怪僧

「う~ん。美味しい~」


 ジャガイモのチーズ掛けは、絶品だ~。白米には、塩辛いモノが合うな~。

 ここで、狩人の人達が帰って来た。アゲート子爵領から新しく来た人達だった。


「お~。鳥か~。大量だね~」


 鳩かな? そんな動物だ~。


「リナ様。森に鳥が多く生息しておりました。狩り尽くさない程度に間引いて来ます。それと、猪の運搬に人手を出して頂きたいのですが」


「OK~。誰か手伝ってあげて~」


 男性が、5人ほど狩人さんに着いて行った。

 鳥が手早く捌かれて、串焼きにされて行く。

 塩が振られて、あーしに差し出された。


「うん。美味しいよ~」


 料理人さんは、満足な笑顔だ。





「うん? アゲート子爵が来たの? 何しに?」


「逃げた領民を帰せとのことです。村の外で騒いでおります。その……兵士を連れて来ていて……」


 う~ん……。国の法律でも、そんなんなかったな~。

 領民は、領主を選べるんだよな~。

 領民が逃げ出したのは、領主の責任なのだ。飢饉の時に、麦を放出しないからそうなるのに。


「まあいっか。会ってみるね~」



 村の外側に行くと、武装した集団がいた。

 う~ん。脅そうっていうのかな……。

 恐怖で縛っても、領民は懐かないよ? 謀反を起こされて、殺されるのが落ちなのだ。それが貧乏貴族なんよ。


『こちらも、兵士を用意した方がいいんじゃないんですか~? 全員連れて行かれてしまいますよ? 家畜や穀物も含めてね』


 え~。それはヤダな~。

 そう考えると、"扉"が現れた。


「う~ん。平和的に解決してくれる人~」


『だから~! 名前で指定しろっつてんだろうが~!!』


 女神様~。怖いよ~。

 それに、あーしは、異世界の人の名前なんて知らないんだよ~。



「ここは……、異世界か?」


「そうで~す。異世界です。良く来てくれました、異界の勇者様~。あーしは、領主代理のリナ・スピネルと申します~」


 今回は、異世界召喚の経験のある人なのかな?

 黒目黒髪じゃないのが、ちょっと気になるかな。


『……日本人以外を、呼ばないでください』


「ふむ。私は、ラスプー〇ンだ……。交渉事かな?」


 武器も持ってない。

 平和的な交渉をしてくれそうな人だな~。今回の人選もアタリみたいだ。


『……!? なんつう人物を、召喚してるんですか!』


 女神様からの突っ込みが来る。

 あれ? ダメな人?


 ラスプー〇ンさんが、独りでアゲート子爵との交渉に行ってくれた。

 10分くらいかな~。

 全員が、回れ右して帰ってくれた。


「良かった~。平和的に解決できた~」


 ラスプー〇ンさんが、戻って来てくれた。


「リナ嬢。もう襲われることはない。アゲート殿は、二度とこの地には現れないだろう」


「あんがとね~。なんか御馳走したいんだけど、何食べる?」


 ラスプー〇ンさんは、良い笑顔だ。

 だけど、その笑顔を見た領民は、凍り付いていた。

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