第76話 顔を見るぞ!

 俺は開始位置に戻ると、盾をその場に置いて剣を両手で持って仮面騎士K改めイザベルへと駆けて行く。

 そしてハルバードの間合いに入る直前にジャンプし、縦に剣を振るう。

 但し、縦方向に回転しながらなので、頭が下に向いている常態から相手の背後に向けて剣を振った。

 勿論自力では不可能なので、魔法の力を使ってアクロバットに、ダイナミックな動きに。



 チッ!という舌打ちと共に大きく横に躱していく。


 流石だと言わざるをえないのは、躱しざまにハルバードを振るったからだ。

 ただ、俺は体を体育座りになるようにし、体を縮めながら回転して躱しつつ距離をおいて着地した。


 当たるとは思ってはいないが、狙いは度肝を抜き、リズムを崩す事にある。


 スキルだと思うが、制御できていないといっていたのもあり、取り敢えず真正面からやり合うのを避けている。


 ただ、読まれかねないからやれる事を小出しでやっていく。

 それも少し変化させたりとだ。


 時折懐に入り込み剣を振るったりと緩急を付け、あくまでこちらのペースで行き、相手のペースを乱してやる。


 1度距離を置き、駆け出すと右手に軽くジャンプし、右手から攻撃すると見せ掛けて即時に魔法陣を展開する。

 そして左に大きくジャンプし、右側から剣を振ると、咄嗟にハルバードで受けたが、かなりやり難そうにしていた。


 来る!と感じ、魔法陣を出すとエクスプロージョンで後方に緊急回避した。


 すると 俺の体のあった位置にハルバードが叩き込まれ、ちょっとしたクレーターができた。


 見えなかった!ハルバードが叩き込まれたというのは結果であり、地面に ハルバードがあったのだ。

 ハルバードを振ったところは見えなかった。


 スキルを使ってきたようだが、おそらく彼女の力というのは不可視の攻撃のように感じた。

 または意識をハルバードから逸し、気が付いたら当たっている!そういう類のスキルなのかもだ。


 お互いのスキルがなかなか通用しないので、その後、しばしガチで打ち合っていた。


 ただ、俺のスキルについて来られている事からして、ハルバードの上位スキルを持っているのだろう。

 俺は左腕の違和感から、実力の7割程度しか出せていない。


 格下相手なら問題ないが、高位の存在だと筋力バランスの違い等に慣れないうちは、バランスや力の加減がこれまでと違う部分があり、違和感から実行しようとする事と、実際の動きの齟齬から力が出し切れておらず、今の段階では互角だった。


 俺は執拗に兜を狙っていたのだが、顔を拝んでやると何度も告げており、顔を見る事に固執しているように見せていた。


 そんな中、俺はふとしゃがみ、足払いになるように回し蹴りをする。


 これまでしていなかったし、頭への攻撃を執拗にしていたのもあり引っ掛かった。

 顔の事はこれを決める為の布石だ。


「キャッ!」


 短く女のような悲鳴を上げるも、追撃として転がっているイザベルへ容赦なく剣をた叩き込む。


 一瞬だけ動作が遅れているからか、回転しながら躱されており、俺の盾を拾い、回転しながら投げてきた。


 俺は始めて虚を突かれスウェーで躱した。

 その隙に距離を取り、回転しながらジャンプして立つという芸当を披露した。 


 なかなか楽しい時間だが、俺は次の手を使う。

 切り札的なのだ。


 再び鍔迫り合いに持ち込み、なんの前触れもなくフラッシュを使ったのだ。

 そして自らの足の裏にエクスプロージョンを使い、頭を乗り越えながら後ろに回り込むようにジャンプする。


 そしてイザベルの頭上に来たその刹那、武器を落として兜に両手を手を掛けると、がっちりと掴んだ。


 そのまま兜を持って後方に着地する。


 そしてフラッシュをモロに見てしまった為に顔を手で覆っていたが、銀髪のロングヘアの美丈夫?いや、漏れ出た【あっ!】と言う声から女と思われる顔が現れた。


 彼女は銀髪の美しい騎士だった。

 兜が脱げ、その銀髪が風になびいた瞬間、俺の中で【美しい!】という言葉が浮かんだ。

 その瞬間、俺は彼女に一目惚れしたような気がした。

 彼女の素顔は、俺にとってどこか魅力的で、心を打つものだった。

 つまりだ、俺のどストライクでこれまでの会話や戦いかたから・・・惚れた。


 アルテイシアも美人だけど、友達や部下には出来ても恋人にするのはどうだろうか?

 今後は分からないが、嫌われているよな?

 少し突っ掛かって来ており、タニスの少しツンデレっぽいのとは違い、ツンデレ臭がする。


 あかん!戦いの中で戦いを忘れた!と呟く所だったというか、見惚れてしまい一瞬惚けてしまった。

 イザベルはそのキリッとした目を細めながら俺を蹴り飛ばした。

 本来ならば避けられるはずの攻撃をくらったが、俺は兜を関係者席にいるダイダルスに投げ、受け身を取りながら態勢を整えた。


 ダイダルスは、はっ?というような顔をするも、奴ならキャッチ可能だと投げただけだ。


 何故顔を隠す?いや違う、これではない。


「女だったのか?」


 しかし、何か様子が変だった。


「か、顔を、顔を見、見られた・・・ううう」


 茫然となっており、兜を取られたと気が付いた途端、その場にしゃがみこみ、泣き出てしまった・・・


 何これ?・・・



後書き失礼します。

ストックが突きました。

これからは毎日1話か2話の投稿になるかと思います。


宜しくお願いします!

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