第49話 |木の家《アビエスビラ》のビフォーアフター

 着いた日は、疲れていたけど、お風呂に入って眠った。

 私とサリーとヨナが、私の部屋で寝たんだ。

 ヨナは、オリビィエ師匠が狩りに持っていく寝袋で床で寝た。


「床に寝るなんて、大丈夫?」と心配したけど、狩りで遠出をする時に慣れているみたい。


 ジミーとヨシは、サリーの部屋のベッドで眠った。


「おはよう!」


 二人を起こしに行ったら、何故か、ジミーは床で寝ていた。


「あれ? 何故?」


 ジミーは起きてくると、そっと部屋から出た。


「ヨシが夜中に暴れたんだ。あいつは寝相が悪い」


「でも、ちゃんと枕に頭を置いて、寝ていたよ?」


「何周か目なんだろう」


 ああ、それは大変だったね。


「きっと、今日は師匠が部屋を何とかしてくれるよ」


 ヨシは疲れて寝ているので、そのままにしておく。

 

 ジミーが、ポンプで水を満タンにしてくれるので、サリーとヨナが掃除と洗濯をする。


 私は、人数が増えたので、火食い鳥カセウェアリーの世話をして、卵を集める。


 パンだねは昨夜から仕込んでいたので、外の窯で焼く。


「後は、スープと卵でオムレツを作れば良いわね!」


 サリーとヨナが洗濯から帰ってきたので、手伝ってもらう。ジミーはパン焼き窯の見張りだ。


「そろそろ、ヨシを起こしてきて!」


 ヨナに起こしてもらっている間に、オリビィエ師匠とアリエル師匠が起きてきた。


「おはよう! さぁ、朝食にしよう」


 朝食の席で、師匠達が木の家アビエスビラの改築をすると言い出した。


「皆の意見を聞きたい」


 サリーと私は顔を見合わせた。


「やはり、自分の部屋が欲しいです」


 二人でお願いする。


「俺は、ベッドがあればそれで良い」


 あと、アリエル師匠が「お風呂が二つないと困るんじゃない?」という。


 確かにね! 今までは師匠達がお風呂に入ったあと、サリーと一緒に入ったらおしまいだった。


 昨日は、ヨナやヨシやジミーに石鹸の使い方を教えたりしたから、余計に時間がかかったんだ。


「あのう、ここでお世話になって良いのでしょうか? 他の村の子が来たらどうなるのかしら」


 ヨナは、木の家アビエスビラは心地よいけど、弟子の私たちとは違うのに良いのかと遠慮している。


「他の村の子は、またその時に考えるさ。集会所は、十数人は泊まれるし、五歳以下の子はどこかの世話になると思うな」


 三人が首を傾げている。


「アルカディアでは、五歳までは子ども扱いなの。五歳から物見の塔の当番が回ってくるわ」


 三歳で若者小屋に行くのが普通、二歳でも行く子がいる狩人の村とは違うね。


「今日は、木の家アビエスビラの改築をするから、皆に手伝ってもらう。明日からは、午前中は学舎へ通ってもらう」


 ベッドは、集会場の余っているのをマジックバッグに入れて運ぶみたい。


「このままでもできなくはないけど、サリーとミクの私物が無くなったら困るだろ? 一旦は、マジックバッグに入れて、外に出してくれ」


 ヨナ達に手伝って貰って、部屋を空っぽにする。


「屋根裏部屋も使わないと無理だな……ついでに片付けるか!」


 サリーが溜息をつく。衣裳櫃が山積みだし、アリエル師匠の本をやっと運び込んだところだからね。


「どうせなら、不用品を処分しましょう」


 その不用品の殆どは、アリエル師匠の本じゃないかな? 


