櫻子お嬢様は、VRMMOゲームを御遊興されるご様子でございます。

touhu・kinugosi

第一章、結成、クラン、”お嬢様のお茶会”ですわっ。(チュートリアル)

第1話、お嬢様は、重甲冑を選択されるご様子でございます。

 黒須くろす櫻子さくらこ様は、お嬢様でございます。


 お嬢様の午後は、優雅なティータイムで始まります。

 清楚なドレス。

 瀟洒なテラス。


 テラスの外は、ガラス越しに一面の星の海でございます。



「お茶が入りました」


「ありがとう」

 ティーカップを、上品に口に運ぶ。


 ブフッ


 ナントカ、噴き出すのを耐えた。

 半目、口は半開きのまま後ろを振り返る。


「天然の高級ドクダミ茶が手に入りました」

 デトックス効果(大)である。

 幼いころから一緒の金髪メイド、“マリアージュ”が頭を下げた。

 良い仕事をしている。

 何かを言いたげなお嬢様の視線を華麗にスルー。

 

「お嬢様、お荷物が届いています」


「……そう、お部屋に運んで頂戴」

 わたくしは、優雅に立ち上がった。


「届きましたわ、うふふ」

 扇子で口元を隠す。

 部屋には、豪快に笑っている口の絵のついたダンボール箱が置かれていた。


 開けた。


 中には、四角い可動式のゴーグル。

 VRMMO用、ヘッドギアである。

 わたくしはいそいそとヘッドギアを被った。


「お茶(ドクダミ茶)は飲みましたわ」

「御不浄は済ませましたわ」

「起動あそばせ」


 ヴヴン

 

 微かな起動音とともに、ヘッドギアが起動した。


 ”プラネット・フロンティアオンライン”

 

 過去の地球に降りたって、冒険するバーチャルリアリティーエム……なんちゃらである。


「うふふ、楽しみですわ」

 

 キャラメイクである。

 Pc内の画像や動画を使用して、本人そっくりのアバターが作られる。


[あなたのアバターが自動作成されました]


 肩までの黒髪。

 モデルのようなスタイル。

 身長は175センチくらい。

 誰もが振り返るような美人だった。


[このアバターでよろしいでしょうか]


「はいですわ」


[次に使用する、”原動機付き甲冑モーターアーマー略して”MA“を選んでください] 

 簡単に言えば”パワードスーツ”である。

 この手のゲームでよくあるように、女性型は体のラインがはっきり出ていたり、お腹が見えていたりする。


「破廉恥ですわああ」

 色々な甲冑を指先でフリックしながら叫んだ。


「こっ、これはっ」

 身体の凹凸もあらわな”クノイチ型”だ。

 プルプルと、指先が決定ボタンに伸びる。


「無理ですわっ」


 結局選んだのは、重装甲のフルプレートタイプ《重甲冑》だった。

 真っ黒なボディに、胸に銀色で十字架クロスが意匠されている。

 彼女の苗字は、黒須くろすだ。



 櫻子さくらこお嬢様は、デザインだけで選んでおられるご様子。



[ポイントを消費して、装備をお選びください]


「そうね、”鑑定装置”よ」

 ”軽い小説”で勉強しましたの


 ポイントが零になった。 



 ……武装を全く選んでおられないお嬢様に幸あれ、でございます。 

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