第19話 守護魔法を覚えよう

 火食い鳥カセウェアリーの世話の為に早起きする。

 サリーはキラービーの為に守護魔法の掛かった柵を開けなきゃいけないから、こちらも早起きだよ。


 パンを石窯に入れてから、火食い鳥カセウェアリーキラービーの世話だ。


「ミク、まだ私は2つ同時には守護魔法を掛けられないの」

 サリーが申し訳なさそうに言うけど、そんなのとんでも無いよ!

「良いの! 待っているから!」


 サリーは自分に守護魔法を掛けて、内側の柵の中に素早く入る。

 そして、外側の柵を開けて、素早く中の柵の中に入った。

「まだキラービーが起きてなくて良かったわ」

 さぁ、今度は私に掛けようとしたら、オリビィエ師匠がやって来た。


「おはよう! あれっ? もしかしてサリーが守護魔法を掛けるつもりだったのかい?」

 折角、起きて来て貰ったのに、悪いかな?

「いや、サリーが掛けてくれるなら、それで良いのだけど、ミクも練習してみないか?」


 それは、私も早く掛けれるようになりたい。

「はい!」

 サリーは、掃除と洗濯とパンが焼けたら石窯から出しておくと、木の家アビエスビラに戻る。


「光の魔法を感じる事はできるんだよね?」

 それはできるから、頷く。

「なら、それを自分の中で強くして、身体の周りを囲む感じなんだけど……やってみよう!」

 オリビィエ師匠の手を持って、そこから光の魔法が自分の手に流れ込むのは、何となく感じる。


「うん、光の魔法を感じているね? それを身体に循環させて強化してごらん。ううんと、手のひらの中の種を育てる感じで、光を育てる感じでも良いかも?」

 オリビィエ師匠、それは違う魔法じゃないかな? でも、種を育てるのは慣れている。

 受け取った光の魔法を、育てる感じで、身体全体に巡らせる。

「おっ、その調子だ!」

 でも、守護魔法は掛けられなかった。

「かなり良いところまできているから、練習すれば掛けられるようになるさ!」

 今朝は、オリビィエ師匠に掛けて貰って、火食い鳥カセウェアリーの世話をする。


 餌箱に骨の砕いたのと、野菜のクズを入れる。芋の皮も凄い勢いで啄んでいるから、大丈夫みたい。

 水も綺麗なのに入れ替える。


キラービーの死骸もやったら良いぞ」

 うん、そうだけど、少し苦手だ。

 鶏小屋の外に出てから、マジックボックスの中から1匹出して、中に投げ入れる。

「わぁ!」凄い勢いで食べているよ。

 その隙に、小屋の中の巣箱から卵を集めるけど、3個しかない。


 がっかりして、外に出たら、師匠に笑われた。

「3個しかなかったのか? 誰かサボったな。まぁ、こんな事もあるさ。守護魔法を掛けられるようになるまでは、朝に掛けてあげるよ」

 ありがたいけど、師匠に早起きさせるのは申し訳ない。早く覚えたい!


 朝は、スープを作るけど、夜のうちに出汁は取ってあるから、野菜を刻んで入れるだけだ。

 今朝は玉ねぎスープだ。これを皿についだ後にチーズを削って入れるとトロトロに溶けて美味しい。

 パンは、サリーが焼きたてを持って来てくれた。

「ベルディさんが、明日のパンを頼みに来たわ」

 小麦と代金を貰ってくれたみたい。

「へぇ、ベルディさんは初めてだね!」

 よく、乳やチーズは買いに行くけど、パンを買ってくれた事はなかった。

「そろそろ、夏の牧場の準備をするから、パンを持って行くとか言っていたわ」

 そうか、柵を用意しなきゃいけないものね。


 卵を1個使って、スクランブルエッグにするよ! それに、肉の燻製の焼いたの!

「やはり、卵は美味しいわね!」

 残りは4個ある。夜に2個使うとしても、2個は売ろうかな?

「師匠、卵を集会場で売っても良いですか? 幾らぐらいにしたらいいでしょう?」

 師匠はニヤリと笑う。

「卵は、料理も簡単だから、狩人達にも人気なんだ。銅貨8枚で売れると思うぞ」

 つまりチーズと一緒だね! 乳は子どもがいる家以外はあまり買わないけど、チーズは酒のアテになるから人気なのだ。


 学舎に行く前に、集会場に卵を2個置いておく。

『卵1個、銅貨8枚』

 籠の前に書いた紙を貼っておく。


「売れたら良いな!」

 サリーと学舎に行くけど、アルカディアでは集会場でこうやって物を売るみたい。

 ベルディさんの乳やチーズもほぼこのやり方だ。

 乳は、柄杓が置いてあって、それに1杯が銅貨4枚だ。

 チーズは葉っぱに包んであるのが銅貨8枚。

 野菜もよく置いてある。芋が多い感じ。

 紙、陶器、ガラス製品、金属製品、布は、直接買いに行く感じなんだ。


「今日は魔法実技の日なんだよね!」

 サリーは着々と風と光の魔法を学んでいる。

 私は、土の初歩はなんとかって感じかな? 頑張らなきゃ!


