第98話 ルイルさんとジンベエさん

 ジンベエとルイルは先ず以前この屋敷で働いていた者の話をしていった。


 2人を除き、次の働き先を決め、次は自分達の働き先をとなった時に、この屋敷が売却されたことを知り、顔だけでも出そうとしたのだと。


 元のメイド長は後進の育成のために残っていたが、これを気に引退したのだとか。


 執事長をしていたジンベエが2人以外の去就について話し終えると、深々と頭を下げてきた。


「厚かましいお願いだと思いますが、娘をメイドとして雇っていただけないでしょうか?」


「娘をというのは分かりましたが、貴方自身は雇ってくれと言わないのですか?」


「私は・・・私の事は良いのです。何とかします。ですが、この子はメイド以外の仕事を知りません」


「もし断ったらどうするおつもりですか?」


「正直、この町では働く先がないでしょう。さすれば王都にいき、そこで働く先を見つけなければなりません」


「道中魔物に襲われて死ぬ危険が大きいと思いますが。ジンベエさんはともかく、女性の身では無理でしょう」


「そうですね。お時間を取らせました」


 2人は立ち上がるとお辞儀をした。


「どうされましたか?具体的な話がまだですよ?」


 2人の顔がぱっと明るくなった。


「まず座りませんか?てっきり領主様が落ち着いたら元の使用人を派遣してくると思ったんですがね。これは悪いことをしましたね。少ないが使用人はいたと言っていたんで」


「といいますと?」


「このメイヤ達はメイドとして教育されておりますが、今は冒険者で、使用人が見つかるまで一旦屋敷のことをお願いしていたんですよ。つまり来るのを待っていたんですよ」


「そ、それでは?」


「もちろん来てほしいです。メイド長と使用人のまとめとして。といっても、ここは子どもたちが多く、メイドや執事を希望するものに教育してほしいんです。もちろん他の人を誘っていただいても構いません。失礼かもですが、ルイルさんはお子さんがいて、見習いをしているとか?もしそうなら、その子を見習いとしたり、住み込みでも構いませんよ」


「ど、どうしてお分かりになったのですか?」


「いや、失礼ですが、ルイルさんの年齢だともう10歳位の子がいてもおかしくないですし、私の母は恐らくルイルさんより2、3歳ほど上なだけだったと思いますので。15、16歳で子を産む人は珍しくもありませんし」


「おっしゃるとおりです。上の子は13歳で執事見習い、下の子は11歳でメイド見習いをしており、そのことを頼もうかとも思っていたのです」


「見ての通り、冒険者パーティーばかりなのと、孤児を引き取ったようなもので、人が足りず困っていたんです。雇用条件は前の所の条件をベースに多少は増やしたいと思います」


「宜しいので?減らすのが一般的ですよ?」


「俺も家を追い出されはしましたが、侯爵家の子息ですから、その辺りの事情は承知しているつもりです。では具体的な話は、食事をし、部屋を移ってからにしましょうか?」


 そうやって屋敷の運用について、1つ解決したが、問題は山積みであった。

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