第2話省エネの怪物

第二話省エネの怪物



あれから一週間だが何も起きていない。

本当に怖いくらい。

もしもこれが漫画や小説なら打ち切りレベルだよ。マジで、

だって俺あんなにイキがって何もないとか。


俺は一週間前の光景が鮮明に浮かんできた。


「まぁ良いですけど…俺の客なので最後まで責任は持つ」


いやいや、恥ずかし過ぎだろ!!


「死にてぇー」

俺は左肘を机の上に置いて顎を乗せて頬杖してため息混じりに言った。そして窓の外を見ていた時、クラスの女子が騒いでいた。


「ねぇ知ってる?2年B組の木崎晴美が大切にしていたネックレス盗まれたらしいよ」


そう言ってクラス女子がその話題で騒いでいた。


「え!それ知ってる…それとさ同じB組の田中圭が魔女って名乗る人に殴られたらしいよ」


———うんおかしいぞ。

そんな問題、生徒会はともかく魔女は見逃さないだろ。それが役割なんだから、


「何それ可哀想」


いや、絶対そんこと思ってないだろ。

可哀想って言ってる

私可愛いて思ってるだけだろ。

このクソビッチが!

俺は顔を机に伏せながら言った。


なんでこんなにクラス女子に嫌悪感を抱いてる理由は…それは…

今でも鮮明に覚えている。


中学3年の卒業式だ。

俺に積極的に話しかけてくれる

女子がいた。


その女子は積極的にボディータッチもしてくる女子だった。

LINEを送れば送った二日目の朝には返信がきていた。

そう、当時の俺はこう思っただろう。

こいつ俺のこと絶対好きやんこれもう告ったら絶対オッケーされる奴だと。




「好きです…付き合ってください」


俺は自信満々に手を前に出して言った。


「ごめん…友達じゃダメかな」


満面の笑みで、背中で手を組みながら。


「え!?あ..あ..はいこっちこそごめん」


戸惑いながらも、今の状況を理解できないままただ謝っていた俺がいた。


呆然としていた。虚しく現実を知った子供の様に、


いや今思えば、その女性は色んな人に笑顔を振り撒いて

どんな人にも優しくして、

男女問わず人気だった。

だからその笑顔ただの仮面だとしても。

当時の俺は気づかなかっただろう。

いや気づけない程の重い仮面、簡単には剥がれない仮面。

そして多分俺は恋心より可哀想、哀れの感情でその人に興味持っていてそれが恋だと勘違いしていただけだろう。





なぜか廊下側が騒がしかった。

まるで有名人が来たのかという様な騒がしさだった。


———うん?特に男子が騒がしいな。


そしてその瞬間、殺気を感じた。

背中がスッとなったのを感じた。


そう男子生徒の視線が俺の方を向いていたのだしかも男子だけではなく女子生徒もだ。


いやクラスメイト全員が俺の方を向いていたのだ。


俺は自然的に窓側に視線を逸らす。

なぜなら逸さなきゃいけない状況になっていた。向いたら殺さられる。絶対………。


「もしかして…鎌瀬ってこのクラスではありませんか?」


誰だよ?…呼ばれてるぞ早く行ってやれよ。

可哀想だろ……


聞いたことある声と

この言葉の奥から人を貶す様な口調。

俺は知っている。


白雪姫こと白井紗夜だ。


俺は恐る恐る白井の方を向く。


てかあいつ俺のクラス知ってるよな、何あれわざと?わざとならやめてもらっていいですか?命いくつあっても足りないぐらい

クラスメイトから殺気を感じるんですけど。


「あ、あ、鎌瀬くん!良かったクラス当てた。」


気のせいかな、なんかその笑顔に裏に、

いるなら早くしろよという怒りが見えるのわ。うん俺だけかな?よし!


