第97話 来客

 俺達はリアカーに切り分けた板を満載し、丸太からでた端材を積み込んだ。

 まだ余裕があるので薬草も積み込んだ。



「なあセルにぃ、こんな端切れなんそて何に使うの?」


 この子は9歳の男の子で、名前はコット。

 確かコールットンだったか。

 言い難いからとコットンやコットと呼ばれている。

 特に俺に懐いている子だ。

 最近はマシだけど、最初に見た時は細く弱々しかった。

 ウルナを責める訳じゃないけど、明らかに栄養不足で細かった。

 背は同年代の中では高いので、余計細く見える。


 最近は特に肉を遠目に食べさせているのもあり、少しはマシになってきた。


「ああ。これは帰ったらコットにも手伝ってもらうけど、細かく砕いてチップにしてから使うんだ」


「何に?」


「何だと思う?」


「分かった、飾りを作るんだ?」


「それも良いね。よし、これを利用して、なにか飾りを作ってみるか!」


「でもセルにぃの思っている使い方とは違うんだよね?」


「いや、今のもありなんだよ!俺には思いつかなかったけど!まあ、俺が考えたのはさ、皮は庭の樹の下に敷しめるんだ。雑草の予防とか、虫が入るのを防ぐデコレーションバークとしてだよ。もう1つは、燻すんだよ」


「燻したらケムケムにならない?」  


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 そんな話をしながら屋敷に帰った。

 屋敷組は着々と掃除を終え、メイヤが対応していたが、丁度元々この屋敷で働いていた使用人が訪れており、俺は荷物をそのままに応対に追われた。


「セル様お帰りなさいませ!良かった!この方達が、新たに屋敷の主になった人と話したいと来られたんです」


「分かった。このままで大丈夫そう?」


「暫く待ってもらっているのと、元の使用人なので大丈夫かと」


「メイヤも同席できるか?」


「お供します」


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 俺達は広間に向かった。

 応接室は一時的に本来の使い方ができない。


 今は鏡作りはストップし、掃除や自分たちが住む為の模様替えなどをしている。


 なので話ができるのがここしかなかった。


 俺がいないのに、主の部屋でまたすわけにもいかず、ここに落ち着いたそうだ。


 そう言えば領主も少ないが使用人がいた旨話していたが、俺がそのまま雇う話はなかったし、その使用人がどうなったか聞かなかった。


 俺達が広間に入ると、座っていた老執事と30代のメイド服を着た少し恰幅の良い女性がいて、立ち上がり、きれいなお辞儀をした。


「こちらが当屋敷の主となりましたセルカッツ様です」


「存じております。メイヤ殿共々闘技大会にてそのご勇姿を見ておりましたので」


「こちらの紹介はいらなさそうだね。で、そちらさんは?」


「失礼を承知でお尋ねいたします。セルカッツ様は我らが何者か分かっておいでなのでは?」


「そう来ましたか。まず、貴方は先日までここで執事長をしていたのでしょう。違いますか?」


「お見事でございます。さすればこれはなんと見られます?」


「まあ、余程のアホじゃない限り、貴方のことは外さないでしょう。

 そうだね、この女性はメイドとしてこの屋敷にいた者の1人なのは間違いないでしょう。しかし、そのような答えを求めてはいないのでしょう?」


「おっしゃる通りで御座います」


「そうだなぁ、次期メイド長か、メイド長になったばかりでしょう。更にいうと、貴方の娘でしょう。しかも試しているのはおれじゃなく、貴方の方だね?」


 メイヤはキョトンとしていた。


「はっ。おみそれ致しました。先ず私は執事長をしておりましたジンベエと申します。この者は前の持ち主が亡くなる1週間前にメイド長を引き継いだ我が娘ルイルにございます」


 続いてルイルも父親の無礼を謝りつつ挨拶をしていった。



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