第2話、お嬢様は、大地に立たれたご様子でございます。

 櫻子さくらこお嬢様が、VRゲームをお始めになられました。

 重原動機付き動甲冑MAをお選びになられたご様子。



「ここが、始まりの街ですわね」

 櫻子さくらこお嬢様は、周りを見渡した。

 ヨーロッパ風の街並み。

 中央広場の噴水の前だ。


 うふふ、肌に風も感じますし、においもありますわ

 …屋台で、串に刺したお肉が売られています…


「初めてこの世界に来た人に、一本サービスだよ」

 店の人に声をかけられた。


「ありがとうございます」


 ゴクリ

 

 美味しそうですわ

 生まれて初めて買い食いをした。



 黒須重工社製、重原動機付き動甲冑、“鈍龍(どんりゅう)”

 櫻子さくらこお嬢様が選んだ原動機付き動甲冑である。

 原動機付き動甲冑が開発された最初期のものだ。

 五層の装甲を誇る歩く防壁。

 故に超重量。

 バックパックの上下に、円筒状の原動機を二機装備するが、あまりの重量に歩くだけで精一杯である。


 別名、”歩く障害物シケイン



 ズシュン


 ズシュン


 重厚な“MA《モーターアーマー》“が歩き始めた


 元から175センチ近い身長が“MA《モーターアーマー》“を着ることによって、180センチを越えた。

 かろうじて女性型を表すのは足元のピンヒールだけである。


「うふふ」

 わたくしは肉の串を片手にご満悦である。

 ヘルメットのバイザーは、はね上げていた。

 大通りを道なりに歩く。

 ゲーム内時間で30分かけて街の正面門まで来た。

 現実の時間の三倍に早められている。

 ここから先は街の外だ。

 街は、十メートルくらいの壁に囲まれている。

 門から外に出ようとした。


 ピピッ


[”プラネット・フロンティアオンライン”へようこそ]

[チュートリアルを行いますか?]

 ナビゲーションが聞こえた。

 ホログラフの女性が見える。


「受けますわ」

 

[”プラネット・フロンティアオンライン”の世界は、過去の地球が再現され、沢山の生物や綺麗な景色が、あなたの発見を待っております]

 

「楽しみですわ」


[このゲームには、経験値が存在しません]

[代わりにあるのは、発見点ディスカバリーポイントです]

[ゲーム内では、“DP”と略されます]


「DP?」


[この世界で、見る、聞く、匂う、味わう、この世界を“識る”行為全てに、発見点ディスカバリーポイントがつくのです]

[ステータス画面を見てください]


「あらっ」

 ステータス画面を意識すると顔の前にポップアップされる。

 0だったDPが10,000DP近く増えている。

 街を歩いたDPだ。


[このDPを使ってあなたの“MA《モーターアーマー》”を改造しましょう]

[装備にはじまって見た目まで沢山用意しております]


「装備といえば、”鑑定装置”のことですわね」


[さあ、フロンティアランドで、綺麗な景色や経験を体感しましょう]


 チュートリアルが終了した。


 横座りから立ち上がる。


「さあっ、行きますわよ〜」



 お嬢様が街の外に一歩踏み出されました。


 さあ、私もMAを選びましょう。

 ……これでいいですね……

 軽量級のMAを選びました。

 金髪にホワイトプリム。

 口元はマフラーで隠しましょう。

 肩とお腹がむき出しでございますね。 

 最軽量の小さな原動機が腰に横向きについています。 

 図らずも櫻子さくらこお嬢様が選べなかった、”クノイチ型”であります。 


 ”金髪爆乳クノイチメイド”の爆誕、でございます。 

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