第92話 後始末

 工房があった場所はまだ物が焼けた臭いや、所々煙やら湯気が立ち込めており、ハンカチを口に当てている。

 そして視察に来た領主は難しい顔をしていた。


「むう・・・失火という事はないのだな?」


「引き払った当日ですので、ここを根城にしようにも、打ち捨てられたと判断して移り住む者はいないでしょ。もしそうなら死体の1体や2体はあるでしょう!」


「舐めた真似をしおって!」


「向こうも本気で殺そうとしたのではないでしょう。まあ、あわよくば位の事は思ったのでしょうが」 


「よし、周辺もかなり焼けたな。この辺りは道も整備して作り直すしか無いな・・・」


 火災は水魔法を使える者で対処したが、結局100軒ほどに延焼し、数十人の死者を出したそうだ。


「キルカッツといったな?ぐぬう!これから追手を出して殺してくれようか!」


「閣下、お気持ちは分かりますが、もう遅いでしょう。今直ぐ誰かを向かわせても、国境を超えるまでに追いつくのは無理でしょう。恐らく国外追放されたのに伴い、私や処置を決めた閣下に対する嫌がらせかと思います」


「確かにな。もし次にこの国に入れば今回のことを償わせてやる!」


 宿の方は、領主が修繕工事の費用を出す事で話がついた。


 お屋敷に戻ると、奥様方がアルテイシアとウルナを抱きしめ、泣いた。


 それほどの価値を持つのが、この世界での鏡だ。

 渡したのは化粧をする時に使うのに最適な30Cm四方の鏡だ。

 一応スタンドタイプにしている。


 俺達も屋敷に戻り、昼食の後黒き薔薇を含め今後の活動などについて話した。


 俺達はこの町をホームにはするが、依頼などで離れる時も増える。


 アルテイシア、ヨルミクル、イザベルの3人が俺と行動を共にしたいと言う。

 アルテイシアは既に話をしていて、ダイダルスがりーを引き継ぐのだとか。


 これでパーティーは8人。

 5人の縛りは武闘大会等での人数が5人だからだ。

 冒険者としては、特に野営をする場合見張り役とかの関係で、これくらいの人数がいると有り難い。


 ダイダルスは武闘大会に出ていた中で、有望そうな者を1人か2人誘ってみようと思うと言っている。


 まだ油断はできないが、キルカッツが首謀者だとすると、距離が離れると性格な情報がどんどん得られなくなり、たとえ目を盗んで俺を害する司令を出したとしても、有効なものは出せなくなるだろう。


 戦える者で屋敷を守り、地固めをする必要がある。


 これから数日間はこの屋敷を快適にし、安全な拠点に変えることに注視しよう!


 こちらでの生活、キルカッツへの対処、ゲーム通りなら今後発生する魔王絡みのイベントに備えないとだ。


 その辺りはアルテイシアと腹を割って話をしよう!


 そうして色々な後処理に追われる1日を終えた。


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