 ジミーが力仕事を手伝ってくれたし、衣裳櫃をどんどんマジックボックスに入れていく。


 私とサリーの部屋も空っぽになり、天井裏も空っぽだ。


 オリビィエ師匠が集中している。


「あっ!」木の家アビエスビラがグンと広くなった。

 

 一階も、お風呂場を増築する部分が広がった。


 三階は、一部屋増えたし、屋根裏部屋は広がって、二部屋と物置になった。


「女の子を三階にして、男の子は屋根裏部屋かな?」


 ヨナは少し考えてから、口を開く。


「私は、光の魔法を習得したら、バンズ村に戻るつもりです。でも、ヨシとジミーは、もう少し長くいることになるから、便利な方が良いかも」


 お姉ちゃんとして、弟のヨシが楽に暮らせるように考えているんだね。


「そうか、なら、屋根裏部屋はヨナとジミーだな」


 新しくできた部屋にベッドをマジックバックから出していく。


「後は、服だなぁ!」


 衣裳櫃を出して、其々の服を何着か出す。


「まぁ、とても素敵だわ!」


 ヨナは、サリーと真剣に服を選んでいる。樟脳臭いから、洗って干さないとね。


「女物ばかりなのですか?」


 チェニックとズボンなら、ジミーやヨシも着られると思うけど、ちょっと色が鮮やか過ぎるみたい。


「うん? そう言えば、小父様達のもある筈だけど?」


 衣裳櫃を何個も開けて、やっと男の子向きの服を見つけた。


 これを洗っている間に、布団も引っ張り出さないとね!


 何とか、部屋らしくなったのは、お昼前だった。


 屋根裏部屋の半分は物置で、そこにマジックボックスを積み上げる。


「子ども向きの本は、並べておいた方が良いかもね」


 アリエル師匠、本を貸してくれるのはありがたいけど、その準備は丸投げなんだね。


「ミクとジミーは、下で料理して! ヨシは、私たちと本を選ぼう!」


 サリーとヨシとヨナは、物置き部屋の片付けを続け、私とジミーは昼食の用意だ。


「ジミー、野菜を採りに行くわよ!」


 何故、ジミーがこちらか? 力仕事が待っているからだ。


「ここがうちの畑よ! あちらの小麦畑は、アルカディア全体のなの」


 二日留守にしていたから、夏野菜の最後の収穫をしなくちゃね。


「ジミーは、ナスを採って! 私は、きゅうりを採るわ」


 背負籠いっぱいに夏野菜を採る。


「ミクは、やはり上手く作るな」


「うん! これは上手なの」


 採れたてのきゅうりで、サラダを作る。薄く切って、塩を振り、少しだけハチミツとお酢で味付けしただけ。でも、美味しいんだ!


 スープとパンは朝のまま。ナスを薄く切って、フライパンで焼く。それを大きな器に入れて、トマトソース、ナス、トマトソースと何段か重ね、チーズを上にパラパラ。


「ジミー、これをオーブンで焼くから、焦げないように見ていてね!」


 その間に、テーブルに食べ物を運ぶ。


 サラダとスープとパン! 飲み物は、さっぱりしたいからミントティー。


「ミク、焦げそうだ!」


 うん、ちょっときつね色で良い感じ。


「ご飯ですよ!」


 階段の下で呼ぶと、全員集合だ。


 熱々のナスのトマト焼きをテーブルで切り分けて、皿を配る。


「美味しそうだな!」


 オリビィエ師匠が喜んでいる。


「お酒が飲みたくなるメニューね」


 アリエル師匠は、優雅に食べている。


「ミク、これはピザにしても美味しそうね!」


 ああ、そうかも?


「そろそろ、ピザ屋を開かないと、文句が出るぞ」


 昼からは、師匠達は、長老会だそうだ。つまり、長老会が終わったら、ピザが食べたいって気分なんだね。


「では、旗を立てなきゃね!」


 サリーは、お土産にかなりお金を使ったから、また貯めたいようだ。


「ピザ屋? 前に食べた物を売るの?」


 ヨナとヨシは食べたけど、ジミーは食べてない。


「うん、皆も手伝ってくれたら、お小遣いになるよ。昼からは、生地をいっぱい作らなきゃ!」


 生地をこねるのは、ジミーにしてもらう。


 上のトッピングを置いていくのは、ヨシに任せる。


 ヨナは、サリーとレモンを絞って、レモネードを作る。


 今夜のピザ屋は、大勢が来そう!


 

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