第107話 アルテイシアの知る俺 

 アルテイシアの話によると、ゲーム内での俺の生い立ちは実際の通りだが、失意のどん底にあったらしい。

 どうやら父はキルカッツにより殺される可能性を予知により知っていたそうだ。


 そういったギフト持ちがいるそうだが、少なくとも父の能力ではない。

 俺を追放した父を恨んでいたが、俺を守るためだと分かった俺は失意のどん底におり、そんな折にアルテイシアと出逢い、甘い囁きに落ちたそうだ。


 ゲームの俺はちょろかったようだ。

 闘技大会でキルカッツに負けたのもあり、逃走生活にはいっていたようだ。

 そんな時にアルテイシアと再会し、匿われ彼女に惚れてプロポーズさせるように仕向け、結婚して初夜を迎えひとつになった時に魔王が復活したとかで、甘い時間は短かったようだ。


 ひとつになった時のことは文字で書かれていて、ゲームは朝ちゅんから再開だとか。

 恥ずかしくて見ていないが、18禁パートだと、その様子を見ることが出来たそうだ。


 女神よ、何やってんの?

 で、肝心な話だと多分明日には執事達が到着するらしい。

 そこに父の遺書があり、予知通りならとの前書きで、昔ある女に警告されたのだとか。

 ある息子の信託の儀の後俺を逃せと。

 剣聖を取った子がいれば、やがて世界に破滅をもたらさんと、多くの災厄を振る舞う者へとなってしまう。

 剣聖になればもう自分では止められず、長子こそそれを止める希望だと。

 だから俺を逃す必要があると。


 ダイランド家は1度滅ぶも、俺が再興させるから、先ずは追放という形でキルカッツから遠ざけないと殺され、完全にダイランド家は滅ぶと。


 俺が死んだ場合、キルカッツを止めるのは勇者らしい。

 どこかにいるらしいが、その時はいくつかの国が滅ぼされ、キルカッツは魔王復活に傾倒し、実際に復活させ、配下になっていたとか。


 そこで俺が主人公たるアルテイシアの夫になり、魔王とキルカッツを打ち倒すのだとか。


 アルテイシアの知るキルカッツは火傷などしておらず、俺の目つきを悪くし根暗な感じにした奴との認識だ。


 どの道俺とアルテイシアが知るゲームの話から逸脱しており、状況から父はキルカッツにより既に亡きものにされたとし、俺を庇って追放したかのようにしていたのか。


 確かに逃亡があまりにもすんなり行き過ぎるな、変だなとは感じていた。


 ギフト名だけを聞いて即時に追放を決断したのも違和感があった。

 ゲームの話であり、何かの力が働いての事かと思ったが、成る程、そういう事なら合点が行く。


 剣も・・・一瞥していたから冷や汗が出たが、あれはわざと持たせたのか?

 俺が手配したつもりだったが、父が護衛に持たせていたのかもだ。


 また、魔法のバックも貴重品だから、本来は間違えない。

 怒りに我を忘れて!と思ったが、今は思えば冷静だったような気がする。


 実際はダイランド侯爵と言えば、国境付近の守り要として、隣国と魔物に対処していた。


 切れ者との認識だ。

 もし本気で俺を捕らえようとしたら発見されたのだろうな・・・

 本当に死んだのか、真偽も確認したい。


 まさか本当に死んだのか?とその死の報告も、キルカッツの目を誤魔化す偽の嘘の報告だとしても俺は驚かない。


「アルテイシア、ありがとうな。なんとなくだけど、あの男が簡単に死ぬとは思えないんだ。明日にも来るであろう者達の受け入れ準備をしようか」


「うふふ。立ち直ったのね!」


 俺はその場でアルテイシアに手伝われ着替えると、皆の前に顔を出したが、俺を慰める気満々だったようだ。


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