第108話 ゴム

 その日の夜は、俺はウルナと寝たが、彼女の胸に抱かれながら心地よい夢を見させてもらった。


 翌朝は、朝早いうちに工作用の素材集めに出掛け、暫く出掛けなくても良いようにした。


 そして屋敷に戻ると、屋敷の前に3台の馬車が止まっていたが予測より早かった。


 受け入れ準備は、俺達冒険者組が何もしなくてもできることがわかったので、それならばと邪魔になるであろう子供たちを外に連れ出す口実として、薬草や木の採取に出かけていたんだ。


 モルモットもとい、領主の奥様に試作品の香水を渡して反応を見たところ、ものすごい食いつきだった。

 手間のかかる薬草の加工を伴う香水 ほど 食いつきが良かったので手間が掛からず、多く取れる薬草から採取できる香水は安価にし、数も少なく手間の掛かる薬草は、高級香水として生まれ変わることになる。


 なぜ俺ご採取組に同行しているのか?

 それは少し気になる事があり、その確認だ。

 誰かが体に変なのがついて大変だったと言っていたからだ。


 そして、森の入り口付近に目的の木があった。

 天然のゴムのような樹液を出す木があったのだ。


 もちろん地球のとは違うが、性質はゴムそのものだ。

 付着していた樹脂のようなのがどう見てもゴムだったので、是が非にも欲しくなり探しに行ったんだ。


 これについてもアルテイシアと話さなければならないが、多分革命が起こる。

 この世界にゴムの知識はない。

 留守番組のアルテイシアに話したら驚くだろうな。

 馬車の乗り心地も多少マシになるだろう?


 そして目の前に見えたのは、屋敷に来ている馬車から人が降りているところだ。


 既に何人かは屋敷に入っており、見たことのあるメイド服の中年女性がハーニャをハグしていた。


 俺に気がつくと、ダイランド家の使用人達は直ぐに俺を囲んだ。


「坊ちゃま!よくぞご無事で!」

「お屋敷が、お屋敷が燃えてしまったんだよ!」

「た、大変だったんですよ!」


 等と泣く者がいるが、不思議と旦那様が!と誰も言わない。

 馬車の荷台スペースに隠れ潜んでいても俺は驚かないが、それはなさそうだ。

 荷物も運び入れている。


「セル様、セバスチャン達はもう中に入っています」


 もちろん勝手にセバスチャンと言っているが、俺を1番可愛がってくれた爺やみたいな男だ。


 で、一旦食堂に集まってもらっていて、セバスチャンが俺を見るなり抱きついてきた。

 気持ちは分かるし、家族に対する愛情なのだが、せめて若い女・・・コホン、背中をポンポンと叩いてやった。


「無事だったんだな!」


「坊ちゃまの方こそ!じいは、じいは・・・それよりこのようなお屋敷をもう持っているとは、じいは感激しております!」


「まあ、武闘大会で稼いだんだけどね!それより誰が無事で、誰が無事でないのか聞きたいのだが、あいつはいないのか?」


「アイツと言われますと、」


「執事長だよ。いるなら俺の所に最初に来るのが奴だろ?」


「あの者は・・・来ません。裏切りましたから」


「取り敢えず皆座って茶でも飲んでくれ。順を追って概要を先ず頼む。そうだな、因みにここは安全だと言っておく」


 そうしてソワソワしている者達を座らせ、落ち着くのを待つことにした。

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