 休憩時間に、私とサリーは少しだけハチミツを溶かしたお茶を水筒に入れて来た。

「甘くて美味しいね!」

 こっそり話していたつもりだけど、甘い物が好きなエレグレースに気づかれた。

木の家アビエスビラの奥でキラービーを飼い始めたのよね! ハチミツはいつから売るの?」

 森の人エルフがハチミツ好きなのは本当だね。

 だって、美味しいもの!


「昨日、巣箱に移したばかりだから、1月はハチミツを集めさせるとアリエル師匠は言っていたわ」

 エレグレースは、1月後にハチミツを買いたいと迫って来た。

「お酒を作るかも?」

 お茶を飲んでいたメンター・マグスが話を聞きつけた。

ハチミツ酒ミードを作るのか?」

 メンター・マグスはお酒が好きみたい。

「ええっ! お酒ならワインがあるのに!」

 甘党のエレグレースが不満そうだ。

「多分、全部はお酒にしないと思うわ」

 アリエル師匠もハチミツが好きだからね。


 なんて呑気な話をしていたが、休憩が終わったら、魔法実技だ。

 光の魔法を感じて、渡せないのは私だけになった。渡せないって事は、それを出さない。つまり守護魔法の前で躓いているんだよね。


 居残りの私は、メンター・マグスと対面授業なのだ。


「ミクは火食い鳥カセウェアリーを飼うのか? 卵は皆が欲しがっているから、良い事だと思う」

 昨日の今日なのに、よく知っているね。

 驚いていたら、笑われた。

「何日も前から、鶏小屋や養蜂箱が置いてあったからな。それにしても、火食い鳥カセウェアリーは扱いが難しいから、守護魔法を掛けられないと世話が大変だろう」

 そうなんだよね!

「早く掛けられるようになりたいです!」

 こんな時、光の魔法のスキル持ちのリュミエールが羨ましいよ。


「なら、頑張ろう!」

 メンター・マグスの手から光の魔法が私の手にと流し入れられる。

「光の魔法を感じます」

 メンター・マグスが頷く。

「その受け取った魔法を私に流してみなさい」

 これが難しいのだ。確かに手には光の魔法がある。

 それをどうやって、メンター・マグスに返すのか?

「ミク? すぐに返さないようなら、身体の中で循環させても良いのだよ。そして、増やしてから、身体から溢れる感じで戻してくれたら良い」

 なるほど! 朝、オリビィエ師匠が教えてくれた遣り方に似ている。


 手で受け取った光の魔法を身体に巡らせる。どんどん広がって、身体中に光の魔法が満ちた。

「それを押し出す感じで、守護魔法を掛けるのだ」

 蔦を作る感じで、光の魔法を押し出す。

「ミク……それは光の攻撃魔法、光の鞭ライトウィップスだよ」

 パッとメンター・マグスによって解除されたけどね。


「蔦を作るイメージで掛けたのです」

 メンター・マグスは、植物育成の魔法はあまり知らないみたい。

「一度、見せてくれないか?」と言うので、学舎の外に出て、ポシェットから取り出した木苺を持って、蔦を投げる!

 木と木の間の橋に絡まったから、そこに飛んでいく。


「なるほどな! ミクは土の魔法だと思っていたが、植物育成の方が上手いな」

 学舎に戻って、岩に生える苔のイメージで、自分の周りを囲んでみろと言われた。


「私が岩で、苔が光の守護魔法? つまり苔で身を護る感じ?」

 緑の苔に覆われるのって、あまり防衛力は強くなさそうだけど、やってみる。

「ふん!」と身体の周りに苔を生やす感じで、光の魔法を出す。


「ミク……何か光が針のように出ているが……守護魔法とは言えないな」

 がっかり! 苔はやめておこう。髪の毛も逆立っているよ。

 学舎の皆に笑われちゃった!


「何か他のイメージの方が良さそうだ」

 メンター・マグスも笑いを噛み殺している。

 サリーは、今は火の魔法に挑戦しているけど、こちらにやってきた。

「ミク、いい所まではきていると思うの。頑張りましょう!」

 うん、優しいね!

「そうだ、サリーがミクに光の魔法を流してごらん」

 

 サリーが私の手を取って、光の魔法を流す。

「ミク、わかる?」

「うん! わかるけど……これを身体に巡らせて……ここからがわからないの」

 守護魔法を掛けられないと火食い鳥カセウェアリーの世話ができない。それにキラービーの世話をするサリーの手伝いもできないのだ。

 養蜂箱の周りに花が咲く果物の木を植えたい。キラービーが蜜を集めるし、受粉もしてくれるからね。


 守護魔法、守護魔法、そうだ! 森に出迎えにきたリュミエールが神父さんに掛けた時、薄い緑色の膜に包まれた感じがしたんだ。

「守護魔法!」

 そのイメージを思い出して、自分の周りに守護魔法を掛けた。


「おお、ミク、守護魔法が……ああ、もっとキープする練習をしなくてはな!」

 掛けられたのは一瞬だった。

「ミク、練習すれば長い時間掛けられるようになるわ」

 ふぅ、何とか第一歩、進めた気がするよ。

 

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