第6話 植物成長スキルって実は凄い?
芋を植えてから、2日目、芽が出たよ!
「大きくなぁれ! 大きくなぁれ! 芋よ、大きくなぁれ!」
歌いながら、水を柄杓で掛ける。
ワンダ婆さんの家の前の芋も芽を出した。水をやってから、家に入る。
「やはり、ミクに頼んで良かったよ。これなら、芋を3回は収穫できそうだね」
芋ばかりじゃなく、他の野菜も食べたい。
「他の種は無いの?」
ワンダ婆さんも、これなら他の野菜も収穫できそうだと考える。
「いつもは、簡単な芋しか植えないけど、ミクなら上手く育てられそうだね。行商人が来たら、種を買ってみようか」
うん、それが良いと思う。
色々な野菜が食べたいし、豆やとうもろこしも欲しいからね。
水遣りが終わったら、サリーとミンとケンと遊ぶ。あっち向いてホイ! はかなりブームになっている。簡単だし、笑えるからね。
春になったから、村の中ならワンダ婆さんの家の中に居なくても良くなった。
でも、まだ寒いから、少しだけ外を走り回ったら、ワンダ婆さんの家で休憩する。
「走れる! 嬉しい!」
前世では、走るのは禁止だった。でも、今度は丈夫な身体だから、平気! まだ赤ちゃんっぽいミンとケンと同じぐらいの速さでしか走れないけど、そんなの関係ないよ。いや、少し悔しいけどさ。
サリーも、春になったのが嬉しいのか、一緒に村の中を走る。
サリーと私は、同じぐらいのスピードだけど、サリーは全力じゃないからね。軽く走っている感じ。
気遣いのできるサリーなら、人間の町でも大丈夫だと思う。赤毛は人間にも多い髪色だから、目立たないんじゃないかな?
「ミクの家とワンダ婆さんの家の菜園は、もう葉っぱが茂っているわ」
そう、他の菜園と比べると一目瞭然だよ。
「私は、植物を育てるスキルがあるから」
サリーが気づくぐらいだから、他の大人も気づく。
「家の菜園の管理もしてくれないか?」
ワンダ婆さんの家にお迎えの時に、サリーのパパから頼まれたよ。
「採れた芋の4分の1をあげるから、水遣りを頼む」
それは、嬉しい! パパとママも了承したから、明日からは、家とサリーの家とワンダ婆さんの家の菜園の水遣りだ。
「ふん、ふん、ふん! ふん、ふん、ふん!」
ご機嫌で、大きくなぁれと唱えながら、水遣りを3軒分してから、ワンダ婆さんの家に行く。
でも、サリーの家だけではなくなった。
だって、植えてから3週間で芋が収穫できたからね。
「この芋を植えるのは勿体ないけど、少し切って植えましょう。早く行商人が来たら良いのだけど……」
畝は、パパとママに作って貰うけど、新芋は嬉しい!
小さな村だから、全員に知られた。
「うちの菜園の水遣りもして欲しい!」
「いや、うちはマックとケンが一緒に遊んだ仲じゃないか!」
家の前で喧嘩だよ。
「皆、静まれ! 皆が、ミクの能力に目の色を変えるのも分かるが、喧嘩はいけない。ミクは、自分の家とワンダ婆さんの家の菜園の水遣りは続けなさい。あとは、もう2軒ずつは交代に水遣りをしたら良い。それと、若者小屋の管理はしてやって欲しい」
村長さんの提案で、私は自分の菜園、ワンダ婆さんの菜園、若者小屋の菜園と、後は順番に2軒ずつ水遣りをする事に決まった。
5軒分だけど、水遣りの水は汲んでおいて貰う事になったから、柄杓で水をやるだけだ。
家のは、水汲みからだけどね! ワンダ婆さんの所は、保育料が半分になる。他のは収穫物の4分の1だ。
「芋は、もう十分かも?」
家のとワンダ婆さんのとサリーの家のが4分の1ずつだし、家とワンダ婆さんの所は2回目が茂っているからね。
「芋を焼いても美味しそうよ」
暖炉の熾火に、埋めてじっくりと焼くと、前世の焼き芋っぽい味になった。
「料理スキルも馬鹿にできないな」
塩をちょこっとつけたら、美味しい!
