


 チャールズさんが、ショベルカーで宝物を次々に輸送機に運んだ。

 十数回の往復で、全部詰め込めたんだ。


「それじゃあ、出発しよ」


「ちょっと待ってくれ。マニュアルを読む時間をおくれ」


 う~ん。まあいっか。もう夜中だし。

 あーしは、宝物のベットで仮眠を取ることにした。


「金貨のベットって、童話で聞くけど、実際にやってみると、背中が痛いんね……」





 朝日と共に起き出すと、チャールズさんがプロペラを回し始めた。


「うーん。朝日は気持ちいいけど、山頂なので寒いな~」


「リナ嬢。準備万端だ。出発しよう」


 チャールズさんは、一晩中起きてたんだ?

 輸送機が浮き上がる。ちょっと怖いな~。

 だけど、水平飛行に移ったら揺れも収まった。


「こう、こうかな……。それと、これとこれのスイッチを入れて……」


 チャールズさんは、マニュアルに目を通しながら運転してくれている。

 そんなに慌てなくてもいいんだよ?

 それよりも、方角合ってる?


 数時間のフライトで、無事にスピネル辺境伯の領地に帰って来れた。

 あーしの居住している屋敷の中庭に着地して貰う。

 領民が、何事かと集まって来た。ザワザワしている。でもそうだよね~。こんな金属の塊が空飛んでんだもん。あーしも不思議だった。


「ふう、着地成功。フライトは楽しめたかな?」


「ありーす。チャールズさん。楽しかったよ~」


 ここで、"扉"が現れた。

 チャールズさんと、握手を交わす。


「輸送機は、いいモノだった。手入れを怠らないようにね」


「了解っす。ありがとうございました」


 チャールズさんが、帰って行った。

 チャールズさんのお土産は、"整備マニュアル"と"操縦"だ。


 「さーて、やることが一杯だぞー。ちょっと時間がかかり過ぎだよね~」


 あーしは、「う~ん」っと伸びをした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る