俺は机を思いきり叩きつけてその勢いで立ち上がって逃げる様に白井の方に走り出した。

その姿は自分でもダサいと感じたくらいだった。


「おお、白井さん何の要件あってこのクラスに尋ねて来たんですか?」


俺はつい敬語でかえしてしまった。


「人が多いから少し移動しましょう

か•ま•せ•く•ん」


この一つ一つの間に濃密な殺気を感じるのが

わかるくらい負のオーラが白井の周りを囲んでいるのが俺の目にも見えるくらい濃密で濃くまとわりついていた。


その瞬間、白井は俺のシャツの袖口を持って、俺を引きずる様に歩き出した。

俺は抵抗せずにただ引きずられる。

いや抵抗したら俺に視線を向けている奴らに殺されると思ったからだ。

痛い痛い、視線が痛い

恥ずかし過ぎて穴があるなら入りたいくらいだ。


俺はそうやって旧校舎に連れられ四階へ

奥の部屋そう俺は知っているここは、元ラジオ放送室そして今は恋愛の魔女が使っている。教室だ。


「ちょっと待てここ俺が使ってる教室じゃん」


そして、白井は胸ポケットから鍵を取り出して、教室のドアを開けた。


「ええ!なんで教室の鍵持ってるんだよ?

白井」


俺は戸惑いながらも問いかける。


「簡単な話よ今日からここは、探偵部の部室になるからよ」


長い髪を掻き上げながら、上からものを言う。


「ええ!!、マジか?」

俺は驚きのあまり、おもわず変な声が出ていた。


「おい待って俺は省エネで生きていきたいんだ部活動なんてエネルギーを大量に消費するだけだ

自慢じゃないが…中学生頃に入っていた剣道部を一ヶ月経っていないのに退部したぐらいだ」


白井は少し引いていた。異物を見る様な目で俺を見る。


「鎌瀬くんが部活に入っていたことにびっくりだわ」


そして何も無かった様に鞄からノートパソコンを取り出して、パソコンの画面じっと見てる白井、てかスペックえぐ、ハードディスク

1TBあるとか。20万はくだらねぞこのノートパソコン、白井て、もしかして金持ちなのか?


