第9話 玉ねぎとにんじんとキャベツ
芋を収穫したら、玉ねぎとキャベツの苗を植える前に、灰と腐葉土をパパとママに手伝って貰って混ぜ込んで貰う。
「畝を作ってくれたら、後は私がするわ」
間隔をあけながら、玉ねぎとキャベツの苗を植えていく。
1畝には人参の種を撒くつもりだ。
「芋、玉ねぎ、人参、キャベツ! 基礎野菜があれば、料理の幅が広がるよ!」
ただ、香辛料はないのがネックだけど、ハーブを探したい。
だから、私は今日は手仕事持参で、ワンナ婆さんの家に行く。
靴を作らないと、ヨハン爺さんに森へ連れて行って貰えないからね。
いつも通り、若者小屋と2軒の菜園の水遣りをしてワンナ婆さんの家に行く。
「あれっ? 芋は収穫されているけど?」
まぁ、家の芋も収穫したのだから、不思議ではない。私は、明日ぐらいかな? と思っていただけだよ。
「ワンナ婆さん、次の芋は?」
ニンマリと笑って、戸棚から種の袋を出して来た。
「芋ばっかりでは飽きるからね。まぁ、芋の潰したのは離乳食にもなるから、役には立つけどさ」
まぁね! 何の種があるのか、見てみると、私が持っていないアスパラがあった。
「えええ、こんなの無かったわ!」
「先に買ったからね。でも、アスパラガスは夏の野菜だから、人参と玉ねぎかな?」
「ワンナ婆さん、かぶとキャベツは?」
少し鼻にシワを寄せる。
「かぶとキャベツは嫌いだよ」
まぁ、ワンナ婆さんの菜園なんだから、自分の好きな野菜を植えたら良い。
「玉ねぎは、苗を作ってから植えるわ。人参は種を撒くわね!」
人参は生で齧るのが好きみたいだから、2本の畝に撒く。
その後は、底と靴の部分を縫い付けるので一日終わった。
「ミクは器用だね。それに植物を育てるスキルも便利だよ」
お昼は、芋を湯がいて潰したのだった。赤ちゃんのマナには良いかもね。美味しそうにパクパク食べている。
サリーと私は、少し不満だけどさ。
「これなら、丸ごとの芋の方が食べた感じがするわ」
まぁ、そのとおりだよ。それに、芋1個分より少ない気がする。ケチッているんじゃないの?
「土が乾いたら、ヨハン爺さんに森に連れて行って貰うつもりよ!」
あっ、聞くの忘れていたけど、お弁当とかは無いのかな?
「お昼はどうなるのかな?」
サリーに呆れられた。
「狩人達は、お昼は食べないわ。だから、ヨハン爺さんと一緒に森に行ったら、食べられないと思うわよ」
えええ、それは嫌だよ! 転生してから、食べたいだけ食べられるのが楽しみなんだもん! 前は体調が悪い時は、水すら飲むのが辛かった。
点滴でなんとか生きていた時間が長かったから、芋だろうが、お粥だろうが、食べるのが楽しみなんだ。
「焼いた芋を持って行ったら駄目かしら?」
サリーに呆れられたけど、持って行こう!
「ははは、ヨハン爺さんが驚く顔が目に浮かぶよ」
ワンナ婆さんも呆れたみたい。
「駄目かなぁ?」
少し考えて、笑う。
「いや、小物は狩るかもしれないが、基本は食べられる植物採取や薪拾いだからね。でも、これからの季節は、水は持って行った方が良いよ」
水筒というか、皮袋は1個あるけど、ママが狩りに持って行っている。
「私のを一緒に飲んだら良いよ。芋を2つ持ってきて!」
サリーと協力することにした。家には芋がどっさりあるからね!
人参の芽が出たけど、少し間引かないといけない。
「ミク、芽を引っこ抜くのか?」
パパが心配そうだけど、ちょっとびっしり撒きすぎたのか、間引く必要があるのかも?
「このままじゃあ、小さな人参しか取れないわ」
ママも首を捻っている。
「人参ってこのくらいじゃないの?」
指一本分が、普通の人参なの? そう言えば、ワンナ婆さんも生で食べるのが好きだと言っていたね。
でも、もう少し大きな人参が欲しいから、少し間引くよ。
間引いた芽は、スープに入れる予定!
「ママ、パパ、骨を貰ってきてね!」
変な顔をしたけど、頷いた。この前のフライドポテトが美味しかったから、料理スキル持ちの私の言う事を信頼することにしたみたい。
若者小屋の芋も、もう収穫できる。サムに伝えておく。
「もう芋は良いんじゃないかな? 焼き芋は美味しいし、簡単だけど、かなり溜まっているんだ」
だろうね!
「なら、もう植えなくて良いかな?」
サムは肩をすくめているけど、村長さんに聞いてみよう。
村長さんの家に行ったら、狩りに出かけた後だった。
まぁ、夕方に聞くよ!
