第46話 意外な子

 バンズ村で、師匠達は村長さんの家に泊まった。

 私とサリーは、少し窮屈だけど、妹や弟と同じベッドで眠ったよ。


「お姉ちゃん、アルカディアの生活ってどんななの?」

 ベッドでミラに色々と話す。

「師匠達は木の家アビエスビラに住んでいるの。大きな木の中に三階まであるのよ」

 それと、物見の塔についても話したし、木の上の家も驚かれた。


「それと、サリーは風の魔法だけじゃなく、キラービーを飼育してハチミツを取っているの。私も火食い鳥カセウェアリーを飼っているわ」


 ママが「火食い鳥カセウェアリー!」と驚いている。


「それは危険じゃないのか?」

 パパも心配そうだ。


「餌を与えておけば、おとなしいわ。でも、卵を集める時は、自分に守護魔法を掛けないと駄目なの」


 ミラとバリーが「お姉ちゃん、すごい!」と感心してくれた。へへへ、嬉しい!


「それと、サリーはガラス工芸も師匠について修業しているの。私は、薬瓶やガラスの容器ぐらいだけどね」


 皆が、今日持ってきたガラス瓶を私が作ったと知って、褒めてくれた。


「アルカディアの子は、機織り、染色、畜産、木工細工、鍛治、錬金術などを、スキルとは関係なしに学んでいるわ」


 ミラは、機織りに興味がありそう。ここでも機織りをしていたお婆さんがいたけど、亡くなってからは行商人が来るまで、我慢するしかないのだ。


「俺は、鍛治かな? 斧も何回もぶつけたら、キレが悪くなるんだ。それに、ママとミラの鏃が作れたら便利だと思う」


 パパは、木工細工に興味があるみたい。ママは、竜の討伐だね!


 やはりアルカディアから、バンス村まで来たので、疲れていたみたい。いつの間にか眠っていた。


 この世界に転生してから、朝は早い。蝋燭代を節約する為に、日が昇ったら起き、夜は早く眠るからね。

 宵っぱりの朝寝坊のアリエル師匠は、その例外だよ。


 朝は、簡単にスープと昨日作って寝かせていたパンだねを焼く。

 ママが肉を焼いているから、これでおしまい。


 皆で食べると、シンプルな食事も美味しいね。


「バリー、凄く食べるのね!」


 アルカディアに行く前も、バリーは沢山食べていたけど、朝から山盛りの肉をむしゃむしゃ食べている。


「狩りを頑張らないといけないわ」


 ママが張り切っているけど、今朝は狩りに行くのが遅くなりそう。


「おおい! 集会場に来てくれ!」


 外で叫ぶ声がする。食器をザッと片付けて、全員で集会所に向かう。


 村人全員が集まると思っていたけど、老化が始まった年寄りや、森歩きにも行っていない子どもはいない。

 ワンナ婆さんの所に行っているのだろう。


「老化を遅くできないのかな?」

 サリーを見つけて話す。

「どうかなぁ? それより、ヨナとヨシが来るんでしょ! 木の家アビエスビラに一緒に住むのかしら?」


「うん、一緒の方がヨナも心強いんじゃないかな?」


 サリーが少し考えている。


「ヨシは男の子だから、同じ部屋にはできないわね」


 それは、そうだけど。


「それなら、サリーと私が同じ部屋にして、ヨナとヨシが一緒の部屋にしたら良いわ」


 少し窮屈だけど、家の子ども用ベッドより木の家アビエスビラのベッドの方が大きい。サリーと二人なら寝られる。


「そうか、そうするしかないのよね」


 サリーは、自分の部屋、自分のベッドを貰ったのを喜んでいたからね。私も、本音を言うと、少しだけ残念。


 そんな話をしているうちに、来る人は来た。来ない人は、来ていないけど、村長さんは「静かにしてくれ!」と集会を始める。


「アルカディアでは、光の魔法を皆さんに習得して欲しいと考えています。バンス村では、二人の子供がアルカディアに来る事を選びました」


 小さな村だから、全員がヨナとヨシだと知っているみたい。


「本人がそれを望むなら、問題ないだろう」


 大人の意見は、それで決まっているみたい。

 ヨナとヨシの両親は、少し不安そうな顔をしているけど、反対している感じじゃない。


 これで集会は終わりかな? と思った時、ジミーが声を上げた。


「俺も行きたい!」


 ジミーの両親が慌てている。昨夜のうちに話していなかったのだ。ジミーらしいね。


「こちらは大歓迎だが、親御さんと話し合った方が良いな」


 オリビィエ師匠が、慌てて引き留めている両親と頑固に口を閉じているジミーを見て、苦笑している。


「ジミー、貴方は若者小屋に行って、狩りをするのが目標だと思っていたわ」


 ジミーに話しかけると、ニパッと笑う。


「アルカディアで修業して、竜を狩りたいんだ」


 ああ、やはり狩り好きジミーらしいね。


「ふふふ、竜を討伐するのは、大変だよ。光の魔法を習得するのは、半年から一年でできるけどね」


 オリビィエ師匠に覚悟はあるのかと問われ「はい!」とジミーは答える。


 集会は終わったけど、ヨシの件は神父さんが前の村から来てから決定することになった。

 その間、ジミーは親を説得しなきゃいけないのだけど、あの子は口が重い。


「俺は行きたい!」これだけだからね。

 でも、ジミーの両親は、慣れているみたい。

「お前が決めたのなら、好きにすれば良い」


 まぁ、そうなるよね!


 昼前に、前のラトミ村から神父さんがロバに乗ってやってきた。


「ヨシがアルカディアへ? まぁ、それも良いかもしれないな」


 教会で修業する気になれば、それは、それで嬉しいって感じだ。


「神父さん、ラトミ村は何人が来ることになりましたか?」


 アリエル師匠の問いに、神父さんの眉が下がる。


「若者小屋の子は、自分たちはもう習うことはないと言う態度だった。それに大人達も積極的ではない」


 そうか! 竜で釣れば良かったのにね!


 神父さんは、アルカディアの護衛と共に他の村も周る。私達は、ヨナとヨシとジミーと一緒にアルカディアへ先に戻ることにした。

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