「早く行商人が来ないかしら?」
ママも待ちかねているけど、私も早く来て欲しい。
若者小屋の菜園の管理は、簡単だよ。畝は作ってあったし、植える芋も桶に出してあった。
何故、村長が若者小屋の管理を頼んだか? これまで菜園をほったらかしていたからだ。
「家庭を持ったら、菜園も管理できないと困るのに、近頃の若者は狩りの腕前を上げる事にしか興味がないのだ。料理も肉を焼くだけだし、野菜を食べないと皮膚も荒れてブツブツだらけだ」
それは、思春期のニキビだと思うけど、確かに肌荒れが酷い人が多い。
他の村人は、ワンダ婆さん以外は夫婦で住んでいるから、野菜も最低限は食べている。
「ミク、もう収穫できそうだな!」
サリーのお兄ちゃんのサムが声を掛けてくれた。
「うん、次も芋なの?」
サムは肩をすくめている。
「芋なら、鍋で茹でたら食べられるからな」
ふー、こりゃ駄目だ!
「熾火に埋めておいたら、美味しい焼き芋になるよ。塩をちょこっとつけたら、何個でも食べられるのに!」
サムに頼まれて、採れたての芋を熾火に埋めてあげる。
「ほら、簡単でしょ! 狩りに行く前に埋めておけば、帰ったら食べられるわよ」
サムは、あまり真剣には聞いてなかったけど、忘れないかな?
なんて、私は忘れていたけど、次の日、新しい芋を植えていたら、サムに感謝されたよ。
「ミク、茹でるより、焼いた方が美味しいよ!」
わらわらと若者小屋のお兄ちゃんやお姉ちゃん達が寄ってきて、芋の焼き方を教えてくれと頼む。
「熾火に埋めておくだけだよ!」
全員が芋を埋めに行ったみたい。
この村、ママだけでなく、料理ができる人が少なすぎるよ! でも、私はいずれは出ていくのだから、簡単な物しか教えない。それに、材料も少なすぎるんだ。
「行商人が来るの、遅すぎるよ!」
靴も欲しいけど、それは村の中だけだから良い。
やはり、種が欲しいな! なんて不満に思っていたら、ジミーがやってくれました。
「これ、やるよ!」
丁度、ジミーの家の菜園の水遣りをしていたら、ヨハン爺さんと森へ薪拾いと、春の植物採取に行って帰ったみたい。
「これ、何?」
「種だってさ」
よくわからないけど、木苺系の実の乾燥した物みたいだ。
「ありがとう! この実がなったら、半分あげるわね!」
ジミーは、ニカッと笑う。
「また取ってくる!」
うん、夏には村の外にヨハン爺さんと行くけど、まだ大人ほどは早く走れないんだ。
本当に
私とサリーは、ミンとケンが屋根の上を飛んでいるのを下で眺めている。
「身体強化系だから、仕方ないわよ」
うん、そう思う。槍や弓のスキルだけど、身体強化も含まれていそうだ。
「風の魔法も使えるようになれば、空を飛べるそうよ」
サリーは、負けず嫌いだね。私は地に足をつけていたいよ。植物系だからかな?
「ジミーが拾ってきたのって、
家の横に植えたら、蔓が伸びて、家を覆うほどに成長した。
「うん、採るのを手伝ってよ。少し分けるわ」
ミンとケンも手伝ってくれたし、サリーも私も手の届く所は採ったよ。
途中から、ジミーも帰ってきたので手伝ってくれた。
籠に4杯も満杯になったから、2籠あげると言ったら、1籠だけで良いという。
「皆で分けよう!」
私は使いたい事があるから、一籠もらう。
後の2籠をサリーとケンとミンで分けた。
「今度からは良いよ。次の種を採ってくる」
ジミーは、良い子だね。
私は、デザートで半分食べて、後の半分はガラスの容器に入れて、天然酵母を作るつもりだった。
「ガラスの容器? そんなの無いわよ!」
そう、忘れていたけど、家は貧乏なのだ。
「それが欲しいなら、行商人から買うしかないな。多分、高いぞ」
ふう、貧乏って悲しいね!
なら、デザートで食べよう! それと、乾燥させても良いな。次々と実はなりそうだから。
妹か弟が生まれるのは秋だ。その頃は、もう木苺は実らないだろうけど、乾燥木苺でも美味しいかもね。
その日は、少し豪華だった。デザートがあるのは初めてだからね。
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