第144話 結婚

 現在俺は皆の前で・・・正座をしております。

 させられたんじゃなく、なんとなく・・・その、女性陣から向けられる無言の【圧】に気をされたんだ。


 メイヤなんかは逆にホッとしていたな。


 何故かヤーマは俺にべったりだ。

 今は指輪を外し、ヤーマの本当の姿、俺にとってはハーニャの姿であり、これまでその姿の人物だったアイリーンを愛している。

 しかし、中身は違う。

 でも、命を預けたハーニャとして過ごしたアイリーンと混同し、俺の頭の中もくちゃくちゃだ。


 笑っていないが、引きつった笑顔をアイリーンが向ける。

 ちょっと怖いかな。

 その顔に悦びを感じる性癖の持ち主がいてもおかしくないが、俺は違う。


「セルカッツさん?何故ヤーマと結婚したのかしら?」


「いや、その、急に国王陛下が俺とアイリーンの婚姻宣言をし、その場で魂にも刻まれたんだ」


「セルカッツ様、私はお嫌なのですか?」


 ヤーマが涙を浮かべた。


「ちょっと!何、ヤーマを泣かせているのよ!最低!」


 アイリーンに怒られた・・・

 やばい、やばい、乗り切らないと・・・色々なことがあり過ぎて、俺は冷静な判断ができなくなっていた。


「ち、違うんだ。そうじゃない。ほら、結婚はちゃんと自分の口から言いたかったのに、その機会をなくしたからさ。ね、君も直接聞きたいでしょ?」


「つまり私の事をちゃんと受け入れていただけるのですわね?」


 俺は頷くしかなかった。


「ヤーマの事は良いわ。彼女が貴方に嫁ぎたい事が分かるから。でも私達はどうするの?一応私と結婚した事になっているなら、私とちゃんと婚姻の契を結ばないと不味いわね。国王陛下の宣言に従い、今この場で私達を娶るということで良いわね!?」


 皆からの圧に冷や汗が出る。

 アイリーンが言っている事は分かる。(つもり)

 ちゃんと口に出さなきゃな。


「そんなんで良いのか?国王陛下の宣言で娶ると言ってもよいのか?てっきり甘い言葉を掛けてくれというのかと思ったんだけど」


「国王陛下の宣言の方が貴重よ!格式があるじゃない!1言、宣言に従い娶ると言えばよいのよ!」


「わ、分かった。アイリーンの言う通りにし、娶る事を宣言する!」


 よし、乗り切った!他の面々は個別に話をしなきゃだけどな・・・


 いきなり皆がハイタッチをし、ヨルミクルなど泣いている。

 そんなに俺がアイリーンを娶る事が嬉しいのか?

 しかし、次の言葉に絶句する。


「言質取りました!真言で魂に刻まれましたよ!」


 それがどうした?と思ったんだが・・・


「不束者ですが妻として受け入れていただき嬉しいわ!」


 皆が一斉にはもり、三つ指をついて、頭を下げてきた。

 俺は意味がわからず!?となった。

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