第19話 成長の夏
私とサリーが来年の春にはアルカディアに行くと聞いたヨハン爺さんは、凄く張り切って鍛え始めた。
「アルカディアの連中に馬鹿にされないようにしないとな!」
いや、そんなの無理だよ。と諦めモードの私なりに頑張って、蔦を使わなくてもなんとか飛べるようになった。
サリーは、弓もかなり上手い。風を使っているのかも? 私? まぁ、下手だけど、蛙ぐらいは倒したよ。水筒ゲットだよ!
生まれて二度目の夏、ひまわりをいっぱい植えたよ。
そして、最後の夏になるから、村の子ども達といっぱい遊ぶし、教えなくてはいけない事もある。
「ヨシだけじゃなく、私にも文字を教えて!」
サリーに言われて、それならとワンナ婆さんの家で教えようと思ったら、雨の日に森歩き組と親と狩り組に教えることになった。
ヨハン爺さん達は、もう自分の家に戻っているから、私の家よりは広いと思ったけど、人数が増えたからね。
集会場で、文字と数字の先生だよ。前世では数日しか学校に通えなかったのにさ。
マックやヨナやジミーやケンとミンも参加する。懐かしいよ! 村では会うけど、そんなに話したりしないからね。
私は、パパに頼んで板を何枚も作って貰った。
2枚は大きな板で、集会場の壁に釘で打ちつけて貰ったよ。
そこには、文字と数字を大きく書く。あと、母音と子音もね! これ大事だから!
もう1枚は、簡単な単語を書いて、練習する為の板だ。
前世の黒板的な物だね。ナイフで削るけど、名前や矢や槍や斧、小麦、芋、鍋とか生活に必要な単語を書いてある。
「この文字を読んでいくわよ! 真似をしてね!」
先ずは、読み方から始める。サリーは少しは文字を知っているから、簡単そう。
書くのは、難しいみたい。 皆、枝を持って字を書くのは初めてだし、鉛筆とノートみたいにはいかないからね。
でも、親が私に指導代を払っているのを知っているから、必死だよ。
魔物を倒して得たお金だからね。ぼんやりとしている子はいない。
妹と弟のミラとバリー、サリーの弟のベンにも勉強させるよ。
算数は、簡単な計算だけど、弓使いは計算が早いね。
「朝、弓筒の中に18本あったけど、10本射て、2本は失ってしまった。今あるのは何本?」
ジミーもすぐに「16本!」と答えたよ。
「今、30枚銅貨を持っていて、1升7銅貨の小麦粉は幾ら買えるか?」
これも「4升!」と全員が即答だ。
なのに数字で「4+5=?」とか板に書くと、頭を抱え込んじゃうんだ。何故?
「鳥が4羽、そこに5羽飛んできた。何羽いる?」と聞くと「9羽」と即答なのにね!
村長さんは、様子を見にきて、爆笑していたよ。
「ミク、大人にも文字を教えてくれ!」
エバー村の大人は、全員字が書けるから、村長さんも少し考え直したみたい。
「それは、ヨシにしてもらうわ!」
ヨシは、森の
神父さんに去年借りた、エスティーリョ教の子供用教典も暗記している。
「そうだな! ミクには、菜園の作り方も教えて欲しいからな」
やれやれ! でも、ミラとバリーには教え込むつもり。来年の夏には、もういないのだから。
芋の植え方は、すぐにミラとバリーも覚えた。
「本当は、芋は3ヶ月以上しないと収穫できないのよ」
これも言っておかないと、失敗だと思うかもしれないからね。
「玉ねぎ、キャベツは、苗を作ってから植えるの」
やって見せ、ミラとバリーにもやらせるけど、来年まで覚えているかな?
パパに木の板をいっぱい作って貰って、植え方を書いた。
「トマト、ナスは同じ場所に植えたら、育たないから、覚えておかないといけない」
文字の上に、トマトの絵を描いているから、探しやすいだろう。
でも、こんな事を書いたりするのは、雨の日だよ。小雨なら森歩きもするけど、ザーザー雨の日は、ヨハン爺さんも休みたいみたい。
それと、ミラとバリーともいっぱい遊ぶ。あやとりだけでなく、あっち向いてホイ! とかもね。
子ども用のベッドが2つになって、大人のベッドの下に1つは入れているけど、部屋が狭くなっている。
だから、走り回らないで遊べるのを考えなきゃね。
ナイフ使いの練習にもなるから、燻製のチップを作ったりも暇つぶしには良いね。
ああ、そうだ! 春の行商人から小麦を買えたから、ガラス瓶も買って、天然酵母パンも作れるようになったよ。
でも、暖炉だけでは、やはり限界があるから、小屋の外に石窯をパパに作って貰った。
チーズがあれば、ピザが作れそうだけど、もうすぐエバー村の住人は引っ越すからね。
でも、石窯ができて、柔らかいパン(前世のと比べたら固いけど)が焼けるようになったから、小麦粉と手間代の銅貨3枚で売って小遣いを稼ぐ。薪も使うからね!
