第75話 ピロートーク
20分後、闘技場のメンテナンスが終わり、司会が決勝を戦う2人がこれから入場する旨を宣言した。
そして拍手が湧き上がり、妙な雄叫びが会場を支配する。
【ディン!ディン!ディン!ディン!】
意味はよくわからない。
ゲームにはなかったし、闘技場ではいつもこうなのか、偶々誰かが唸ったらこうなったのか分からないが、短い【ディン】と言う声を発し続け、会場の興奮と熱気が伝わってくる。
今回はウルナさんと13歳の女の子が俺の武具を持って後ろを歩く。
因みに仮面騎士Kはそういったウェポンエスコートを頼めなく、俺が現地人にウェポンエスコートを俺がお願いしている事を知っていて、運営が手配の相談に来た。
ウルナさんが反応し、子供達で良ければと、男の子を派遣してくれた。
特典としてこのウェポンエスコートは選手席にて見る事が出来るので、ウルナさん達の中でも倍率が高かったようだ。
「少年、重くなかったかい?」
「うん。怪我をしないと良いね!」
無邪気にウェポンエスコートが仮面騎士Kに言うと、苦笑していた。
待機位置で武器を受け取り、ウルナさんにお礼を言うと、頬にキスをされた。
観衆からきゃーとか、何よあの女!とか聞こえたけど、もう1人からも反対側にキスをされたのもあり、ちょっと恥ずかしかったぞ!
そういうのは2人きりの時にお願いします!ペコリ。
心の中はともかく、余裕ある大人の態度を取るのを忘れない。
左腕を回し、調子等を確認する。
よし、問題なし!
シャツも新しいのにしたし、可能な限り血も拭いた。
で、仮面騎士Kと対峙しているが、よくもまあ、フルプレートとアーマーであれだけ動く事が出来るよな。
身長は俺よりやや低いか?
装備の関係で少し大きいが、装備を考えると小柄だな。
となるとこいつ魔法が得意な奴か。
「出来れば降参してはくれまいか。殺したくない。あの男は貴殿の何だ?」
「降参?寝言は寝てから言ってくれ。あんたとの戦いは楽しめそうだし、そういうのは強い方が言うもんだぜ!そうそう、あんたの質問だが、キルカッツは俺の腹違いの弟で、俺の命を狙っている。つまり敵だ」
「確かに貴殿を殺そうとしていた節がある。尚更惜しい。貴殿相手に手加減など出来そうにない。殺すつもりはないが、まだ加減が無理なのだ。警告はした。殺されても文句を言わないで欲しい」
「死んだら文句なんて言えないと思うが。よし、決めた。その兜を外し、素顔を拝んでやる!・・・」
「・・・既に舌戦が始まっておりますが、決着は持ち越したようです!それでは開始!」
俺達の会話はともかく、終わるのを待たずに開始を告げたな。
せっかちな司会だこって。
こいつは控えの司会だったか?
あの変人と違い、余裕がない。
少なくともあの変人は空気は読んでいた。
そのうえで空気を読まない事も多々あるが、まず戦闘開始前の舌戦を打ち切るような無粋な真似はしなかった。
仕方がないのでゆっくりと中央へと向かうが、相手も同じだ。
剣先を軽く打ち、先ずは挨拶を無事に終えた。
剣先というか、刃先か。
相手の獲物はハルバードだ。
適度に打ち込み合い先ずは話してみる。
「あんた試合で相手を殺したんだってな?なんでだ?」
「後悔はしていない。其奴は面白半分に子供の腕を切り落としたのだ。私が殺した奴は貴殿の弟の仲間だ。命まで取るつもりはなかったが、2人してその腕を食ったと言ってのけ、怒りを押さえられなかった。まだ力の制御を上手く出来ないのだ」
「俺に対して殺すつもりでやっても構わないぞ!それでもあんたに勝ち目はない。なあ、あんた俺の仲間にならないか?これから事業を始めるのに強いやつが手元に欲しい」
「ふっ!私に勝ってから誘って欲しい。自分より弱い者に仕えるつもりはないのでな。ならば私が勝ったら、先の試合であわや場外から戻ってきたあのやり方を教えてもらおうか!」
「そんなことなら俺の仲間になったら教えてやるぜ!間違いなくあんたは強くなれるぜ!いや強くしてやる!少なくとも俺は8人を強く出来る能力持ちだ。悪い話じゃないと思うぞ」
「そうだな。確か貴殿は貴族の子息であったな。良かろう、負ければ配下になろう。私が勝てば無条件で武闘大会で使った数々の技や魔法を私に教えるのではどうだ?」
「分かったが、契約魔法を使うか?」
「必要か?」
「無粋な事を聞いたな。それとは別に、戦いの後キルカッツについての情報を交換したいが良いか?」
「良かろう。ソロソロ準備運動を終えて本気で行きたいが、貴殿の準備は良いか?」
「ああ。1度開始位置まで距離を置こう。そこからガチバトルだ!それと後で名前を教えろよ」
「承知!今名乗ろう!我が名はイザベル!」
仮面騎士Kはイザベルという。
聞こえる声は仮面にて本来の声ではないし、やはり素顔を晒さないとな。
適当な所で鍔迫り合いを切り上げ、お互い距離をおいたが、礼をしてきたので俺も返し「行くぞ!」「参る!」お互いひと言発すると、駆け出すのだった。
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