第74話 決着

 ダイダルスはいきなり大技を繰り出してきた。


 斧の刃を後ろ側にし、【貯め 】をしながら駆けており、スキルにて通常の倍の速度を出して振り抜いた。


 刃をぶつける技ではなく、刃の側面で殴り飛ばす技だった。

 しかし、貯めの動作から予測はついており、盾でガードしながら受け止める。


 しかし、俺の予測より膂力が上で、放物線を描き観客席に向かって飛んでいた。

 誰もが呆気ない勝負の結果に落胆した。

 いや、結果予測にだ。

 とある観客の目の前には直径2mほどの魔法陣が浮き上がったのが分かる。


 するとその魔法陣の先にセルカッツがいて、魔法陣に向かって飛んで来ているのが見えただろう。


 思わず観客達は身構える。


 しかし、ドゴッーン!と爆発が魔法陣の先で起こり、セルカッツが反転して闘技場へと戻るのが見えただろう。


 ・

 ・

 ・


 俺は最小の威力でエクスプロージョンを使った。

 魔法陣の役割は本来その内側、つまり術者にダメージが入らないようにする物だ。


 その魔法に関しては魔法の作用が届かないのだ。

 魔法陣を裏返せば良い。

 今回俺の方は食らう側にし、観客席側に魔法の効果が届かなくした。


 つまり魔法陣は唱えた本人とその魔法のみが対象だが、一方通行の特性を持つ。

 裏面はスルーされる。

 今回は観客席を本来の術者として魔法陣を展開した。

 それによりエクスプロージョンの威力が俺の足に降り掛かった。

 それで弾丸の如く俺はダイダルス目掛けて飛んでいた。

 そしてダイダルスは避けられないと判断し、斧を盾代わりにガードする。


 あひぃーと見た目と合わないような叫び声をあげながら飛んで行く。


 そして又もやスキルを使い、斧を振る。

 今度は体を捻り、進行方向に向かって振った。


 何とか進行方向への動きは止まり、場外へ飛んでいたのが観客席に落下していく。


 もう1度振ると辛うじて闘技場の中に落ちた。


 まともに受け身が取れず、右肩から落ち、立ち上がるも不自然な形でだらんとなった。


 そう、脱臼したんだ。

 少し顔をしかめたが、斧を左腕で持ち駆けてくる。

 魔法陣を大量に展開した。

 その魔法陣はダイダルスを取囲み、俺は魔法陣を蹴り不自然な方向転換で、ダイダルスの斜め後方に降り立ち、手をついて回し蹴りをするもジャンプして躱わされる。


 しかし、腕をぐっと押しダイダルスの背後に向かって足が向かう体制でジャンプした。


 ダイダルスの背中にまともに入り、盛大に吹き飛び、闘技場の内壁に当たり頭を振りながら立ち上がる。


 かなりのダメージが入ったはずだ。

 俺は左手に盾を持ち直し、右手に剣を構えながら駆ける。


 うおおおお!と2人共叫びながら剣と斧を振るう。


 30合ほどガチで打ち合ってみた。

 お互いバックステップで下がったり、頭突きをしてしまいそうになるほど距離を詰めたりと、俺は心踊る楽しい時間を過ごしていた。


 ダイダルスは次第に肩で息をし、苦悶の表情を浮かべ始めた。


 そろそろか?と思い、足を引っ掛けて地面に転がし、胸に左足を乗せ動きを止めて剣を首筋に当てて決着した。


 勝負ありとなったので、手を差し伸べて起こしてやる。


「よい勝負であった!」 


「やはりあんたは強いな。それより少し我慢しろよ!今肩を入れてやるからな!」


「かたじけない」


 ぐうう!と僅かに声が漏れるも、叫ぶ事もなかった。

 多分骨も折れているが、まあ回復魔法を使うから関係ない。


 お互い礼をし、決勝の準備の為一旦闘技場を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る