狙撃手

 本格的な冬が始まって……、終わった。

 領民が住める建物を増築するだけで、冬が終わっちゃったよ。

 餓死者なし。

 領民も、皆笑顔だ。


 そんな時だった。武装した一団が来たんだ。誰だろう?


「え? 辺境伯の使者? 税を納めろ? 麦は、育たなかったんよ?」


「食うモノがあるのだろう? だからこれだけの領民を抱えている。その半分を差し出せ!」


 え~。横暴だ~。

 領民を見ると、殺気立ってるな……。

 辺境伯軍も、刃物を向けて来た。一触即発になっちゃった。

 こりゃダメだ。


「承知しました。こちらになります……」


 あーしは、領民たちを手で制して、食糧庫へ案内した。



 辺境伯軍は、倉庫のジャガイモを全部持って行ってしまった。

 ただし、牛さんは渡さなかった。厩舎がないと生きて行けないのと、世話が大変な品種であることを説明したら、チーズとバターを全部持って行くことで了承してくれたんだ。


「はあ~。持って行かれちゃったね~」


「リナ様……。立ち上がるべき時が来ました。今なら大義名分があります」


 ん? どういうこと?

 領民たちを見ると、武装して集まっていた。


「ダメだよ~。戦争は、軍人さんがするもんだよ~! 四つある倉庫の一つを全部持って行かれてもさ、まだ、全然余裕じゃん? 食べる物も、住む所もあるんだし、生産頑張ろうよ~」


「ですが……。あいつらは、辺境伯軍とは名ばかりで、遊んでいる奴らです。外敵が来れば、逃げ出すしかない役立たずなんです。そんな奴らに、大切な食料を……」


 う~ん。そうなんだ? この地は、他国と接しているけど、最終防衛ラインでないの? それなのに逃げちゃったら、国がアウトじゃん?

 ここで、"扉"が現れた。


「あれ? 女神様?」


『今回は、領民が正しいです。辺境伯軍の不正を正しましょう』


 神様も、ノリノリだ~。あーしも腹を括る。

 あーしは、ドアノブを回した。



「……誰を殺せばいい?」


 うわ~。物騒な人が、来たな~。

 流石のあーしも、ドン引きだ~。


「良く来てくれました、異界の勇者様~。あーしは、領主代理のリナ・スピネルと申します~」


「もう一度聞く……。誰を殺せばいい?」


 蒸したジャガイモを、異界の勇者様に差し出すと、乱暴に食べ始めた。

 食べて貰いながら、今までの経緯を話す。


「……なるほど、敵は辺境伯軍なんだな。承知した」


「異界の勇者様~。名前教えて」


「おう、失礼した。俺は、シモ・〇イヘだ。狙撃手スナイパーだ。それでは、ちょっと行って来る」


 シモ・〇イヘさんが、ライフル銃を担いで、行ってしまった。

 っと思ったら、戻って来た?


「馬は、ないんかい?」


「あるよ~。どうぞ」


「サンキュー。助かるよ」


 良かった。怖そうな人だけど、打ち解けたみたいだ。

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