第90話 まさかの求婚
3人は鏡を見て、首につけられていた首輪がないことを確認した。
首輪と言っても物理的なものではなく、魔法の首輪が浮かび上がっていて、奴隷だと分かる代物だ。
一応真言の縛りもあるのでヨルミクルについては、1度奴隷にしてすぐに開放した。
ヨルミクルはそのまま奴隷として扱っても良いのにと言うが、それはできない。
ただし、ミジックルだけは別だ。
「あー、気負っている所悪いが、アルテイシアは床を共にしたが、コルニアとスメイルには、奴隷契約以外で触れていない。だから心配しているような事にはなっていないからな」
2人はダイダルスとミルギナンに向かって、テヘヘと罰が悪そうに笑っていたが、ダイダルスとミルギナンは違った。
ダイダルスはコルニア、ミルギナンはスメイルの前に行くと、広げた右手を構え・・・少し間をおいてから振った。
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しかし、パチーンと言う乾いた音はしなかった。
代わりに大男2人は、彼女達の前に跪き、恭しく手を取った。
「お、お前の事が好きだ!妻になってくれ!」
申し合わせたように求婚した。
大男の声がハモっても誰得?としか言えないが、かなりシュールな状況だ。
皆、えっ!?と唸る。
それをやるのは良いが、流石脳筋系としか思えなかった。
まず、服装が締まらなすぎる。
片やメイド服、大男2人はサイズの合わない借り物の服・・・
後ろはお尻が半分見えとるんだが。
女の尻なら目の保養だが、ムサイ男のはな・・・
で、コクリと頷いた途端に抱きしめられたコルニアとスメイルは、恥ずかしいからやめろと半ば叫んでいたな。
この騒ぎに何人かが部屋に入ってきた。
事情を知らぬ者達は、屋敷の中から女性の悲鳴が聞こえたから、何かがあったのだとしか思えなかっただろう。
屋敷の警護を命じたミジックルが武器を片手に文字通り部屋に飛び込んできた。
「えっ?あれっ?」
その物音にダイダルスとミルギナンはハッとなり、何もなかったかのようにコルニアとスメイルを離した。
「悪いな。2人が少し羽目を外しただけだから」
ミジックルはヨルミクルを見て不思議そうにするも、部屋を出ていった。
「し、失礼つかまつりまつった」
動揺しているのか、舞い上がっているのか言葉が変だった。
「話をしてもよいか?」
4人が頷く。
「まあ、取り敢えず座ろう。落ち着かないよ」
本来はしないが、俺は床にあぐらをかいた。
皆も真似して床に座り始めた。
「改めて、3人は、肝を冷やしたと思う。もうこんな事は2度としないように」
3人はどんな座り方をしているかわからないが、ロングスカートのお陰で足は隠れている。
3人共もうしませんと答えた。
「この後俺は領主様の所に用事があるから手短に話すよ。黒き薔薇は今後どうする?いや、どうしたい?」
「うむ。元々闘技会が終わるまでの臨時パーティーだったからな。考えていなかった。しかもこんなに早く結婚する事になろうとは思わなんだし・・・」
1月や2月位の付き合いで求婚とはな何だよ!?と突っ込みたかったけど、俺も人のことは言えない。
そこはスルー1択だ。
「アルテイシアは?」
何故かもじもじしている。
「わ、私は・・・行く宛がないわ。もうセルカッツさんと床を共にしたし・・・養ってもらおうかしら?」
俺が鳩が豆鉄砲を食ったような顔をすると、アルテイシアはヨルミクルに目配せした。
「拙者もアルテイシア殿と一緒にセルカッツ様と床を共にした。そう言う事でござる」
皆が俺をジトッとした目で見る。
「ガハハハ!そうか、そうか!姫はセルカッツ殿に惚れたのだな!ふう、セルカッツ殿、このバカタレ共がしでかした事のお詫びに、暫く何かをしようと思う。話を聞く限り、今回の火災はセルカッツ殿の命を狙ったのであろう。しからば暫く屋敷などの警護をしようと思う。無論対価はいり申さぬ」
俺にとっても渡りに船だ。
取り敢えず、アルテイシアとヨルミクルの事はスルーし、詳細をメイヤに任せた。
俺はウルナさんと、アルテイシアを連れて再び領主様の所に赴く事にし、一旦解散とした。
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