第2話 雪の日

 生まれてから、ほぼ毎日雪が降っているけど、今日は吹雪いている。

 パパは、村長さんの家まで行って「今日の狩りは中止だ!」と聞いてきた。

 ほんの少し歩いただけで、パパは雪だるまみたいになっていたよ。扉の外でかなり雪は落としてきたけど、中でも入り口付近でマントを脱いで、外に向かって振ってから、釘に掛ける。

「なら、ミクも家に居ましょう」

 ワンナ婆さんに預ける代金を節約する為か、時には家族で過ごすのも良いと思ったのかな?


「薪は十分にあるし、肉もある。なら、何か作るか?」

 パパは、大きな木を小屋の横の納屋から持って来た。

 まるでアニメのおんじみたいに、輪切りにしてから、お碗を作っていく。

 それを見ているだけでも楽しいけど、切屑を貰って私もナイフで削る。

 三角のは、屋根にしたら良い。ちょこっと変形の四角をナイフで削って、長方形にする。何個か作ったら、積み木になりそう。


 ママは、納屋の整理だ。肉を数えて、少しいつもよりは凝った煮込み料理を作るみたい。

 前世では料理ができなかった私としては、気になる。ママと一緒に台所で料理をしたかったんだ。

 積み木作りは、少しやめて、暖炉の側に行く。

 鍋に肉を切って入れて、芋を大きく切って入れ、水で炊くみたい。

「芋の皮を剥くのを手伝うわ」

 芋は、じゃがいもとさつまいもの間みたいな形だ。

「薄く剥かないと、食べる分が少なくなるわ」

 少し心配そうに、芋を一つ渡してくれた。うん、生後2ケ月の子供に皮剥きは危険そうだけど、そちらではなく食べる量が減る心配だね。

 こちらでは、子どもは早く自立する必要がある厳しい世界みたい。

 テレビでよく見ていた料理番組のお陰か、スルスルと皮を薄く剥いた。

「まぁ、ミクは料理が上手くなりそうね!」

 はっきり言って、ママのより上手く剥けたよ。


 後は、肉だけど、そちらはママが切る。肉は大切な食糧だから、子どもには触らせない。

 でも、いつもはお粥なのに、パンを焼くみたい。

 それを捏ねるのは手伝わしてくれたよ。

「発酵させたら、ふっくらするのだけど……下手なのよ」

 ママは、狩りの方が得意みたい。それに、発酵させるには酵母が必要だと思うよ。

 パンというか、お焼きだけど、平たいパンもあるんだと思うことにする。


 料理は、後は鍋を暖炉に掛けるだけだから、ママは裁縫を始める。

 家によっては布を織ったりもするし、ワンナ婆さんは編み物を一日中している。それらは、春に来る行商人に売ったり、村の人に売るのだ。

 ママは、まぁ、あまり裁縫も上手くはない。前世のママは、私の看護の合間に編み物やパッチワークをしていた。

 だから、私も少しは裁縫と編み物ができる。元気な時にしか教えて貰えなかったけどね。

「ママ、私も縫うわ!」

 皮を鞣したので、袋を作っている。大きな皮は行商人に売るけど、これらは小さいから皮袋にするのだ。

「ミク、できるかしら? 布の方が縫い易いけど、今は余分な布は無いのよ」

 私は、ぐんぐん大きくなるから、毎月、服を縫い直している。布不足の原因だよ。

 かなり大きめで、初めはだぶだぶだけど、すぐにぴったりになり、窮屈になるのだ。

「春の洗礼用の服を縫ったから、もう布は無いの」

 ママは少し悲しそうな顔をする。

 家は、村の中でも貧乏な方かも? それは、パパとママが結婚したてで、若いからだ。


 サリーなんか3人目の子どもで、上のお兄さんとお姉さんは、若者小屋で自立している。それに時々は、実家に狩りで取った小物をプレゼントしているみたい。

 若者小屋は、3歳から入る小屋だ。だって、家はどの家も小さいからね。

 一応、男女の部屋は別で、台所兼居間と男子の寝室、女子の寝室がある。

 村の中では、集会所、若者小屋、村長さんの家が、大きい。

 村長さんの家が大きいのは、巡回神父さんや行商人を泊める部屋があるからだってさ。


 皮は確かに縫い難いけど、一目ずつ丁寧に縫っていく。

「ミクは器用ね! 騒いだり、泣いたりもしないし、一人目なのに育て易くて助かるわ」

 えっ、もっと我儘を言っても良かったのかな?

「その代わり『何? 何故? 攻撃』が激しいけどな!」

 パパは黙って木工細工をしていたら良いよ! ママは、裁縫も苦手みたいで、私に皮袋作りを任せて、パパと木工細工をしている。ナイフを使う方が上手みたい。


 単純作業をしていたら、歌が歌いたくなった。

「雪が降る、雪が降る、いっぱい降る♪ 」

 雪が降る歌は、前世によく歌ったジングルベルにいい加減な歌詞をつけて歌う。

 パパとママは、笑っていたけど、何回か目には一緒に歌ったよ。

 厳しい世界だし、裕福とは言えない生活だけど、丈夫な身体と、パパとママ! 幸せだよ!


 でも、吹雪が続くと、段々と憂鬱な雰囲気になってきた。シチューなんて作らない。

「肉はまだあるけど……いつまで吹雪が続くのかしら?」

 肉は、狩りに2人で参加しているから、分配は多いみたい。

 でも、小麦が残り少ないようだ。オートミールみたいな引き割りになっているのだけど、この村では小麦は栽培していないのだ。

「この吹雪が止んだら、小麦が余っている家に肉と交換して貰う。うちは、子どもがいるからお粥を食べさせたい」

 大人だけなら、肉だけでも良いのかな? 栄養的にはどうなのだろう?


「来年は、芋をもっと作らなきゃ!」

 うん? パパとママの雰囲気がピンク色だよ。えっ、もしかしてお姉ちゃんになるの? 嬉しい!

「お姉ちゃんになるの?」

 無邪気な子どもの振りで聞いちゃう!

「ええ、秋にはお姉ちゃんになるのよ!」

 うん、私を産んですぐに次の子を作ったんだね。

 病院暮らしが長かったから、耳年増なんだよ。


「ミクも1歳になったら、お手伝いできるよな!」

 マックやヨナは、時々、ワンナ婆さん家に来ないで、狩りについて行っている。

 それは、村人との狩りではなく、親が教える狩りだ。

 両親は、狩人推しだけど、私は向いていない感じだ。

 マックとヨナの身体能力は、全く私とは違うんだもの。

 シェパードやハスキーとチワワって感じなんだ。

 私と数日違いのジミーもハウンド犬っぽい。

 サリーは、トイプードルかな? 私達、2人は少し違う感じだと、ワンナ婆さんにも言われた。

「他所に行く子かもね」という意味だよ。


「うん!」と答えたけど、狩りができるかは不安。

 でも、吹雪が止んだから、いつもの暮らしに戻った。

 パパとママは狩りに行き、私はワンナ婆さんの家で、友達と遊ぶ。

 ふふん! 積み木、とても好評だよ!

「少し貸してくれよ!」

 マックに貸してあげる。私は、優しい女の子だからね!

 それに、サリー達とは女の子らしい遊びもできるようになった。

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