破壊の権化

「え~。魔人国が攻めて来るの~? 王国軍が敗走?」


「はい……。兄上さまも行方知れずと連絡を受けております」


 う~ん。困ったな~。またか~。

 でも、今回も王国側から攻めてんだよね?

 悪いのこっちでない?

 ここで目の前に、"扉"が現れた。


『次は、ちゃんとイメージしてドアノブを回しましょうね~』


 う~ん、イメージか~。

 さて、どうしようかな~。


「魔人国を、追い払ってくれる人~」


『だから~! アバウト過ぎんだって言ってんだけど!?』


 今回は女神様からの突っ込みを聞いたので、あーしは掴んだドアノブを放した。

 危ない、危ない。


「え~。具体的に教えてよ~」


『ゴホン。普通は、個人名とかを思い浮かべて、ドアノブを回すモノですよ~』


「来るのは、異世界人じゃん? あーしが、個人名を知ってる訳ないじゃん?」


『この世界の過去の英雄でも、いいんですよ~。それに、"聖書"を読みましょうね~。他に貰った本も読み込めていませんよね?』


 ほうほう、なるほど!


「じゃあ! ファフ〇ール!」――ガチャ


『ぎゃあ~! もう、人でも神でもないじゃないの~!』





「風が、気持ちいな~」


「……のう、リナ嬢。魔人国の説得だけでいいのか?」


 今あーしは、ファフ〇ールさんの頭に乗せて貰って、移動中だ。

 でっかいドラゴンさん。

 あーしの世界の神話に出て来る、破壊の権化。神々を怯えさせたその一柱。


「ワシのブレスなら、その毒性で国一つくらいなら一日で滅ぼせるぞ?」


「ダメだよ~、ファフ〇ールさん。平和的に交渉してよ~」


「むう~。ワシに難しい注文をする女子おなごだ。殲滅以外のことを、ワシに要求して来るとは……」


「ファフ〇ールさんは、魔人国の神話でも出て来るんでしょう?」


「そうよな~。神話の時代に魔人たちともやり合ったからな……」


「そんじゃあ、お願いね」


 ファフ〇ールさんは、渋々了承してくれた。





 戦場に着いた。

 連戦続きで、疲弊した王国軍は、壊滅状態だった。

 その真上を、ファフ〇ールさんが、横断して行く。


 ちょっと離れた、魔人国の軍隊の陣営の前に着地する。


 ――ズシーン


 地面が揺れる。

 長高50メートルくらいのファフ〇ールさんが、地面に降り立つと、地割れが起きた。

 あーしは、ファフ〇ールさんの頭に乗せて貰っているんだけど、振り落とされそうなのを、必死で耐えた。


「ワシは、ファフ〇ール! 魔人国の将軍よ、出て来い!」


 ちょっと、ファフ〇ールさん。声大き過ぎ。それと、あーしを忘れてない?

 鼓膜が、破れそうなんだけど?



 暫くすると、数人の魔人さんたちが来た。

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