春は、小麦の値段が少し安くなったけど、元よりは高かった。でも、エバー村の小麦をこれからは狩人の村で売ると決まったから、少しは安くなれば良いな。
秋には、綺麗な生地を手に入れたいから、私はこうやってお金を少しずつ貯めている。
燻製は、他の家もウロを取ってきたから、そんなには儲からない。
今は、天然酵母と石窯のパンだね!
「塩を取りにスミナ山に行くわよ!」
ママは張り切っているけど、遠いよ!
私は、蛙の皮で作った水筒を肩からぶら下げ、籠を背負って、村の門に集合する。
ミラとバリーは、ヨハン爺さんと森歩きだ。
「来年には、お前達も塩を取りに行くのだから、木と木の移動を早くしないといけないぞ!」
そう、この子達はもう移動できるようになったんだよ。
「ルミ、ミクとサリーの面倒を見てくれ!」
ママが遅れそうな私達の護衛みたい。
「ミク、今日は美味しそうな植物を見ても、脚を止めないでね。夜までに帰りたいから」
先行する人達は、あっと言う間に見えなくなったよ。
「先に行って、岩塩を籠に積んでおくのよ!」
後ろから行く私達の籠も持って行ったのは、そう言う意味なんだね。
今日は、私もサリーも蔓や風を使って、速さ優先で進むけど、ママの後を追うのに必死だよ。
それに、スミナ山に近くなったら、木が少なくなってきた。
「ここからは歩きなのよ」
スチャッと地面におりて、少し休憩だ。サリーと私は水を飲む。
「ママも飲んだら?」
普段は水もあまり飲まないのかな?
「ありがとう!」と受け取って少し飲むだけだ。
そこから、山登りだけど、ママは木と木の要領で、岩と岩を飛んで進む。
私とサリーも頑張って登るよ!
「あそこに鹿がいるわ! 塩場にも魔物が集まるのよ」
ママが矢を構える前に、他の狩人が鹿を仕留めた。
「美味しそうな植物も採っちゃ駄目って言ったのに!」
つい文句を言っちゃうよ。
「解体したら、そんなに重くは無いわ!」
苦しい言い訳だね。
「それに、お昼に食べたら良いのよ!」
塩は周りにいっぱいあるし、それは美味しいかも? お腹がグーっと鳴っちゃった。
岩塩はもう私とサリーの籠にいっぱいだった。
「肉を食べたら、帰りなさい!」
他の人は、これから岩塩を掘って、籠に入れるみたい。
「美味しいね!」
木の枝に刺した肉を貰って、サリーと2人並んで座って食べる。
「ミク、サリー、あれがアルカディアだよ!」
パパも枝の肉を食べながら、遠くに見える塔を指差して教えてくれた。
「村とは違うのね!」
森の木に埋まってて、全体は分からないけど、高い塔は見えた。
「ああ、でも村長さんは、人間の町とも違うと言っていたな。大きな木が村の中にも生えているそうだ」
ふうん、どんな感じなのかな? 塔を見ながら肉を食べて、水を飲んだら、私とサリーはママと帰る。
「重たい!」
行きは、なんとかママについていけたけど、帰りは岩塩が籠に入っているので、飛びにくい。
「ゆっくり帰るつもりだけど、無理だったら笛を吹いて止めてね」
ママのゆっくりは、私のかなり速いと同じだよ。
スミナ山を降りて、木と木を飛んで移動していたら、ケンやミンに追い越された。
そこからは、どんどん追い越されて行ったよ。
子どもや若者が行った後に、大人達がやってきた。
いつもよりも大きな籠を背負った大人達も先に行ったけど、パパは一緒に行こうと残った。
なんとか夕方には村に着いた。夏の日の入りが遅くて良かったよ。ゼィゼィ!
「お帰り!」
ミラとバリーに出迎えて貰う。
「ただいま!」
はぁ、籠を置いたら、くたくたと床に座っちゃった。
「ミク、頑張ったな!」
パパとママに褒めて貰ったけど、ドンケツだったよ。
こうして、私の村での最後の夏は過ぎていった。
背はぐんぐんと伸びて、サリーに追いついたよ! これ、とっても嬉しかった。
それと、ヨハン爺さんの森歩きを卒業した。木と木を飛ぶのを特訓されていた時は、早く卒業したいと思っていたのに、なんだか寂しい。
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