ワンナ婆さんの菜園の人参の芽は、少な目に間引く。小さな人参を生で齧るのが好きみたいだからね。
この日は、サリーと村を走り回ったり、野苺を摘んで食べたり、籠に入れたりしたよ。ミンとケンも手伝ってくれた。まだマナは、下の野苺しか取れないし、籠には入れずに口に入れちゃうから、ワンナ婆さんの家に連れて行った。
「もっと野苺が食べたい!」
わかるけど、あまりいっぱい食べたら、お腹が緩くなるんだ。ははは、実感が篭っているでしょう?
ジミーがヨハン爺さんと薪を背負って帰ってきた。
「ミク、これをやる」
相変わらず口は重いけど、ジミーは良い奴だよ。
「これって、無患子?」
うん! と頷く。
「これも栽培できるかしら?」
できたら、嬉しい! 森にちょこっと生えているだけだからね。
「これを菜園に植えるのか?」
ヨハン爺さんは、食えもしないのにと難しい顔だ。
「村の外でも良いのだけど……これは魔物は食べないでしょう?」
「苦いからな! うん、村の近くにあれば、婆さんに取って来いと言われたら楽だな。ミク、植える間の護衛をしてやるぞ!」
全部取られたら、植える意味がないけど、半分は私にくれると約束してくれた。
畝もヨハン爺さんが見張っている間に、ジミーが作ってくれたよ。
半分は私、後の半分はヨハン爺さんとジミーが取る事になった。
「後で、村長に言っておくよ」
他の村人が勝手に取ったら困るからね。少しなら平気だけどさ。
「そろそろ、森の中も土が乾いて来たぞ! 近場から森歩きしよう」
ヨハン爺さんの言葉に、サリーと一緒に行く事に決めた。
ミンとケンも行きたそうな顔をしていたけど、ヨハン爺さんは「半年過ぎないと駄目だ」と断った。
私って、半年ギリ過ぎてないんじゃない? 12月生まれで、今は多分5月だから。それにジミーなんか、春になった途端から行っていたよね?
まぁ、ヨハン爺さんなりの判断基準があるんだろう。
それか、無患子の栽培がよほど嬉しかったのかもね? 奥さんに「採ってきて!」と言われても、なかなか見つからないのかも。
無患子は、石垣の外なので水遣りはできないけど、土に手をついて「大きくなってね!」と通る度に、念じる事にする。
「パパ、ママ! 明日からは、ヨハン爺さんが森に連れて行ってくれるんだって!」
パパは、抱き上げで喜んでくれた。
「ミクも一人前だな!」
ははは、狩人にはならないけどね。
「あっ、村長さんに話があるんだ!」
大人の狩人達が、大きな獲物を持って帰って来た。
これから、解体して、肉を分配するのだ。
「村長さん、ちょっと良いですか?」
1人抜けても平気そうだから、村長さんは立ち止まった。
「ミク、何かな?」
「若者小屋の前の菜園、サムが芋はもういらないと言ったのです。で、どうしたら良いのかなと思って」
少し考えて、頷く。
「もう3回収穫したのだな。なら、十分かも? また秋になったら、冬の保存用の芋を作ってやって欲しい」
やっぱりね! なら、少し頼んでも良いかな?
「夏の間は、菜園は作らなくて良いのですね。少し貸して貰っても良いでしょうか? 野菜を作りたいの」
村長さんは、腕を組んで考えている。
「良いけど、ミクだけ特別に使ったら、他の村の連中が文句を言いそうだから、半分は若者小屋にやってくれないか?」
えええ、種は靴を買うのを諦めて買ったんだよ!
「種はこちら持ちなのに、半分はないです! せめて3分の1!」
村長さんは「畝は作らせるから、半分やってくれないか?」と粘る。
村長さんと話し合っているのに気づいたパパとママがやって来た。
「何を話しているんだ?」
私が説明すると、ママが笑う。
「若者小屋の連中に野菜なんか料理できないよ!」
それって、数年前まで若者小屋にいたママが言うと、実感が篭っているよね。
「でも、野菜も食べないと、肌が荒れているじゃないか」
ふぅ、と2人が溜息をついた。
「それは、若者はニキビがあるから」
村長さんは、少し思い出す必要がありそう。
「なぁ、ミクは料理スキルも持っていたよな。夕食に簡単なスープを作ってくれたら、3分の1で良いよ」
う〜ん、考えちゃう。だって、若者小屋って汚部屋なんだもん。
「うちの子をあんな汚い所にはやれない! 私がいた頃は、もう少し綺麗だったわ」
確かに、ママは料理と裁縫は苦手だけど、掃除はちゃんとしているもの。
「そうなんだよ! それも困っている。夏の交流会もあるのに、あんな様では村の恥になるぞ」
村長さん、それは若者小屋の人達に言ってよ!
村長さんは、獲物を解体している若者小屋の人達の所に向かって行く。
「ちょっと手を止めて、話を聞いてくれ!」
ああん? って態度で、解体の手を止めた。
「何ですか?」
サムが聞き役みたい。
「夏には、若者小屋の交流会があるのは知っているな?」
全員が嬉しそうに頷く。だって、同じ村の者同士の男女の結婚は駄目だ! って親に叩き込まれているからね。
「それで、あの汚い小屋に他の村の若者を寝させるのか?」
明日は、どうやら大掃除をしなくてはいけないみたいだね! ブツブツ、文句を言っているけど、村長さんの命令だから従わなきゃ!
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