「白井一つ聞いていいか?お前は金持ちなのか?」


俺は恐る恐るに白井に問いかける。


「———うんお父様が持ってるマンションが七、八あるぐらいだわ」


白井は少し溜めてから言った、その溜めに悪意を感じるのは俺だけか。


「へぇ、、、。」

俺は少しも羨ましくないかの様に言った。


「てかここが部室になるってどういうことだ?てか探偵部ってなんだ?」


俺は白井に問いかける。


「言葉のままの意味よ鎌瀬くん」


白井は胸のあたりで手を組み長い髪を左耳に掛けて言った。


「白井さん…もしかして俺も」

これは一応の確認だ。俺は震えながら白井に問いかける。


「ええそうよ…そのもしかしてよ」

白井は当たり前かの様な口調で俺に言う。


———俺は思った。


「ですよねー」


俺は窓側を向きながら涙目になっていた。

さよなら俺の省エネ生活。


俺は少し悲しんだあと冷静になり

白井の方を向いた。

白井はまた画面をじっと見つめている。


俺は少し白井の方に近づいて白井が見ているパソコンの画面を見る。

俺はそれを見てクラスの女子が話してることを思い出したのだ。

そうそこには


二年B組の木崎晴美が大切にしていたネックレスが盗まれた事件と


同じB組の田中圭が魔女と名乗る奴に殴られた事件


二つの事件のつぶやきがされているwebページだった。俺は画面左上を見る。

そこには探偵部依頼ページと書いてあった。


おいまさか、白井このクソしょうもない事件を解決するもりか。

こんなのリア充の揉め事だろ。


「そのまさかだわ鎌瀬くん、

依頼が入ったにはしょうがないでしょ。

それより鎌瀬くんに報告もできたし。

行きましょう、鎌瀬くん」

白井はノートパソコンをぱったりと閉じて鞄の中にしまいながら俺に言う。


「どこにだよ」


俺は白井に問いかける。


「依頼者のところよ…あと部室のドアに鍵かけといて」

そう言って白井は俺に部室の鍵を投げる。


いきなり過ぎて慌て鍵をキャッチした俺。


そして俺は部室の鍵一回閉め確認することなくその場を立ち去ろうとしてたとき、


「———鎌瀬くん、本当に省エネなのね…」


白井は大きいため息をした後呼吸を整えて言う。そして呆れた表情を浮かべる。


「うるせぇ……早く行くぞ。」


俺は全く理解していないが、とりあえずバカにされている気がして少し強い口調で言った。


そして白井と俺は旧校舎四階から一階まで降り新校舎の2階まで上がり、階段を上がったすぐそこの教室が依頼者のいる教室だった。


白井はすぐ近くの教室の後ろのドアから入ろうとした。


「———鎌瀬くん、ドアが開いていないわ」


そう言って俺の方を向く。


だが俺はそんな白井に構わず、まっさきに前のドアの方に歩いて行った。


「白井こっちなら空いてるぞ」

俺は白井の方を向きながら、前のドアを指差して言った。


「———あら、そう」


白井は少し何かを考えたあとに言った。


そして俺たちは教室に入る。


そこには依頼者らしき人物がいた。


「貴方が探偵部の人ですか?」

依頼者らしき人物が白井に問いかける。


「ええ、そうよ私が探偵部の部長の白井紗夜よ。そしてここにいる不健康そうな人が鎌瀬海くん」


白井は依頼者対して、まさにテンプレの対応で返す。

てか俺そんなに不健康な顔してるか?


依頼者は目元を一回擦って目をも凄く開いて白井の方を見る。そして驚きつつ依頼者が言う。


「ああ、白雪姫じゃないか!、間近で見るのは初めてだ、サインください!」


白井は少し面倒さそうな顔するが、慣れたようにファンに対する対応する。


「はいこれで良いかしら?」

やっぱり白井は有名人なんだな。

俺は少し白井を見直した。


「すみません、申し遅れました

二年B組結城雅史です」


結城さんは慌て名を名乗る。


俺は窓側へ行き窓の外を見る。

そして白井は息を整えて言う。


「早速依頼の方に移りたいわ」


白井は本題に入ろうとしていた。


そして結城さんは依頼内容を白井に話す。

その内容はまさに例の二つ事件の、


同じB組の田中圭が魔女て名乗る奴に殴られた事件だった。


「その魔女から私を守って欲しいのです」


結城さんは震えながらぼそっと言った。


「———守る…どういうことかしら?」


白井は左手を胸の辺りに置いて右手を顎の下につきながら首を傾げる。


「結城さんもしかして犯行予告でもされてるんですか?魔女とやらに」


俺はすかさず問いかける。


結城さんはズボンのポケットから一枚の紙を取り出して俺に渡す。


そこには書いてあったのは

私は魔女だ。今晩日が隠れ始める頃に貴方を殺しに行く。


という内容だった。


———うん、この茶色のシミなんだ。土か?

紙のはしこには目立つシミがあった。


「それが本当なら四時から五時あったりに犯人が来るって事ね」


「今が3時だからあと一時間てことか?」


結城さん、白井、俺

とで結城さんを魔女から守る作戦を考えていた。


「白井さん、僕が囮になるよ!」

結城さんは震えながらも力強く言った。


「———いいのかしら?貴方一人にしても?」


白井はまたもや首を傾げる。


だが白井は少し間を置いてから、

少しクスッと笑てから言う。


「いいわ、その作戦乗るわ。」


奇妙だ。白井がこんなにすんなり人の意見を認めるか?


「鎌瀬くんちょっといいかしら?」


その瞬間背筋がゾッとした。


「じゃあ結城さんまた会いましょう」


そうして教室のドアを閉める。


そして俺と白井は教室を出て。すぐ近くのところに身を寄せることにした。

犯人が来るまで、、、


「白井なんか秘策でもあるのか?」


俺は奇妙だと思い疑問混じりに問いかける。


「ないわ、でも大体わかったわ」


その瞬間白井の人差し指は俺の唇に触れていた。頬が赤く、心臓の鼓動が早くなっていることが自分でもわかるくらい激しく動いて行った。


「もうすぐ一時間か?」


俺は廊下の真ん中にある時計を見ながら言った。


「ええそうね」


流石の白井でも警戒しているな。


「わぁぁああああああ!!」


その瞬間教室から強烈な悲鳴が鳴り響く。


結城さんらしき悲鳴を聞いた白井と俺は、慌て教室に入る。

そこには黒板の方を指差し恐怖のあまり腰を抜かした結城さんの姿とさっきまでなかった、

黒板の端から端まで白いチョーク塗りつぶされた黒板で俺の視界が埋めつくられていった。


そこには、


「貴様を絶対に許さない」


と書かれていた。















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